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箱詰めの人魚
箱詰めの人魚-2
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「現状で気づくことは、それぐらいですな……あとは彼女が入れられていた木箱や木毛などの残留物を詳しく調査していきましょう。結果は追ってご報告いたします」
「あぁ、頼んだ」
「御意に」
そのまま胸に片手を押し当てウィクルムに一礼して、謁見の間を後にした俺の腕が、廊下の角を曲がった途端に緩く掴まれる。
俺の移動を阻止した手の持ち主は、共に謁見の間から出てきた騎士団長ヨルガだ。
「……良かったのか?」
確かめてきた彼の言葉は、本来報告すべきもう一つの事実を俺が敢えて告げなかったことに対しての疑問符だろう。
あの謎めいた裸の少女は確かにあの時、ヨルガの息子であるリュトラを見つめ、微笑んだ。リュトラ自身は覚えがないような態度ではあったが、過去に何処かで遭遇している可能性を否定できない。
それがどんな意味を齎すかはまだはっきりとしていないものの、長年国政に携わった勘とでも言うべき何かが、何やら警鐘を鳴らしているのだ。
――おそらくアレは、ろくなものではないと。
「……少し思うところがあるからな。事実関係を確かめてからでも構わんさ」
「そうか」
ヨルガは複雑そうな表情をしているが、この程度の贔屓は、甘んじて受け入れれば良いのだ。
「リュトラに影響の出る何かがあるならば、先にその因果を潰してから報告に上げる。……なぁ、ヨルガよ」
俺は手を伸ばし、ヨルガの顎裏を軽く指先でなぞる。
「リュトラはお前の息子――つまりは、俺の息子でもある」
「っ!」
目を丸くする彼に、畳み掛けるように囁いた。
「我が子は……何をおいても守るべきものだ。そのためならば、多少の報告遅延程度、裏切りにも入らんのだよ」
「……フフッ」
榛色の瞳が、目の下に緩く刻まれた皺と共に、穏やかに緩む。
周囲に他人の気配はないが、王城の中だ。俺は軽く背伸びをして、愛しい夫と軽い口づけだけを交わす。
「……それで、何から手をつける?」
「まずはあの少女が目を覚ましたら事情聴取だな。それと並行して、木箱の持ち込みもとを探す。あの『肉』はいくらなんでも、鮮度が良すぎだ。何かしらの企みがあると見て間違いない」
「あぁ……リュトラが何か覚えてると良いが」
そんな会話を続けながら控室に向かった俺達を待っていたのは――
「マラキア! しっかりしてくれ、マラキア!!」
びしょ濡れの寝台と、その上に呆然と座っている美しい少女。
そしてまるで彼女と入れ替わったかのように青褪めた表情で意識を失っているマラキアと、彼を腕に抱き上げて必死に呼びかけている、リュトラの姿だった。
すぐにリュトラとマラキアのもとに駆け寄るヨルガを他所に、俺は部屋の入り口に立ち、呆然としている少女に視線を向ける。
寝台の上で上半身を起こしている彼女は綿のチュニックを着せられていた。その白い生地の上で、青い小さな光が跳ねている。
「水の精霊……?」
精霊達の可視化は興奮の現れだと聞いたばかりだ。
とはいえ、光りすぎではないだろうか。
それに、少女の膝の上で電飾のような点滅を繰り返している精霊達は置いておくとしても、何故マラキアが失神しているのか、分からない。
どちらにしても、まずはマラキアの容態を診るのが先決だ。
俺はリュトラの傍らに膝をつき、失礼するぞと声をかけてマラキアの白い首筋に指を押し当てる。
少し低めの温度だが、低体温の類いではない。触れた脈はしっかりしているし、呼吸も規則的だ。
「アンドリム様」
不安そうに見上げてくるリュトラに微笑みかけ、大丈夫だと宥めるように、俺はその背中を軽く撫でてやる。
「心配するな。気を失っているだけのようだ。脈にも体温にも異常はない」
「……良かった」
俺の言葉を聞き、緊張していたリュトラの肩から少し力が抜けた。腕の中に抱えたマラキアの額に唇を押し当て軽く頬を擦り寄せる仕草は、大型犬を連想させる。
「それで何があった? リュトラ」
ヨルガに尋ねられた彼は軽く首を横に振り、警戒を滲ませた表情で寝台の上に座ったままの少女を見つめた。
「俺にも、何が何だか……ここまで連れてきたあの子を、マラキアが看病していたんです。暫く経って、彼女が目を覚ましました。マラキアが声をかけて、彼女がマラキアを見上げて……そうしたら何故か、マラキアがひどく驚いた表情をしたと思ったら、そのまま倒れてしまったんです」
「ふむ」
状況は分かったが、理由が分からない。得体の知れないこの少女が原因であることは間違いないだろうが、どうしたものか。
俺の視線を感じてか、少女がゆっくりと顔を動かし、俺と目を合わせる。
「……っ?」
この感覚を、何と表現したら良いのか。
確かに美しくはあるが、見た目は普通の少女だ。二本の腕と、二本の脚。背中に羽が生えていることもなく、下半身が魚の姿でもない。
それなのに、本能が訴えかけてくる。――これは『人間』ではない、と。
例えて言うならば、イルカのような賢い動物と正面から向き合っているような、意識がこちらに向いているのは分かるが言葉が通じているかどうかは定かでない、だが何故か不快感はない……そんな不思議な心地だ。
「さて。君は、事情を説明できるだろうか」
「ぅ……」
「言葉は、分かるか? 何故、あのような箱の中に入れられていた?」
「……ぁ」
俺の投げかけた質問に、少女ははくはくと唇を動かして何かしら答えようとするものの、喉を通る空気が音になっていない。
「声が出ないのだな……あぁ、無理をするな。頷くか、首を横に振るかで答えてくれたら良い。……まず、私の言っていることは分かるか?」
こくんと、少女が頷く。
「そうか。君は――ここが何処か、知っているか?」
ふるふると、首が横に振られる。
「何故、裸で木箱に入れられていたかは?」
再び、首が横に振られた。
「……君は歩けるだろうか?」
