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王妃
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「お兄さん驚きだわ……
マークとここまで斬り合える相手を見たのは記憶にないわ」
「ええ、信じられない」
勇者パーティーとして6年、クリスと旅を共にする中で数多くの強敵と相対して来た二人。
しかし、それらの相手を持ってしてもマークと本気ではないにしろ30分以上も切り結ぶ相手は存在しなかった。
つい先日、魔王軍四天王の一人を相手にした時でさえ20分もすれば敵はマークの足元に転がっていた。
それらの事実を目の当たりにしているクリス達は、驚愕に顔を染める。
「……ネロ」
「かなり不味いな……」
一方、サラとヴェイルは、かなり不安な顔で二人の斬り合いを見守っていた。
長い付き合いになる二人は、ネロが既に全力を出していて余裕がなくなって来ているのが表情から理解できていた。
そしてそれはネロ本人も自覚していた。
「く!」
苦悶の表情を浮かべるネロは、どんどん攻撃速度が上がっていくマークの剣技にギリギリの所で反応し、自身の愛剣よりも遥かに性能の良い聖剣による攻撃を受け流していた。
「余裕がなくなって来たようだね!」
片手で剣を振るうマークは、聖剣へ魔力を流し込み切れ味を上げる。
聖剣に備わる権能の一つである「切断」
込めた魔力量に対して聖剣による切れ味が増していくという、単純に攻撃力がアップするだけの能力なので、当たらなければどうという事はない。
しかし、マークの技量は既に人類の中でも最上位に位置しており、そもそも彼とまともに剣の技量で張り合える存在が少ない。
その為、カウンターを狙ったとしても剛と柔が一体となった彼の剣によって剣ごと斬られて終わるのみ……
「へぇ……これも受け流すんだ」
若干の驚きと思わぬ強者との出会いに高揚し、血流速度が上がり、瞳孔が広がっていくマーク。
主人と同様に目前の強敵に高揚し、より一層強い光を放つ聖剣。
まさに一心同体……同じ心と体を持っているかのような強い絆を持っている事。
「でも、これ以上君と戯れていると魔族を完全に取り逃してしまうから、これで終わらせるよ」
片手で握っていた剣を両手で持つマーク。
背筋を伸ばした綺麗な無駄のない姿勢。
これまではどこかダンスをしているように変幻自在な剣術を披露していたのだが、現在の構えの方が無駄な力みも取れ、完全な自然体と集中。
そしてその視線は心の内までも見透かされているような気さえ起こる。
(ふぅ……考えすぎるな。その時点で相手に呑まれている証拠……今以上の実力なんかだそうとしなくていい)
おそらく次に放つ一撃はこれまでの比ではない。
そう感じ取っているネロは一瞬とは言えマークの闘気とでもいうのかに呑まれかけたが、何とか持ち直す。
(今放てる一撃に、僕の全てを乗せればいいだけ……)
ネロもマーク同様に剣を中段に構え、マークだけに全集中。
二人の放つ闘気が、ちょうど二人の間でぶつかり弾ける。
朝の冷えた風が轟音を奏で吹き荒れるが、二人の間を通る瞬間だけは音が消える。
そして、二人の作り出すとんでもない緊迫した空気に止めに入ろうとしたサラ達は思わず動きを止める。
四人が止まった地点はギリギリ二人の攻撃範囲外となる場所。そこから先に足を踏み入れられるのは命を落とす覚悟がある者だけ。
半歩、半歩と摺り足で相手の間合いへ少しずつ近づくネロとマーク。
「……」
「……」
相手の呼吸、目線、肩や腕、足の運び、腰の動きに意識を集中しつつ、二人は自身の間合いにて敵を捉える……そして、一呼吸。
(目線が心臓に……踏み込みからの刺突?
いや、先程の攻防の中で右の横凪、唐竹が他の斬撃に比べて鋭さが違った……いや、足の運びから言って袈裟斬り?)
