無感情な聖女はデリカシーなし男に変えられる。デリカシーなし男も変わる。

さくしゃ

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まだ……

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満月が黄色く輝き、どこか遠くから狼男の叫ぶ声が響き渡る森の中、私は夜の見張りをしながら火の番をしていた。

"時間が経てば今の状況にも慣れて普通に話せるようになります"

 パチっと火がはじけた。

(……ワタルのことが好き)

 ハンスに相談してから1週間が経った。ハンスの言う通り、今の状況にも慣れて以前と変わらずワタルと話せるようになった。しかし一つだけ違う点がある。ワタルと話せるだけでこれまでに感じことのない嬉しさが胸中を満たし、思わず顔がほころんでしまう。

(私が……)

 ただ誰かを好きになるなんて今までになかったから、今の私が抱くこの感情がはっきりと「好き」というものなのかはわからない。

"相手に想いを伝えるかどうかはご自身で判断して下さい"

 想いを伝える。それだけは知識として知っている。好きな相手に想いを伝えて恋人になって愛を育んだ果てに永遠の愛を誓い合うというもの。

(ワタルと……)

 なんて想像してしまった。

 今と変わらない様子で話したり、笑い合ったり、時には喧嘩したり、その果てに純白のドレスに身を包んだ私はワタルと永遠の愛を誓い合う。

 そんな想像をした。心がワクワクした。キュンとした。

(……だけど、ワタルは魔王を討伐したら元の世界へ帰らなくちゃいけない。元々、この世界の人間ではないのだから)

 世界の意思が定めた絶対のルール。この世界にとっての異物ーー異世界人という存在を許さないための。拒んだところで強制的に戻される。

「……いけないいけない。今は見張りに集中しないと」

 考えたって答えなんて出ないし、私にはどうすることもできない。それに旅はまだ始まったばかりで四天王は3体、魔王も残っている。先はまだまだ長い。

(きっと旅の中でいい答えが出る……よね)
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