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三章 ミュラー最後の事件簿
遺言
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夜のベガスの港。
闇のように暗い海の上に一際大きく、威圧感溢れるガレー船が浮かんでいた。
そこの船室の奥でレオンが金髪のかき上げて、囚われの身となった老人に呟く。
「全くふざけたマネをしてくれる」
レオンが偽の短刀を握り砕いた。
その様子を見た老人はニヤニヤと笑みを浮かべていた。
レオンは老人のその顔を見て苛立ちを覚え、自白剤を無理矢理飲ませた。
むせかえる老人を眺めながら、レオンは告げた。
「文書はいい、また奪うまでだ。フランツ=ヨーゼフ、いやクラウスというべきか。貴様には聞きたいことがある」
老人がニタニタと笑みを浮かべながら答える。
「なんじゃ、誕生日でも知りたいのか?」
余裕そうな老人の態度に苛立ったレオンは老人の腹を蹴り上げ、顔を殴り飛ばす。
そして低い声で倒れた老人に囁いた。
「……エルドラはどこにいる? 奴さえ捕えれば俺の計画は完遂できる」
その言葉を聞いた老人は口から血を吐きながら、再び薄ら笑いをする。
「お前さんの計画か……。何もわかっておらんな……。自分が誰かの駒だということに……」
「フ、ロゼのことか。アイツとは利害の一致で手を組んだだけだ。アイツが俺を利用して、オレもアイツを利用してるだけに過ぎん」
レオンの言葉を聞いて、老人は微笑む。
「軍部の革命か、せいぜい成功すればいいのう。奴の恐ろしさを知らんと見える……」
「なんだと?」
「この状況すらアヤツは薄汚い笑みで楽しんでおる……。どうせロゼの顔すら知らんのじゃろ……。王政を打破して、軍事強国を作りあげたいんじゃったか、お前さんは……。せいぜいアヤツの手のひらで踊っていればいい……」
老人の挑発にレオンは激昂し、再び老人の腹を蹴り上げる。
肩を上下させるまで、老人を痛めつけた。
しかし老人は笑みをやめない。
「……役者は揃ったな……」
「役者だと?」
「ショーの始まりじゃ……」
すると、突如、船内が激しく揺れ出すした。
思わずよろめくレオンに、慌てて飛び出した船員が告げる。
「攻撃魔法を受けました! そ、空から堕天の魔女が……。ま、マルジェラが現れました……!」
その言葉を聞いて、レオンの顔の血の気が一気に引く。
バカな!?
マルジェラが出てきただと!?
そんな馬鹿なことがあるか!
まさかあの魔女もエルドラに手を貸してるのか!?
レオンは船内を駆け出し、甲板にたどり着く。
すると眼前には長い白髪を揺らしたエルフがいた。
その姿を見て、レオンは驚愕した。
ま、マルジェラ!!
何故ここに!??
レオンの顔が青ざめる。そして思考を巡らし、打開策を練る。
すると、突然背後から声が聞こえた。
「隙だらけだ」
レオンの身体はすでにランスで深々と貫かれいた。
口から血反吐を吐きながら、レオンが振り返るとそこには、ミュラーがいた。
「貴様ぁあぁ……」
ミュラーが乱暴にランスを引き抜くと、糸が切れた人形のようにレオンが地面に倒れ伏す。
それをゴミのようにミュラーは蹴飛ばした。
レオンは口から血を流しながら、忌々しそうに、白髪のエルフに無念の言葉を投げかけた。
「……何故貴様が……こいつらの……」
すると、白髪のエルフはその身体を変形させ、長躯の赤髪の青年へと変貌する。
ジラールだ。
ハーミットを向けていた。
レオンはこの時になってやっと理解した。
変化の魔法でしてやられたこと。
そして恨みがましく、言葉をぶつけた。
「……殺すぞ……。クズどもめ……俺の……計画が……」
「死ぬのテメーだ」
ジラールがそう呟くと、同時にハーミットの凶弾がレオンの額に風穴を開けた。
顔から鮮血を吹き出し、レオンは物言わぬ骸と化す。
ミュラーがジラールに話しかける。
「傷は大丈夫か?」
「死にかけてるところを、デルヴォーが助けてくれた。まだ痛みはあるけどな」
二人はふっと互いに笑い。船内へと足を向けた。
船室の奥では老人が死にかけていた。
すぐにミュラーが複体修術で傷を癒すが、体力がもうすでにない。
虫の息であった。
老人が息も絶え絶えになりながら、ジラールに声をかける。
「……ジラール、短刀をよこせ……。今、魔法陣を解術してやる……」
ジラールが狼狽えながら短刀を老人に見せる。
老人はニヤリと笑い、魔法式を発動させた。
「……やれやれ……。ワシもヤキが回ったもんじや……。我が身かわいさで仲間を売った報いかの……」
狼狽したジラールが叫ぶ。
「ジジイ! もうしゃべるな!! 今助けてやるからよぉ! ミュラー!!」
ジラールがミュラーに顔を向けると、俯いたミュラーが首を横に振る。
すると老人がジラールの手を弱々しく握った。
「……いい手になったじゃねぇか……。まだまだ気持ちは半人前だが……いい手になってくれた……。……思えば、お前さん一緒に鍛冶やってる時が一番心が安らいだ……」
ジラールが泣き叫びながら声をかける。
「やめろ! 喋るな……!!」
そして老人が優しく微笑み、最後の言葉を放った。
「……文書を……エルドラに……頼んだぞ……」
そして老人は事切れる。
ジラールはその骸を強く抱きしめて涙を流した。
ミュラーは老人の遺言を聞き届け、ジラールの姿を見て固く決意する。