少女は僅かに顔を歪め、嫌そうに首を横に振る。
ヨルガとリュトラは俺が問いかける意味を捉えあぐねているようだったが、静観していた。
「立ってみようか」
「ぅ……ぁ……?」
「心配せずとも、確かめたいだけだ。すぐに君をどうこうするつもりはない……さぁ」
俺は寝台に近づき、少女に手を差し出す。
深い青色の瞳を瞬かせた彼女は逡巡の後に俺の手を取り、寝台の上に投げ出していた足を床に下ろした。
「ゆっくりで良い。立ってごらん」
頷いた少女が、俺の腕に縋るようにして立ち上がろうとして――
「――ぅ!!」
激痛に顔を歪め、崩れ落ちかける。少女の身体を抱きとめた俺は、すぐに彼女を寝台の上に戻してやった。
小さく身体を震わせながら痛みに耐える彼女の周りで、再び興奮した水の精霊達が忙しない点滅を繰り返す。俯いたためか、長い金髪が顔の横に流れ、美しい稜線を描く首から背中のラインと、鎖骨近くに薄らと残されていた傷跡が照らし出された。
――これは、いつのものだろうか。
俺は彼女の身体を毛布で包み込み、部屋の外で控えていた衛兵を呼んで、城勤めのメイド達を何人か寄越すように伝える。
到着を待つ間に再び考え込んだ俺の腰を、ヨルガの腕がやんわりと引き寄せ、寄り掛からせてくれた。
「……ありがとう、ヨルガ」
いつもの温もりを背中に感じ、少し落ち着いた心地になる。
「その少女について何か、心当たりが?」
「あぁ。もし俺の知っているものであれば……なかなかに厄介な案件だ。……時に、リュトラ」
「はい、アンドリム様」
俺はマラキアを抱えたままのリュトラに問いかけた。
「騎士団は海での訓練があると思うが……お前は、海で溺れたことがないだろうか?」
「え……」
「そして誰かに助けられたことは、ないか?」
リュトラは何度か目を瞬かせてから少し考え込んでいたが、やがてゆっくりと首を横に振った。
「ありません。俺は、泳ぎは得意なほうです」
「……溺れたことも、助けられたことも、ないのだな」
「はい、ないです」
「アンリ。俺の知る限りでも、リュトラが溺れたことは一度もない」
「……そうか」
リュトラの証言に加えてヨルガの補足もあるなら、間違いはないだろう。
ほっと安堵の吐息を漏らす俺に、二人は不思議そうな表情をしている。
「アンリ、何を知っている……? この少女は、何者だ」
海の香りと共に姿を見せた、美しい少女。
水の精霊に愛され、声を失い、二本の足で歩くと激痛に苛まれる。
誰もがよく知る、童話で語られた、伝説上の生き物。
だがこの世界であれば、それは、実在していてもおかしくはない。
「……人魚」
「……何だと?」
俺の言葉に、ヨルガは目を丸くする。
「その少女は――人間の足を手に入れた人魚かもしれない」
† † †
『人魚姫』は、前の世界で誰もがよく知るアンデルセンの童話だ。
嵐の夜に海で溺れた王子様を助けた人魚の姫が、海の魔女から声と引き換えに足を貰い、王子様に会いに行く。王子様は人魚姫に優しくしてくれるけれど、言葉を話せない彼女が自分を助けてくれた相手だと気づけない。人魚姫は王子様と結ばれないと海の泡となって消えてしまう運命なのに、王子様は隣国のお姫様が自分を助けてくれた人だと思い込み、彼女と結婚する。人魚姫は海に飛び込み、泡となって消えていく。
幼心に何とも言えないトラウマを残す物語だけに、大まかな粗筋程度は、誰でも誦んじているのではないだろうか。
「人魚……とは、なんだ?」
俺のセリフを聞いて、ヨルガが首を傾げている。……ということは、この世界で『人魚姫』の童話は浸透していないのか。
「海の中に築かれた王国に住み、下半身が魚の姿をした、総じて美しい生き物だ。気まぐれに、溺れている人間を助けることがあると聞く」
「その子は、人間の姿をしているようだが」
「制約で、足を手に入れることができる。俺もそれ以上のことは、詳しく分からないがな」
「そうなのか」
ヨルガが考え込んでしまっているうちに、呼び寄せたメイド達が衛兵に連れられて詰所にやってきた。
俺達は寝台の上で丸くなっている少女の看病を彼女達に任せ、未だ目を覚さないマラキアを抱きかかえたリュトラを連れて、オスヴァイン家の屋敷に戻ることにする。
王城からオスヴァイン邸までは、馬車で十分程の距離だ。
ヨルガの部下である騎士の一人が先触れに走っていたので、屋敷の扉前で執事長のレゼフとフットマン達が担架を準備して待ってくれていた。しかし、リュトラは彼らの手を借りることなく、マラキアを抱えたまま客間に向かう。
上質な寝具で整えられたベッドの上に寝かせられたマラキアの顔色は、少し血の気を取り戻してきたようだ。
まずはこのままマラキアが目を覚ますのを待ち、何があったかを聞き出そう。
「……そうだ、セイレーンだ」
俺から人魚の話を聞いた後、しきりに首を捻っていたヨルガが、ようやく思い付いたと見えて、ふいに声をあげた。
「セイレーン?」
「海に住む魔物だ。美しい女性の見かけをしていて、歌で船乗り達を惑わせてはその肉を喰らい、船を海に沈める。子供の頃に父上から聞いた寓話に、そんなものがあった気がする」
「成るほど」
ギリシャ神話に出てくる、下半身が鳥の姿をした海の魔物だな。確か後々には、人魚と同じように下半身が魚の姿で描かれることが多くなっていたのではなかったか。そっちの話は伝わっているわけか。
「ただ、俺の聞いた話では、セイレーンは既にいないはずだ」
「いない……?」
「あぁ。セイレーンの住処は海の中にあって、以前は船乗り達がよく襲われていたと聞く。だがある日、琴の名手の演奏の音色でセイレーンの呪縛から船乗り達を守ることに成功した。それで、彼女達の声を聞かなければ良いということに気づいたんだ。それ以降、セイレーンが出没する海域を航行する際は、船乗り全員が耳栓をするようになった。セイレーン達は彼らを喰らえなくなり、自信をなくして自死したり飢えで死んだりと、次第に数を減らし、やがて絶滅した……という話だったと思う」
「ふむ」
一見、俺の知る人魚姫とは関係が薄い話に聞こえるのだが……何かが、引っかかる。
