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はぁ?

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 背中の痛みが取れたボクは、手を後ろへ回して腫れていない確認、

(よかった、腫れてない)

 腫れていないことに一安心。今までに経験したことのない激痛に正直不安だったけど、どこも問題なかった。

「大人の階段……きゃあああ!」

 それからボクは一人盛り上がるエリザベスさんへ。

「話が途中になってしまってごめん」

 また張り手が飛んでくるかもしれないと身構えながら話しかけた。

「ここへ来てもらったのはあなたにあって欲しい人がいるからなんです」

 ボクは「535」と記されたドアを指差し、

「そこはわたしの部屋ではありま……もしかして他人の部屋で!?」

 目を見開き、信じられないものを見る目でボクを見つめるエリザベスさんの反応は無視して、

「今日はオルナさんにどうしてもあっていただきたいんです!」

 頭を下げた。

「……」

 ボクの言葉を咀しゃくして意味を理解しようとしているのかしばらく固まった状態のエリザベスさんは、

「……は?」

 長い沈黙の後、疑問符を浮かべた。



 ◇◇◇



(た、他人の部屋でなんて……でも聞いた事があります。殿方の中にはそう言った……寝取り?がお好きだという方がいらっしゃると)

 ふぅ……と盛り上がりすぎたので、一旦呼吸を整える。

「今日は」

 息を整えていたら王子さまが喋り出したので、

(いけないいけない。王子さまが喋っている途中でした)

 わたしは王子さまへ意識を向けた。

「オルナさんにどうしてもあっていただきたいんです!」

 言い終わると王子さまはわたしに頭を下げた。

「……」

 わたしは頭を下げる王子さまに即答せず、

(535……)

 部屋の番号を見た。

 オルナ……。

「あなたとオルナさんのことについては知っています」

 王子様は頭を下げたまま続きを話す。

「……」

 わたしはそれに返事をせず、王子様に背を向けて玄関へと歩き出した。

(オルナ……誰それ?)

"約束する"

 幼い少女の声……と風に舞う桃色の長い髪。

(うるさい……)

"わたしとエリザベスはずっと一緒"

 夕日に照らされた幼い無邪気な笑顔……。

(嘘つき)

"隠し事なんてしない"

 その言葉が嬉しくて当時のわたしは桃色の髪の少女を抱きしめた。

(裏切り者……!)

 怒りに顔を歪め、床を蹴りながら玄関へと歩く。

「そんなに怒るということはあなたも当時のことで後悔していることがあるのでは?」

 ふいに背後からそんな言葉を投げかけられた。

「……」

 普通の言葉と同じ。息を吐くのと同時に出たような言葉。考えていっているというよりもわたしの様子を見て反射的に出た言葉。

 普段なら相手にしない。

 この程度の言葉がわたしの心に届くことはない。だけど、この時ばかりは違う。違った。

「はぁ?」

 わたしは振り返り王子様を睨みつけた。
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