スライム級の俺がドラゴン級になるまで

燈蒼

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女神の心

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 優雅な朝を迎えると最近毎日と言っていいほど話していたせいでついつい足を運んでしまう。
 教会だ。
「なんだぁ~お前は」
 なんだか不機嫌な声が耳に届く。
 特に意味はないな。
「ならば来るな」
 ……そうか……。
 仕方なく手を崩そうとするがルフに呼び止められた。
「いや……嘘だ。……いつでも来い」
 ?
 どっちなんだ。
「……いつでも話し相手になってやる」
 きゅん

 …………ハッ、無意識にキュンとしてしまった。
 すごいかわいいじゃないか。
「ありがとう」
「かわいいなんて言ってくれる人いないし……」
 それは実際にかわいいんだから仕方がないな。
「けど声だけじゃないか」
 じゃあ実体で出てこい。いくらでも言ってやる。
「そ、そうか? …………明日なら降りれるな」
 だが明日はもう試験だぞ。
「それもそうじゃったな……試験が終わったら行くとしよう」
 待ってるよ。
「うん」
 ……話すこともないな。最近日本はなんか面白いことはないのか?
「あぁ、面白いことならあったぞ」
 教えてくれ。
「お前の会社は潰れた」
 そうか。順当だな。
「お前の部署のマドンナやらは会社を設立したんだ。これが面白いほど成功していてな。和食料理屋をやっているぞ。いつか見せてやろう」
 確かにいいことだがそこまで面白いことか?
 だが上機嫌なルフの声はやはり健康にいい。
「そうだな。大して面白くない。面白いのはここからだ」
 すごいハードルあげるな。
「唐突に同性婚が認められたんだ」
 …………ほう?
「初の女性総理大臣が就任して、その人が同性愛者らしいんだ。それでだな、マドンナと二番手が結婚した。……あぁ、今もすごいいちゃついてるぞ」
 それはとても見てみたい。まさかあそこの百合コンビとは。
「あっ……この二人……エロすぎるな………」
 …………。
 これは……切ったほうがいいかもしれない。
「あ、すまん、つい熱中してしまった。お前も見たほうがいいぞ。…………あっダメだ。女神である私にすら刺激が強すぎる」
 ほんとに女神かよ。
 腐りかけの女子じゃねえか。準腐女子だな。もはや腐りきっているかも。
「ちょっと……一人で……集中して見るから切ってくれ。……聞いてたかったら……聞いててもいいぞ……? …………刺激は強いがな」
 やめましょう、そういうの。健全に行こう。
 だが……めちゃくちゃ興味ある。俺はそこまで純粋じゃあない。聞いてていいと言われたのだからいいのではないのだろうか。
 怒られるかもなぁ。

 俺は記憶の奥底にしまって教会をあとにする。
 聞いてないからな。

 飽きましたね。
 基礎訓練には面白みがない。魔法込みの訓練ももう思いつかないしな。
 そういえば魔核は売れるのか? 定番でいくなら冒険者の収入源だと思うのだが。
 まぁ何事も試しだ。ギルドなら買い取ってくれそうなんだが。

「はい! 買い取らせていただいてますよ!」
 やはり売れるようだ。しかも聞いているとそれなりの値段で売れるようだ。
「これはなんに使うんだ?」
「魔道具と呼ばれるものであったり、珍しいものだと超高級装飾品などに使われることもあります。ステータス確認の魔道具も読心術を持った魔物の核で作られたんですよ」
 ほう、結構使われているのだな。
「……ですが……魔核は冒険者の方でないとギルドには売れないんです。偽物の可能性がありますからそれに見合った実力の証明が必要なんです」
 よくできている……のか? ならこれは試験の後か。
「大まかな鑑定とかはできないのか」
「本当に大まかなものでしたら私が致しましょうか?」
「頼む」
 袋から数個の魔核を取り出し、カウンターに置く。
「……そちらの袋には……すべて魔核が入っているのですか……?」
 目を見開いてそんなことを言ってくるがそこまでの反応をすることなのだろうか。
「そうだが」
「……とりあえず鑑定致します」
 カウンターの数個の魔核に視線を落とし、手袋を着けて丁寧に観察を始めた。
 その体から僅かに淡い光が漏れている。
 なにかしらの身体能力を向上させているのだろうが、俺にはさっぱりだ。
「こちらはスライムの魔核でしょう。こちらはアイスドッグ。こちらは……アルベロではないですか」
 アルベロは知らんが確かにスライムと犬の魔物の核だ。アルベロと呼んでいたものは確か木の魔物だ。訓練をしていたら間違えて倒してしまった。
「スライム以外はなかなかにレア度の高いものですね。これらだけでも売ると合計で二十万は下らないでしょう」
 二十万か。日本円じゃないと分からん。ただ俺の泊まってる味気ない宿なら百日くらい泊まれる。
「ありがとう」
 魔核をまとめて袋にしまった。
 アルスもそのタイミングで手袋を外してポケットに突っ込んでいた。
「またのお越しを」
 背を向けてギルドから立ち去る。