「う……」
その時、小さく呻く声が聞こえた。
「マラキア!」
ベッドの上で茜色の瞳を薄らと開いたマラキアの手を、傍らに控えていたリュトラが急いで握る。温もりを感じてか、顔を傾けて手の持ち主を視界に収めたマラキアの表情が柔らかく緩む。
「……リュトラ」
「マラキア、良かった……」
安堵のため息をついたリュトラに額へ口づけられ、マラキアは嬉しそうに微笑んだ。ゆっくりと伸ばされた白く細い指がその頬を包み込み、リュトラは掌に頬を擦り付けるような仕草を見せて、彼への好意を示す。
何とも絵画的な美しい光景なのだが、放置しておくといつまでも寄り添い続けそうなので、仕方なく俺は横槍を入れることにした。
「マラキア、大事ないか」
「……っ!」
「アンドリム様……」
ビクンと肩を揺らし慌てて居住まいを正すリュトラの姿に、実父であるヨルガがベッドから少し離れた場所で肩を揺らして笑いを堪えている。
マラキアのほうはおっとりとした雰囲気のまま俺と視線を合わせ、「ご心配をかけてすみません」と掠れた声で呟いた。
俺はサイドテーブルに備えておいたカラフェからグラスに水を注ぎ、リュトラに助けられて身体を起こしたマラキアに手渡す。マラキアはすぐにそれを飲み干し、グラスを空にしてから、ようやくひと心地ついた様子になった。
「……それでマラキアよ、何があった」
気を失っていた少女を介抱していたマラキア。しかし俺とヨルガが控室に赴いた時には、件の少女は目を覚まし、マラキアは意識を失っていた。
俺の問いかけにすぐには答えず、マラキアはまず自分の掌を見つめ、続けて部屋の中にぐるりと視線を巡らせる。
「……良かった。戻っています」
「戻っている……?」
意味が分からず繰り返した俺の言葉に、彼は「はい」と頷き返した。
「彼女に根こそぎ奪われた水の精霊達が、今は戻ってきています」
「何だと?」
水の精霊を奪われるとは。
「意識を失った彼女をリュトラと一緒に見守り続けていましたが、暫くして……彼女が目を覚ましたのです」
すぐに少女の容態を確かめたマラキアは、彼女が声を出せず唇だけをはくはくと動かして苦しそうに喉を押さえている様子に気づいた。そのため、少し見せてくださいねと断りを入れて、その喉に軽く触れたらしい。
「……その瞬間、全身から水の精霊達が引き剥がされるのを感じました」
治癒魔法の使い手であるマラキアは、水の精霊と相性が良い。
元々、古代竜カリスの恩寵を受けて育つパルセミス王国の民は精霊達の祝福を受けやすいが、その中でも治療術師達は特に水の精霊に愛されることが多く、目には見えずとも、常に彼らの身体に水の精霊が寄り添っていると聞く。
「暴力的な力です。彼女自身にその意思があったかどうかは、定かではないのですが……全ての水の精霊を引き剥がされると同時に、魔力が急激に消失したのを感じました。おそらく、水の精霊達が抵抗した際に、私の魔力を使ったのではないかと」
「それでも、結局は彼女に奪われてしまったわけか」
「えぇ……驚きました。急速な魔力消失は強度の貧血と同じ状態を齎すことが多いですから……」
「それで、マラキアが失神したのか? 何なんだよ、あの子。父上、今からでも牢に入れましょう」
愛しいマラキアに害が及んだ理由を知り、憤慨したリュトラが鼻を膨らませて訴える。
「落ち着けリュトラ。起こってしまったことに怒りをぶつけるよりも、その原因と対策を考察するのが先だ」
「そうですよリュトラ。幸い、水の精霊達を奪われたのは一時的なことのようです。今は魔力も戻りましたし、水の精霊達も元のように私の近くに集まってくれています」
父と恋人に嗜められたリュトラは、渋々といった様子で頷く。俺は彼の頭を軽くポンポンと掌で叩いてから、マラキアに視線を向けた。
「とりあえずは、お前に大事がなくて良かった。しかし、水の精霊を無理やり奪われるか……なかなか、難儀だな」
「えぇ……アンドリム様は、何かお気づきになったことはありませんでしたか」
「……あるには、あるな」
事情より先に、彼女の正体に心当たりがある俺は、肩を竦める。
「人魚は、何を食べるのだろうな」
俺の漏らした疑問に、マラキアは軽く首を傾げた。
「人魚……で、ございますか?」
「あぁ。マラキアは人魚を知っているか」
どうもこの世界ではあまりポピュラーではないらしい人魚について尋ねると、マラキアは先ほどのヨルガ同様に、口元に手を当てて何かを思い出すような仕草をする。
「それは、あの木箱から出てきた少女と何か関係が?」
「まだ確証はない。だが今は、可能な限り情報を集めたい。心当たりはあるか」
「はい……しかし私の知る限り、それは【薬】の材料であったかと」
「……薬だと?」
頷いたマラキアの話では、彼が過去に薬学を修めるために一読した古い書物の中に、製法技術が失われた秘薬の一つとして人魚を素材にしたものがあったらしい。
「眉唾物だと流し読んだものですから、詳細は覚えておりませぬが……確か、若返りの秘薬の類いであったかと」
「ほう?」
これはまた、過去との繋がりを感じる展開だ。
パルセミス王国の始祖である勇者パルセミスと賢者アスバル。彼らがユジンナ大陸の最東端の国、ヒノエの出身であることは、既に調べがついている。そしてヒノエには確か、八百比丘尼の人魚伝承が伝わっていたはずだ。
ちょうど隠密頭のヨイマチがトキワの護衛としてパルセミスに来訪していることだし、話を聞いてみる価値がある。
「あとは、リサルサロスに送られた木箱との関連だな……」
口にした犬を化け物に変化させたという、木箱に入れられた謎の肉。
無関係である可能性もあるにはあるが、状況から鑑みると何か繋がりを持っていると考えるのが妥当だ。
さて、それは良いとしても、現段階で相手の意図が全く掴めないのが不気味ではある。
例えば、リサルサロスに送られた肉が同じようにパルセミスに送られてきたのであれば、それはまだ意味が分かる。可哀想な話ではあるが、早々に犬が口にしてくれたことで肉の危険性が露見したリサルサロスと違い、情報が出回っていなかったパルセミスではうっかり対処を誤ることがあったかもしれなかった。
