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野営③
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夕陽がほぼ沈み、空では1番星が輝く。夕陽のわずかな光を頼りに地面に落ちた枯れ枝を拾う。
「はぁぁぁ……だるっ」
限界を迎え、歩くたびに小刻みに震える足腰の筋肉と疲労による眠気で瞼が重い。
(今すぐに寝たい。国王が持たせてくれたふっかふかの寝袋で)
眠る自分の姿を想像したら、気が抜けてふらついてその場に膝をついた。
(あー、薪をもう少し拾わなきゃなぁ……)
と思いつつも、
「動きたくねえ」
あらがいがたい眠気に瞼が閉じかけた。その時、
「……ん?なんだ?」
不意にどこからか人の声のようなものが聞こえた気がした。
「……」
気になって耳を澄ませてみた。確かに人の声らしきものが聞こえた。
「……人だ」
風切り音や動物の鳴き声なんかが混じっていて何を言っているかはよく聞こえなかった。
「ていうかよくよく考えたら俺たちが今いる森って魔族領で、ここの国の生き残りは全員王国にいるって言ってたよな。国王が」
『幽霊』……そんなワードが脳裏をよぎった。
「まじかよ……異世界に来た影響でそっち系の能力にも目覚めちゃった感じなの俺?」
昔から心霊系が大嫌いで、その手の番組を見てしまった日には1ヶ月、夢の中に幽霊が出てきたり、常に背後が気になり、不意に話しかけられたら思わず飛び跳ねてしまう。
「ゴクッ……」
生唾を飲み込む。額からはベッタリとした汗が流れ、周囲の気温がグッと下がり、湿り気を感じた。
雨が上がってから6時間しか経っていないことを考えれば湿気を感じるのは当然だと、考えすぎだと、自分に言い聞かせた。
「……は、ははは。考えすぎだって」
しかし、そう自分に言い聞かせるほどに声のした方が気になって仕方なかった。
「……」
恐る恐る。声のした方へ身構えながら進む。一瞬にして跳ね上がる鼓動と血流。それに伴い運動直後のような苦しい呼吸へと状態が変化し、わずかに残っていた眠気も吹き飛んだ。
「……」
薮を掻き分け、そこから覗き込んだ。
「……」
覗き込んだ先は少しだけ開けた場所だった。暗くてよく見えなかったけど、そんな開けた場所の真ん中で白い服を着た女?がうずくまって何かをぶつぶつ呟いていた。
「……」
人か幽霊なのか定かではないその女?の正体が気になった。いつもなら逃げていた。けど、好奇心が抑えられず観察し続けた。
「……さぃ……なさぃ」
その女?は、うずくまっているのが疲れたのか。それとも周囲を警戒するためなのか。頭を覆っていた両腕を解いて顔を上げた。
そして横を向いた、と思う。夕陽が沈みきって完全に暗くなってて、頼りない月明かりだけが照らしていたからよく見えなかった。
じゃあ何で横を向いたのかわかったのか。それは暗闇の中で輝く二つの目と視線が重なったから。
「……」
重なった視線が離れない。相手に確実に俺と言う存在がバレている。そう確信した。
「……ギャアアア!!」
そしたら心の底から恐怖が湧いてきて気がついたら茂みから飛び跳ねていた。無様に甲高い女のような悲鳴をあげてしまった。
「ひっ!!ごめんなさい!ごめんなさい!」
そんな飛び跳ねた俺に対して女?はビクンと驚くと再びうずくまった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
それから何度も何度も俺に聞こえるように大きな声で震えながら謝り続けた。
「……」
拍子抜け……と言うのか。それとも謝り続ける女?に対する罪悪感からなのか、感情の高まりによる熱気が急速に冷えていった。すると、停止していた機能が働き出し、
(ん?よく聞くとこの声って……)
目の前で起こる情報を処理し、正確な答えを脳が導き出した。
「サン!!」
うずくまっていた女?の正体は「サン」だった。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
「はぁぁぁ……だるっ」
限界を迎え、歩くたびに小刻みに震える足腰の筋肉と疲労による眠気で瞼が重い。
(今すぐに寝たい。国王が持たせてくれたふっかふかの寝袋で)
眠る自分の姿を想像したら、気が抜けてふらついてその場に膝をついた。
(あー、薪をもう少し拾わなきゃなぁ……)
と思いつつも、
「動きたくねえ」
あらがいがたい眠気に瞼が閉じかけた。その時、
「……ん?なんだ?」
不意にどこからか人の声のようなものが聞こえた気がした。
「……」
気になって耳を澄ませてみた。確かに人の声らしきものが聞こえた。
「……人だ」
風切り音や動物の鳴き声なんかが混じっていて何を言っているかはよく聞こえなかった。
「ていうかよくよく考えたら俺たちが今いる森って魔族領で、ここの国の生き残りは全員王国にいるって言ってたよな。国王が」
『幽霊』……そんなワードが脳裏をよぎった。
「まじかよ……異世界に来た影響でそっち系の能力にも目覚めちゃった感じなの俺?」
昔から心霊系が大嫌いで、その手の番組を見てしまった日には1ヶ月、夢の中に幽霊が出てきたり、常に背後が気になり、不意に話しかけられたら思わず飛び跳ねてしまう。
「ゴクッ……」
生唾を飲み込む。額からはベッタリとした汗が流れ、周囲の気温がグッと下がり、湿り気を感じた。
雨が上がってから6時間しか経っていないことを考えれば湿気を感じるのは当然だと、考えすぎだと、自分に言い聞かせた。
「……は、ははは。考えすぎだって」
しかし、そう自分に言い聞かせるほどに声のした方が気になって仕方なかった。
「……」
恐る恐る。声のした方へ身構えながら進む。一瞬にして跳ね上がる鼓動と血流。それに伴い運動直後のような苦しい呼吸へと状態が変化し、わずかに残っていた眠気も吹き飛んだ。
「……」
薮を掻き分け、そこから覗き込んだ。
「……」
覗き込んだ先は少しだけ開けた場所だった。暗くてよく見えなかったけど、そんな開けた場所の真ん中で白い服を着た女?がうずくまって何かをぶつぶつ呟いていた。
「……」
人か幽霊なのか定かではないその女?の正体が気になった。いつもなら逃げていた。けど、好奇心が抑えられず観察し続けた。
「……さぃ……なさぃ」
その女?は、うずくまっているのが疲れたのか。それとも周囲を警戒するためなのか。頭を覆っていた両腕を解いて顔を上げた。
そして横を向いた、と思う。夕陽が沈みきって完全に暗くなってて、頼りない月明かりだけが照らしていたからよく見えなかった。
じゃあ何で横を向いたのかわかったのか。それは暗闇の中で輝く二つの目と視線が重なったから。
「……」
重なった視線が離れない。相手に確実に俺と言う存在がバレている。そう確信した。
「……ギャアアア!!」
そしたら心の底から恐怖が湧いてきて気がついたら茂みから飛び跳ねていた。無様に甲高い女のような悲鳴をあげてしまった。
「ひっ!!ごめんなさい!ごめんなさい!」
そんな飛び跳ねた俺に対して女?はビクンと驚くと再びうずくまった。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
それから何度も何度も俺に聞こえるように大きな声で震えながら謝り続けた。
「……」
拍子抜け……と言うのか。それとも謝り続ける女?に対する罪悪感からなのか、感情の高まりによる熱気が急速に冷えていった。すると、停止していた機能が働き出し、
(ん?よく聞くとこの声って……)
目の前で起こる情報を処理し、正確な答えを脳が導き出した。
「サン!!」
うずくまっていた女?の正体は「サン」だった。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
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