仇は取る。
必ずな。
漢の無念の泣き声が、夜の海に響き渡っていった。
闇のように暗い海の上に一際大きく、威圧感溢れるガレー船が浮かんでいた。
そこの船室の奥でレオンが金髪のかき上げて、囚われの身となった老人に呟く。
「全くふざけたマネをしてくれる」
レオンが偽の短刀を握り砕いた。
その様子を見た老人はニヤニヤと笑みを浮かべていた。
レオンは老人のその顔を見て苛立ちを覚え、自白剤を無理矢理飲ませた。
むせかえる老人を眺めながら、レオンは告げた。
「文書はいい、また奪うまでだ。フランツ=ヨーゼフ、いやクラウスというべきか。貴様には聞きたいことがある」
老人がニタニタと笑みを浮かべながら答える。
「なんじゃ、誕生日でも知りたいのか?」
余裕そうな老人の態度に苛立ったレオンは老人の腹を蹴り上げ、顔を殴り飛ばす。
そして低い声で倒れた老人に囁いた。
「……エルドラはどこにいる? 奴さえ捕えれば俺の計画は完遂できる」
その言葉を聞いた老人は口から血を吐きながら、再び薄ら笑いをする。
「お前さんの計画か……。何もわかっておらんな……。自分が誰かの駒だということに……」
「フ、ロゼのことか。アイツとは利害の一致で手を組んだだけだ。アイツが俺を利用して、オレもアイツを利用してるだけに過ぎん」
レオンの言葉を聞いて、老人は微笑む。
「軍部の革命か、せいぜい成功すればいいのう。奴の恐ろしさを知らんと見える……」
「なんだと?」
「この状況すらアヤツは薄汚い笑みで楽しんでおる……。どうせロゼの顔すら知らんのじゃろ……。王政を打破して、軍事強国を作りあげたいんじゃったか、お前さんは……。せいぜいアヤツの手のひらで踊っていればいい……」
老人の挑発にレオンは激昂し、再び老人の腹を蹴り上げる。
肩を上下させるまで、老人を痛めつけた。
しかし老人は笑みをやめない。
「……役者は揃ったな……」
「役者だと?」
「ショーの始まりじゃ……」
すると、突如、船内が激しく揺れ出すした。
思わずよろめくレオンに、慌てて飛び出した船員が告げる。
「攻撃魔法を受けました! そ、空から堕天の魔女が……。ま、マルジェラが現れました……!」
その言葉を聞いて、レオンの顔の血の気が一気に引く。
バカな!?
マルジェラが出てきただと!?
そんな馬鹿なことがあるか!
まさかあの魔女もエルドラに手を貸してるのか!?
レオンは船内を駆け出し、甲板にたどり着く。
すると眼前には長い白髪を揺らしたエルフがいた。
その姿を見て、レオンは驚愕した。
ま、マルジェラ!!
何故ここに!??
レオンの顔が青ざめる。そして思考を巡らし、打開策を練る。
すると、突然背後から声が聞こえた。
「隙だらけだ」
レオンの身体はすでにランスで深々と貫かれいた。
口から血反吐を吐きながら、レオンが振り返るとそこには、ミュラーがいた。
「貴様ぁあぁ……」
ミュラーが乱暴にランスを引き抜くと、糸が切れた人形のようにレオンが地面に倒れ伏す。
それをゴミのようにミュラーは蹴飛ばした。
レオンは口から血を流しながら、忌々しそうに、白髪のエルフに無念の言葉を投げかけた。
「……何故貴様が……こいつらの……」
すると、白髪のエルフはその身体を変形させ、長躯の赤髪の青年へと変貌する。
ジラールだ。
ハーミットを向けていた。
レオンはこの時になってやっと理解した。
変化の魔法でしてやられたこと。
そして恨みがましく、言葉をぶつけた。
「……殺すぞ……。クズどもめ……俺の……計画が……」
「死ぬのテメーだ」
ジラールがそう呟くと、同時にハーミットの凶弾がレオンの額に風穴を開けた。
顔から鮮血を吹き出し、レオンは物言わぬ骸と化す。
ミュラーがジラールに話しかける。
「傷は大丈夫か?」
「死にかけてるところを、デルヴォーが助けてくれた。まだ痛みはあるけどな」
二人はふっと互いに笑い。船内へと足を向けた。
船室の奥では老人が死にかけていた。
すぐにミュラーが複体修術で傷を癒すが、体力がもうすでにない。
虫の息であった。
老人が息も絶え絶えになりながら、ジラールに声をかける。
「……ジラール、短刀をよこせ……。今、魔法陣を解術してやる……」
ジラールが狼狽えながら短刀を老人に見せる。
老人はニヤリと笑い、魔法式を発動させた。
「……やれやれ……。ワシもヤキが回ったもんじや……。我が身かわいさで仲間を売った報いかの……」
狼狽したジラールが叫ぶ。
「ジジイ! もうしゃべるな!! 今助けてやるからよぉ! ミュラー!!」
ジラールがミュラーに顔を向けると、俯いたミュラーが首を横に振る。
すると老人がジラールの手を弱々しく握った。
「……いい手になったじゃねぇか……。まだまだ気持ちは半人前だが……いい手になってくれた……。……思えば、お前さん一緒に鍛冶やってる時が一番心が安らいだ……」
ジラールが泣き叫びながら声をかける。
「やめろ! 喋るな……!!」
そして老人が優しく微笑み、最後の言葉を放った。
「……文書を……エルドラに……頼んだぞ……」
そして老人は事切れる。
ジラールはその骸を強く抱きしめて涙を流した。
ミュラーは老人の遺言を聞き届け、ジラールの姿を見て固く決意する。
仇は取る。
必ずな。
漢の無念の泣き声が、夜の海に響き渡っていった。
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