婚礼を控えた王城内は、いつもより人が多い。元々勤めていた人員に加えて、騎士団のみならず、神殿の神官や女官達、更には一般の業者も多く出入りしている。
そんな中で肉を口にした誰か、或いは何かが化け物に転じ、暴れ出したとしたら。それは相当な混乱を招いたはずだ。
だが実際にパルセミス王城に送られてきたのは、肉ではなく、言葉をなくした裸の美少女。
不思議な魅力に目を奪われたのは確かではあるが、流石に喰らい付きたいと思うものではない。
「あの、アンドリム様」
考え込む俺に、リュトラが声をかけてくる。
「先ほどアンドリム様が、俺に『溺れたことはないか』とお尋ねになりましたよね」
「あぁ、聞いたが……リュトラは溺れた記憶はないのだろう?」
「えぇ、俺は溺れたことがありません。でも、思い出したんです。サナハに留学していた際に、海で溺れた学友を助けたことならあります」
「……詳しく話してくれ」
リュトラがパルセミスの南にあるサナハ共和国に一年間の間留学していたのは、彼が十三歳の時のことだ。
ユジンナ大陸の中でも最大の国土面積を誇るサナハは、大陸の貿易拠点であると同時に、多種多様の民族が暮らしていることでも有名である。リュトラは当時の共和国代表から、サナハの中でも裕福な商家を逗留先として紹介され、そこで一年を過ごした。
「知っての通り、俺はレグレイ家に滞在させてもらっていました。そして当時、他国からサナハに留学している生徒達が、俺以外にも何人かいたんです」
「あぁ。あの頃のサナハは、ユジンナ大陸の諸国から交換留学生を集めていたからな」
交換留学と銘打ってはいても、実質はサナハという国家に対する知名度と好感度を上げることが目的の制度であるため、留学生として招かれたのは各国の王子や姫達が殆どだったはずだ。リュトラは王子ではないが、パルセミス王国内で名高いオスヴァイン家の一員で、騎士団長ヨルガの息子でもあるのだから、参加資格は十分だった。
「一度、サナハを訪れている交換留学生達で集まって、ボヴィア共和国の海に遊びに行ったことがあるんです。白い砂浜が広がるビーチで、波も穏やかな場所でした。だけど泳ぎ始めてから数時間経った頃、ステファンが沖に向かって流され始めたんです」
「ステファンだと……? リュトラ、それはもしかして」
「はい。セムトア共和国で議長を担われているヘルマン様の長男の、ステフです。ステフも俺と同じ時期に、サナハに留学に来ていました」
「……やはり、そうか」
よりにもよって、セムトア共和国の代表である、議長の息子か。
「俺は何度か騎士見習いとして海での水練訓練を受けていましたから、離岸流の存在を知っていました。下手に助けに行けば、自分も沖に向かって流される。俺は『流れにあまり逆らわず、陸に向かってではなく、横に向かって泳げ』と叫びましたが、動揺したステフの耳には届きませんでした」
離岸流は、砂浜に打ち寄せた波が海に戻ろうとすることで起こる強い潮の流れで、どの海岸でも起こり得る危険なものだ。
友を見捨てられなかったリュトラは、離岸流に巻き込まれないように気をつけながら、あっという間に沖に流されていくステファンの後を追って必死に泳いだそうだ。
「追いつけるかどうか、際どいところでした。でも俺がステフの姿を完全に見失ってから暫くして……海の中から、急に彼が俺の前に浮かんできたんです」
「それは、意識のある状態でか?」
「いいえ。ステフは既に失神していました。でも心臓はちゃんと動いていましたし、海面に浮かんだ後は呼吸もちゃんとしていましたので……俺はそのまま仰向けに浮いている彼を引っ張って、何とか砂浜まで泳いだんです」
「……そうだったのか。幼き日でありながら、よく学友を助けたな」
ヨルガに褒められて、リュトラは照れ臭そうに少し鼻先を掻く。
「でも、浮かんでいたステフを陸まで運んだのは確かに俺ですが、離岸流で沖まで流されたステフを助けてくれたのが誰なのかは、見当も尽きません。或いは、海の中から浮かんできたのは俺の勘違いで、偶々ステフが意識を失ったせいで上手に浮かんでいられただけなのか……でも――」
「でも?」
「ステフを引っ張って泳いでいる間に、何度か足に大きな魚の鱗みたいなものが触れたんです」
「……ほう」
「あの時はサメか何かかと警戒したんですが、今になって考えると、サメの鱗はあのような感触ではありませんし、逆に俺達が浅瀬に辿り着くまでステフの身体が沈まないように支えてくれていたみたいな……そんな気もします」
「ふむ……それでその後、セムトアの議長の息子は、どうなったのだ?」
「砂浜で心配して待ってくれていた女の子達の中の一人と良い雰囲気になりました。溺れたショックで暫く寝込んだステフを献身的に支えてくれたんです。パルセミス王国の辺境伯、カルヴァド伯の息女で、名前は確か……」
「……デイジー嬢か」
「あぁ! そうです。うん、彼女と仲良くなっていたと思います」
「成るほど」
ばらばらに起きていた事柄が、少しずつ、糸で繋がってきている気配を感じる。
リサルサロスに送られてきた謎の肉。パルセミスに送られてきた謎の少女。不老の薬、溺れた少年、辺境伯の娘……
全てが何者かの思惑に則り、動かされている気がしてならなかった。
それでもまだまだ、パズルのピースが足りない。
想像だけで絵柄を完成させれば、間違いを引き当てる可能性が高くなる。
相手の出方を待ちつつ、こちらでも情報収集を同時進行で進めていくのが良いだろう。
「……マラキアはひとまず、体調を整えるため最低でも明日までは休息を。無事に回復したら、先ほど話していた薬の記載があったという書物を探してみてくれ」
「承知いたしました。おおよその見当はついておりますので、すぐにお持ちできると思います」
「そうか。それではリュトラ」
「はい」
「接待を手伝ってくれ。旧知の仲であれば、色々と聞き出しやすいだろう」
「と、申しますと……?」
「あぁ。確か、来賓名簿の中に、名前があったはずだ」