 ギルドを出て目的地もなく歩きながら考え事をする。
 装飾品とか言ってたよな。
 いつものお礼でルフになんかあげるのも良いかも。
 そうだな……大抵のものは羽衣に見劣りするだろう。羽衣の近くでは分が悪い。しかし、足やらだと着物ではまず見えない。せっかくのプレゼントだ、どうせなら見えるところに着けてほしい。

 ……そうか。それがあったな。

 指輪 ガーデンリング

 白い字でそう書かれた茶色の看板が扉の上にある。昔ながらの茶色の窓枠に奥がよく見えない窓ガラス。渋い魅力を感じさせる。
 気付いたときには中に入っていた。惹き込まれたのだ。
「いらっしゃいませ」
 一度も行ったことはないがバーのような雰囲気を感じさせる落ち着いた店主と思しき人物の低い声。
 カウンターの奥に佇み朗らかな笑みを浮かべている。
 置かれている数種類の指輪は輝きを感じさせ、つい魅入ってしまう芸術としての完成度の高さがうかがえるような美しさがそれにはあった。
「こちらはあなたが?」
 言葉も少し丁寧になっていた。尊敬の念を抱いてしまう程のものだということは一目で分かる。
「ええ、私の作品でございます」
 それはまさに作品と呼ぶにふさわしい代物だ。
「指輪のオーダーメイドはできるのでしょうか」
 魔核を使った店主の指輪。一体どうなるのか想像もつかない。
「もちろんでございます。お作り致しましょうか」
「これを使って作っていただけないでしょうか」 
 綺麗な薄紫色の魔核。今まで一度だけ見た普通よりも強いスライムが落とした魔核だ。ルフに一番似合うだろう。
「……これは……魔核……というものでしょうか」
「知っているのですか?」
 少し意外だった。冒険者でも何でもなさそうな雰囲気だからな。
「はい……職人の中では最高級の素材として有名です。まさか魔核を使えるときが来ようとは」
 そうだったのか。しかし有名になるほどこれは高級な代物とは思えないな。
「作っていただけるということでしょうか?」
「もちろんでございます。魔核を使えるとは光栄です」
 しまった。周りの指輪を見ると最低三十万はしている。そんな金は手元にない。
「お代は頂きません。その代わり、私に魔核を売って頂けないでしょうか」
「よろしいのですか、そんな」
 朗らかな笑みをこちらに向ける。
「えぇ、私はお金のために指輪を作っているのではありません。指輪を心の底から愛しているからなのです」
 かっこいいな。はっきりと言い切るというのはなかなかに勇気のいることだ。
「……分かりました。ギルドでの買い取り価格の七割でお譲りします」
「よ、よろしいのですか……! ありがとうございます」
 数十万の指輪を完全にタダはさすがに申し訳ないからな。このくらいしないと。
「あまり飾らない指輪を作っていただけるとありがたいです。何日か後に受け取りに来ますのでその時にまた」
 この世のどんな宝石よりも美しくなった魔核を見られるのはとても楽しみだ。
「ぜひ、期待してお待ち下さい」
 大いに期待しているさ。確信に近いな。


 することもないので森に入って適当に訓練をする。
 せっかくメジャーをもらったのだから使いたいところだがどうも思い浮かばん。いっそ売ってやろうか。

 ……冗談だ。
 やることもないし穴でも掘るか。
 火球を生成し、地面にぶつける。深さ1メートルちょっとの穴ができた。
 なんのために掘ったかって? 意味はない。言うなら魔法が使いたかったから。

 突発的な思いつきから今持てる全魔力を1つの火球、サイズをそのままに込める魔力の密度を数十、下手したら数百倍にする。
 引き伸ばして矢のような姿にしてさらに火力を一点に集中させる。
 サイズ調整により保たれた操作性を利用し、速度を乗せて穴の中心部分にぶつける。
 今まで聞いたどの着弾音とも比べ物にならない音と土煙をあげて火の矢は消滅し、魔力を使い切ってフラフラになった体を柔らかくもない地面に投げ出した。
 シンクホール現象、というものがあるらしいな。まさにそんなんだ。下方にだけ破壊力が向くようにすると数十メートル、いや、数百メートルだな。
 数百メートルに渡って地層が見えるようになっている。なんなら深すぎて底が見えない。
 大きな達成感だ。体の奥底から染み渡る爽快感が体の疲労を消し飛ばして余りあるほどの達成感を生み出している。
 腕試し的な感じで穴を飛び越えてみることにする。使うのは足だけど。
 少し助走をつけて走り出す。
 数メートルはあろう穴の手前で踏み込んで向こうを目指す。数秒の間空中にいた。意外とあっさり飛び越え、肝を冷やすほどでもなかったと息をこぼす。
「よっしもう終わり」
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