セムトア共和国を実質的に動かしている議会のトップ、ヘルマン議長の息子であるステファン・サリ・エルダウと。
――そして、彼の婚約者となったばかりの、カルヴァド伯の息女。デイジー・ラシ・カルヴァド嬢の名前が。
「あぁ、頼んだ」
「御意に」
そのまま胸に片手を押し当てウィクルムに一礼して、謁見の間を後にした俺の腕が、廊下の角を曲がった途端に緩く掴まれる。
俺の移動を阻止した手の持ち主は、共に謁見の間から出てきた騎士団長ヨルガだ。
「……良かったのか?」
確かめてきた彼の言葉は、本来報告すべきもう一つの事実を俺が敢えて告げなかったことに対しての疑問符だろう。
あの謎めいた裸の少女は確かにあの時、ヨルガの息子であるリュトラを見つめ、微笑んだ。リュトラ自身は覚えがないような態度ではあったが、過去に何処かで遭遇している可能性を否定できない。
それがどんな意味を齎すかはまだはっきりとしていないものの、長年国政に携わった勘とでも言うべき何かが、何やら警鐘を鳴らしているのだ。
――おそらくアレは、ろくなものではないと。
「……少し思うところがあるからな。事実関係を確かめてからでも構わんさ」
「そうか」
ヨルガは複雑そうな表情をしているが、この程度の贔屓は、甘んじて受け入れれば良いのだ。
「リュトラに影響の出る何かがあるならば、先にその因果を潰してから報告に上げる。……なぁ、ヨルガよ」
俺は手を伸ばし、ヨルガの顎裏を軽く指先でなぞる。
「リュトラはお前の息子――つまりは、俺の息子でもある」
「っ!」
目を丸くする彼に、畳み掛けるように囁いた。
「我が子は……何をおいても守るべきものだ。そのためならば、多少の報告遅延程度、裏切りにも入らんのだよ」
「……フフッ」
榛色の瞳が、目の下に緩く刻まれた皺と共に、穏やかに緩む。
周囲に他人の気配はないが、王城の中だ。俺は軽く背伸びをして、愛しい夫と軽い口づけだけを交わす。
「……それで、何から手をつける?」
「まずはあの少女が目を覚ましたら事情聴取だな。それと並行して、木箱の持ち込みもとを探す。あの『肉』はいくらなんでも、鮮度が良すぎだ。何かしらの企みがあると見て間違いない」
「あぁ……リュトラが何か覚えてると良いが」
そんな会話を続けながら控室に向かった俺達を待っていたのは――
「マラキア! しっかりしてくれ、マラキア!!」
びしょ濡れの寝台と、その上に呆然と座っている美しい少女。
そしてまるで彼女と入れ替わったかのように青褪めた表情で意識を失っているマラキアと、彼を腕に抱き上げて必死に呼びかけている、リュトラの姿だった。
すぐにリュトラとマラキアのもとに駆け寄るヨルガを他所に、俺は部屋の入り口に立ち、呆然としている少女に視線を向ける。
寝台の上で上半身を起こしている彼女は綿のチュニックを着せられていた。その白い生地の上で、青い小さな光が跳ねている。
「水の精霊……?」
精霊達の可視化は興奮の現れだと聞いたばかりだ。
とはいえ、光りすぎではないだろうか。
それに、少女の膝の上で電飾のような点滅を繰り返している精霊達は置いておくとしても、何故マラキアが失神しているのか、分からない。
どちらにしても、まずはマラキアの容態を診るのが先決だ。
俺はリュトラの傍らに膝をつき、失礼するぞと声をかけてマラキアの白い首筋に指を押し当てる。
少し低めの温度だが、低体温の類いではない。触れた脈はしっかりしているし、呼吸も規則的だ。
「アンドリム様」
不安そうに見上げてくるリュトラに微笑みかけ、大丈夫だと宥めるように、俺はその背中を軽く撫でてやる。
「心配するな。気を失っているだけのようだ。脈にも体温にも異常はない」
「……良かった」
俺の言葉を聞き、緊張していたリュトラの肩から少し力が抜けた。腕の中に抱えたマラキアの額に唇を押し当て軽く頬を擦り寄せる仕草は、大型犬を連想させる。
「それで何があった? リュトラ」
ヨルガに尋ねられた彼は軽く首を横に振り、警戒を滲ませた表情で寝台の上に座ったままの少女を見つめた。
「俺にも、何が何だか……ここまで連れてきたあの子を、マラキアが看病していたんです。暫く経って、彼女が目を覚ましました。マラキアが声をかけて、彼女がマラキアを見上げて……そうしたら何故か、マラキアがひどく驚いた表情をしたと思ったら、そのまま倒れてしまったんです」
「ふむ」
状況は分かったが、理由が分からない。得体の知れないこの少女が原因であることは間違いないだろうが、どうしたものか。
俺の視線を感じてか、少女がゆっくりと顔を動かし、俺と目を合わせる。
「……っ?」
この感覚を、何と表現したら良いのか。
確かに美しくはあるが、見た目は普通の少女だ。二本の腕と、二本の脚。背中に羽が生えていることもなく、下半身が魚の姿でもない。
それなのに、本能が訴えかけてくる。――これは『人間』ではない、と。
例えて言うならば、イルカのような賢い動物と正面から向き合っているような、意識がこちらに向いているのは分かるが言葉が通じているかどうかは定かでない、だが何故か不快感はない……そんな不思議な心地だ。
「さて。君は、事情を説明できるだろうか」
「ぅ……」
「言葉は、分かるか? 何故、あのような箱の中に入れられていた?」
「……ぁ」
俺の投げかけた質問に、少女ははくはくと唇を動かして何かしら答えようとするものの、喉を通る空気が音になっていない。
「声が出ないのだな……あぁ、無理をするな。頷くか、首を横に振るかで答えてくれたら良い。……まず、私の言っていることは分かるか?」
こくんと、少女が頷く。
「そうか。君は――ここが何処か、知っているか?」
ふるふると、首が横に振られる。
「何故、裸で木箱に入れられていたかは?」
再び、首が横に振られた。
「……君は歩けるだろうか?」
少女は僅かに顔を歪め、嫌そうに首を横に振る。
ヨルガとリュトラは俺が問いかける意味を捉えあぐねているようだったが、静観していた。
「立ってみようか」
「ぅ……ぁ……?」
「心配せずとも、確かめたいだけだ。すぐに君をどうこうするつもりはない……さぁ」
俺は寝台に近づき、少女に手を差し出す。
深い青色の瞳を瞬かせた彼女は逡巡の後に俺の手を取り、寝台の上に投げ出していた足を床に下ろした。
「ゆっくりで良い。立ってごらん」
頷いた少女が、俺の腕に縋るようにして立ち上がろうとして――
「――ぅ!!」
激痛に顔を歪め、崩れ落ちかける。少女の身体を抱きとめた俺は、すぐに彼女を寝台の上に戻してやった。
小さく身体を震わせながら痛みに耐える彼女の周りで、再び興奮した水の精霊達が忙しない点滅を繰り返す。俯いたためか、長い金髪が顔の横に流れ、美しい稜線を描く首から背中のラインと、鎖骨近くに薄らと残されていた傷跡が照らし出された。
――これは、いつのものだろうか。
俺は彼女の身体を毛布で包み込み、部屋の外で控えていた衛兵を呼んで、城勤めのメイド達を何人か寄越すように伝える。
到着を待つ間に再び考え込んだ俺の腰を、ヨルガの腕がやんわりと引き寄せ、寄り掛からせてくれた。
「……ありがとう、ヨルガ」
いつもの温もりを背中に感じ、少し落ち着いた心地になる。
「その少女について何か、心当たりが?」
「あぁ。もし俺の知っているものであれば……なかなかに厄介な案件だ。……時に、リュトラ」
「はい、アンドリム様」
俺はマラキアを抱えたままのリュトラに問いかけた。
「騎士団は海での訓練があると思うが……お前は、海で溺れたことがないだろうか?」
「え……」
「そして誰かに助けられたことは、ないか?」
リュトラは何度か目を瞬かせてから少し考え込んでいたが、やがてゆっくりと首を横に振った。
「ありません。俺は、泳ぎは得意なほうです」
「……溺れたことも、助けられたことも、ないのだな」
「はい、ないです」
「アンリ。俺の知る限りでも、リュトラが溺れたことは一度もない」
「……そうか」
リュトラの証言に加えてヨルガの補足もあるなら、間違いはないだろう。
ほっと安堵の吐息を漏らす俺に、二人は不思議そうな表情をしている。
「アンリ、何を知っている……? この少女は、何者だ」
海の香りと共に姿を見せた、美しい少女。
水の精霊に愛され、声を失い、二本の足で歩くと激痛に苛まれる。
誰もがよく知る、童話で語られた、伝説上の生き物。
だがこの世界であれば、それは、実在していてもおかしくはない。
「……人魚」
「……何だと?」
俺の言葉に、ヨルガは目を丸くする。
「その少女は――人間の足を手に入れた人魚かもしれない」
† † †
『人魚姫』は、前の世界で誰もがよく知るアンデルセンの童話だ。
嵐の夜に海で溺れた王子様を助けた人魚の姫が、海の魔女から声と引き換えに足を貰い、王子様に会いに行く。王子様は人魚姫に優しくしてくれるけれど、言葉を話せない彼女が自分を助けてくれた相手だと気づけない。人魚姫は王子様と結ばれないと海の泡となって消えてしまう運命なのに、王子様は隣国のお姫様が自分を助けてくれた人だと思い込み、彼女と結婚する。人魚姫は海に飛び込み、泡となって消えていく。
幼心に何とも言えないトラウマを残す物語だけに、大まかな粗筋程度は、誰でも誦んじているのではないだろうか。
「人魚……とは、なんだ?」
俺のセリフを聞いて、ヨルガが首を傾げている。……ということは、この世界で『人魚姫』の童話は浸透していないのか。
「海の中に築かれた王国に住み、下半身が魚の姿をした、総じて美しい生き物だ。気まぐれに、溺れている人間を助けることがあると聞く」
「その子は、人間の姿をしているようだが」
「制約で、足を手に入れることができる。俺もそれ以上のことは、詳しく分からないがな」
「そうなのか」
ヨルガが考え込んでしまっているうちに、呼び寄せたメイド達が衛兵に連れられて詰所にやってきた。
俺達は寝台の上で丸くなっている少女の看病を彼女達に任せ、未だ目を覚さないマラキアを抱きかかえたリュトラを連れて、オスヴァイン家の屋敷に戻ることにする。
王城からオスヴァイン邸までは、馬車で十分程の距離だ。
ヨルガの部下である騎士の一人が先触れに走っていたので、屋敷の扉前で執事長のレゼフとフットマン達が担架を準備して待ってくれていた。しかし、リュトラは彼らの手を借りることなく、マラキアを抱えたまま客間に向かう。
上質な寝具で整えられたベッドの上に寝かせられたマラキアの顔色は、少し血の気を取り戻してきたようだ。
まずはこのままマラキアが目を覚ますのを待ち、何があったかを聞き出そう。
「……そうだ、セイレーンだ」
俺から人魚の話を聞いた後、しきりに首を捻っていたヨルガが、ようやく思い付いたと見えて、ふいに声をあげた。
「セイレーン?」
「海に住む魔物だ。美しい女性の見かけをしていて、歌で船乗り達を惑わせてはその肉を喰らい、船を海に沈める。子供の頃に父上から聞いた寓話に、そんなものがあった気がする」
「成るほど」
ギリシャ神話に出てくる、下半身が鳥の姿をした海の魔物だな。確か後々には、人魚と同じように下半身が魚の姿で描かれることが多くなっていたのではなかったか。そっちの話は伝わっているわけか。
「ただ、俺の聞いた話では、セイレーンは既にいないはずだ」
「いない……?」
「あぁ。セイレーンの住処は海の中にあって、以前は船乗り達がよく襲われていたと聞く。だがある日、琴の名手の演奏の音色でセイレーンの呪縛から船乗り達を守ることに成功した。それで、彼女達の声を聞かなければ良いということに気づいたんだ。それ以降、セイレーンが出没する海域を航行する際は、船乗り全員が耳栓をするようになった。セイレーン達は彼らを喰らえなくなり、自信をなくして自死したり飢えで死んだりと、次第に数を減らし、やがて絶滅した……という話だったと思う」
「ふむ」
一見、俺の知る人魚姫とは関係が薄い話に聞こえるのだが……何かが、引っかかる。
「う……」
その時、小さく呻く声が聞こえた。
「マラキア!」
ベッドの上で茜色の瞳を薄らと開いたマラキアの手を、傍らに控えていたリュトラが急いで握る。温もりを感じてか、顔を傾けて手の持ち主を視界に収めたマラキアの表情が柔らかく緩む。
「……リュトラ」
「マラキア、良かった……」
安堵のため息をついたリュトラに額へ口づけられ、マラキアは嬉しそうに微笑んだ。ゆっくりと伸ばされた白く細い指がその頬を包み込み、リュトラは掌に頬を擦り付けるような仕草を見せて、彼への好意を示す。
何とも絵画的な美しい光景なのだが、放置しておくといつまでも寄り添い続けそうなので、仕方なく俺は横槍を入れることにした。
「マラキア、大事ないか」
「……っ!」
「アンドリム様……」
ビクンと肩を揺らし慌てて居住まいを正すリュトラの姿に、実父であるヨルガがベッドから少し離れた場所で肩を揺らして笑いを堪えている。
マラキアのほうはおっとりとした雰囲気のまま俺と視線を合わせ、「ご心配をかけてすみません」と掠れた声で呟いた。
俺はサイドテーブルに備えておいたカラフェからグラスに水を注ぎ、リュトラに助けられて身体を起こしたマラキアに手渡す。マラキアはすぐにそれを飲み干し、グラスを空にしてから、ようやくひと心地ついた様子になった。
「……それでマラキアよ、何があった」
気を失っていた少女を介抱していたマラキア。しかし俺とヨルガが控室に赴いた時には、件の少女は目を覚まし、マラキアは意識を失っていた。
俺の問いかけにすぐには答えず、マラキアはまず自分の掌を見つめ、続けて部屋の中にぐるりと視線を巡らせる。
「……良かった。戻っています」
「戻っている……?」
意味が分からず繰り返した俺の言葉に、彼は「はい」と頷き返した。
「彼女に根こそぎ奪われた水の精霊達が、今は戻ってきています」
「何だと?」
水の精霊を奪われるとは。
「意識を失った彼女をリュトラと一緒に見守り続けていましたが、暫くして……彼女が目を覚ましたのです」
すぐに少女の容態を確かめたマラキアは、彼女が声を出せず唇だけをはくはくと動かして苦しそうに喉を押さえている様子に気づいた。そのため、少し見せてくださいねと断りを入れて、その喉に軽く触れたらしい。
「……その瞬間、全身から水の精霊達が引き剥がされるのを感じました」
治癒魔法の使い手であるマラキアは、水の精霊と相性が良い。
元々、古代竜カリスの恩寵を受けて育つパルセミス王国の民は精霊達の祝福を受けやすいが、その中でも治療術師達は特に水の精霊に愛されることが多く、目には見えずとも、常に彼らの身体に水の精霊が寄り添っていると聞く。
「暴力的な力です。彼女自身にその意思があったかどうかは、定かではないのですが……全ての水の精霊を引き剥がされると同時に、魔力が急激に消失したのを感じました。おそらく、水の精霊達が抵抗した際に、私の魔力を使ったのではないかと」
「それでも、結局は彼女に奪われてしまったわけか」
「えぇ……驚きました。急速な魔力消失は強度の貧血と同じ状態を齎すことが多いですから……」
「それで、マラキアが失神したのか? 何なんだよ、あの子。父上、今からでも牢に入れましょう」
愛しいマラキアに害が及んだ理由を知り、憤慨したリュトラが鼻を膨らませて訴える。
「落ち着けリュトラ。起こってしまったことに怒りをぶつけるよりも、その原因と対策を考察するのが先だ」
「そうですよリュトラ。幸い、水の精霊達を奪われたのは一時的なことのようです。今は魔力も戻りましたし、水の精霊達も元のように私の近くに集まってくれています」
父と恋人に嗜められたリュトラは、渋々といった様子で頷く。俺は彼の頭を軽くポンポンと掌で叩いてから、マラキアに視線を向けた。
「とりあえずは、お前に大事がなくて良かった。しかし、水の精霊を無理やり奪われるか……なかなか、難儀だな」
「えぇ……アンドリム様は、何かお気づきになったことはありませんでしたか」
「……あるには、あるな」
事情より先に、彼女の正体に心当たりがある俺は、肩を竦める。
「人魚は、何を食べるのだろうな」
俺の漏らした疑問に、マラキアは軽く首を傾げた。
「人魚……で、ございますか?」
「あぁ。マラキアは人魚を知っているか」
どうもこの世界ではあまりポピュラーではないらしい人魚について尋ねると、マラキアは先ほどのヨルガ同様に、口元に手を当てて何かを思い出すような仕草をする。
「それは、あの木箱から出てきた少女と何か関係が?」
「まだ確証はない。だが今は、可能な限り情報を集めたい。心当たりはあるか」
「はい……しかし私の知る限り、それは【薬】の材料であったかと」
「……薬だと?」
頷いたマラキアの話では、彼が過去に薬学を修めるために一読した古い書物の中に、製法技術が失われた秘薬の一つとして人魚を素材にしたものがあったらしい。
「眉唾物だと流し読んだものですから、詳細は覚えておりませぬが……確か、若返りの秘薬の類いであったかと」
「ほう?」
これはまた、過去との繋がりを感じる展開だ。
パルセミス王国の始祖である勇者パルセミスと賢者アスバル。彼らがユジンナ大陸の最東端の国、ヒノエの出身であることは、既に調べがついている。そしてヒノエには確か、八百比丘尼の人魚伝承が伝わっていたはずだ。
ちょうど隠密頭のヨイマチがトキワの護衛としてパルセミスに来訪していることだし、話を聞いてみる価値がある。
「あとは、リサルサロスに送られた木箱との関連だな……」
口にした犬を化け物に変化させたという、木箱に入れられた謎の肉。
無関係である可能性もあるにはあるが、状況から鑑みると何か繋がりを持っていると考えるのが妥当だ。
さて、それは良いとしても、現段階で相手の意図が全く掴めないのが不気味ではある。
例えば、リサルサロスに送られた肉が同じようにパルセミスに送られてきたのであれば、それはまだ意味が分かる。可哀想な話ではあるが、早々に犬が口にしてくれたことで肉の危険性が露見したリサルサロスと違い、情報が出回っていなかったパルセミスではうっかり対処を誤ることがあったかもしれなかった。
婚礼を控えた王城内は、いつもより人が多い。元々勤めていた人員に加えて、騎士団のみならず、神殿の神官や女官達、更には一般の業者も多く出入りしている。
そんな中で肉を口にした誰か、或いは何かが化け物に転じ、暴れ出したとしたら。それは相当な混乱を招いたはずだ。
だが実際にパルセミス王城に送られてきたのは、肉ではなく、言葉をなくした裸の美少女。
不思議な魅力に目を奪われたのは確かではあるが、流石に喰らい付きたいと思うものではない。
「あの、アンドリム様」
考え込む俺に、リュトラが声をかけてくる。
「先ほどアンドリム様が、俺に『溺れたことはないか』とお尋ねになりましたよね」
「あぁ、聞いたが……リュトラは溺れた記憶はないのだろう?」
「えぇ、俺は溺れたことがありません。でも、思い出したんです。サナハに留学していた際に、海で溺れた学友を助けたことならあります」
「……詳しく話してくれ」
リュトラがパルセミスの南にあるサナハ共和国に一年間の間留学していたのは、彼が十三歳の時のことだ。
ユジンナ大陸の中でも最大の国土面積を誇るサナハは、大陸の貿易拠点であると同時に、多種多様の民族が暮らしていることでも有名である。リュトラは当時の共和国代表から、サナハの中でも裕福な商家を逗留先として紹介され、そこで一年を過ごした。
「知っての通り、俺はレグレイ家に滞在させてもらっていました。そして当時、他国からサナハに留学している生徒達が、俺以外にも何人かいたんです」
「あぁ。あの頃のサナハは、ユジンナ大陸の諸国から交換留学生を集めていたからな」
交換留学と銘打ってはいても、実質はサナハという国家に対する知名度と好感度を上げることが目的の制度であるため、留学生として招かれたのは各国の王子や姫達が殆どだったはずだ。リュトラは王子ではないが、パルセミス王国内で名高いオスヴァイン家の一員で、騎士団長ヨルガの息子でもあるのだから、参加資格は十分だった。
「一度、サナハを訪れている交換留学生達で集まって、ボヴィア共和国の海に遊びに行ったことがあるんです。白い砂浜が広がるビーチで、波も穏やかな場所でした。だけど泳ぎ始めてから数時間経った頃、ステファンが沖に向かって流され始めたんです」
「ステファンだと……? リュトラ、それはもしかして」
「はい。セムトア共和国で議長を担われているヘルマン様の長男の、ステフです。ステフも俺と同じ時期に、サナハに留学に来ていました」
「……やはり、そうか」
よりにもよって、セムトア共和国の代表である、議長の息子か。
「俺は何度か騎士見習いとして海での水練訓練を受けていましたから、離岸流の存在を知っていました。下手に助けに行けば、自分も沖に向かって流される。俺は『流れにあまり逆らわず、陸に向かってではなく、横に向かって泳げ』と叫びましたが、動揺したステフの耳には届きませんでした」
離岸流は、砂浜に打ち寄せた波が海に戻ろうとすることで起こる強い潮の流れで、どの海岸でも起こり得る危険なものだ。
友を見捨てられなかったリュトラは、離岸流に巻き込まれないように気をつけながら、あっという間に沖に流されていくステファンの後を追って必死に泳いだそうだ。
「追いつけるかどうか、際どいところでした。でも俺がステフの姿を完全に見失ってから暫くして……海の中から、急に彼が俺の前に浮かんできたんです」
「それは、意識のある状態でか?」
「いいえ。ステフは既に失神していました。でも心臓はちゃんと動いていましたし、海面に浮かんだ後は呼吸もちゃんとしていましたので……俺はそのまま仰向けに浮いている彼を引っ張って、何とか砂浜まで泳いだんです」
「……そうだったのか。幼き日でありながら、よく学友を助けたな」
ヨルガに褒められて、リュトラは照れ臭そうに少し鼻先を掻く。
「でも、浮かんでいたステフを陸まで運んだのは確かに俺ですが、離岸流で沖まで流されたステフを助けてくれたのが誰なのかは、見当も尽きません。或いは、海の中から浮かんできたのは俺の勘違いで、偶々ステフが意識を失ったせいで上手に浮かんでいられただけなのか……でも――」
「でも?」
「ステフを引っ張って泳いでいる間に、何度か足に大きな魚の鱗みたいなものが触れたんです」
「……ほう」
「あの時はサメか何かかと警戒したんですが、今になって考えると、サメの鱗はあのような感触ではありませんし、逆に俺達が浅瀬に辿り着くまでステフの身体が沈まないように支えてくれていたみたいな……そんな気もします」
「ふむ……それでその後、セムトアの議長の息子は、どうなったのだ?」
「砂浜で心配して待ってくれていた女の子達の中の一人と良い雰囲気になりました。溺れたショックで暫く寝込んだステフを献身的に支えてくれたんです。パルセミス王国の辺境伯、カルヴァド伯の息女で、名前は確か……」
「……デイジー嬢か」
「あぁ! そうです。うん、彼女と仲良くなっていたと思います」
「成るほど」
ばらばらに起きていた事柄が、少しずつ、糸で繋がってきている気配を感じる。
リサルサロスに送られてきた謎の肉。パルセミスに送られてきた謎の少女。不老の薬、溺れた少年、辺境伯の娘……
全てが何者かの思惑に則り、動かされている気がしてならなかった。
それでもまだまだ、パズルのピースが足りない。
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「……マラキアはひとまず、体調を整えるため最低でも明日までは休息を。無事に回復したら、先ほど話していた薬の記載があったという書物を探してみてくれ」
「承知いたしました。おおよその見当はついておりますので、すぐにお持ちできると思います」
「そうか。それではリュトラ」
「はい」
「接待を手伝ってくれ。旧知の仲であれば、色々と聞き出しやすいだろう」
「と、申しますと……?」
「あぁ。確か、来賓名簿の中に、名前があったはずだ」
セムトア共和国を実質的に動かしている議会のトップ、ヘルマン議長の息子であるステファン・サリ・エルダウと。
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