一呼吸の間にネロが見せた視線、先程までの攻防から来るデータ、足の運びから、放ってくる斬撃について候補を上げ、絞っていくマーク。
(構えが変わっても斬撃における基本は変化する事はない。さっきまでの攻防では、刺突もしくは、切り上げから攻撃が始まることが多かった。目線は喉元を向いているけど、それはフェイク、本命は左右どちらかからの切り上げ)
ネロも同じく相手の狙いについて絞り対策を練っていく。
まさに達人同士による一瞬の間の攻防が終わり、二人は動き出し、今まさに剣が交差する瞬間……
「"岩石弾 ロックガン"!!」
「"氷結刃 アイスエッジ"」
二人に向かって遠方から魔法が放たれた。
それも直撃すれば二人とも死んでもおかしくない程の威力で。
「!」
「!?」
危険を察知したネロとマークは、互いに飛んできた魔法を剣によって切り裂き、距離を取る。
「何をやってるのですか!! あなた達は!」
そんな二人に魔法を飛ばした人物は一喝。
皆の視線は声のした人物に注がれる。
「お、王妃様!」
その人物はアルメリア国王妃、名をアリス。
ネロの母親である。
彼女は黒曜石を彷彿とさせる髪と32歳とは思えない抜群のスタイルと美しい肌を持ち合わせた童顔美女。
ネロのお姉さんと言っても通じる若い見た目をしている。
王国女子達の憧れの的。
そして、もう一人マークへ魔法を飛ばした人物がいる。
彼女は名をダリア。氷魔法を得意とし、その動じないドライな性格から絶対零度の異名を持つ、王妃専属侍女。
そんなダリアは落としていた視線を上げるとヴェイルの方を向き、キッ!と睨む。
「ひ!」
あまりの鋭い眼光に思わず悲鳴をあげ震え出すヴェイル。
その様子は蛇に睨まれたカエルだ。
アリスとダリアはそれぞれ息子であるネロとヴェイルの前に立つ。
とても良い笑顔を浮かべて……
「ネロ。あなたに隠して進めていた婚約話が正式に決まりました。国王陛下より正式な言い渡しがありますので、今すぐに私と王城へ戻りますよ」
マークとここまで斬り合える相手を見たのは記憶にないわ」
「ええ、信じられない」
勇者パーティーとして6年、クリスと旅を共にする中で数多くの強敵と相対して来た二人。
しかし、それらの相手を持ってしてもマークと本気ではないにしろ30分以上も切り結ぶ相手は存在しなかった。
つい先日、魔王軍四天王の一人を相手にした時でさえ20分もすれば敵はマークの足元に転がっていた。
それらの事実を目の当たりにしているクリス達は、驚愕に顔を染める。
「……ネロ」
「かなり不味いな……」
一方、サラとヴェイルは、かなり不安な顔で二人の斬り合いを見守っていた。
長い付き合いになる二人は、ネロが既に全力を出していて余裕がなくなって来ているのが表情から理解できていた。
そしてそれはネロ本人も自覚していた。
「く!」
苦悶の表情を浮かべるネロは、どんどん攻撃速度が上がっていくマークの剣技にギリギリの所で反応し、自身の愛剣よりも遥かに性能の良い聖剣による攻撃を受け流していた。
「余裕がなくなって来たようだね!」
片手で剣を振るうマークは、聖剣へ魔力を流し込み切れ味を上げる。
聖剣に備わる権能の一つである「切断」
込めた魔力量に対して聖剣による切れ味が増していくという、単純に攻撃力がアップするだけの能力なので、当たらなければどうという事はない。
しかし、マークの技量は既に人類の中でも最上位に位置しており、そもそも彼とまともに剣の技量で張り合える存在が少ない。
その為、カウンターを狙ったとしても剛と柔が一体となった彼の剣によって剣ごと斬られて終わるのみ……
「へぇ……これも受け流すんだ」
若干の驚きと思わぬ強者との出会いに高揚し、血流速度が上がり、瞳孔が広がっていくマーク。
主人と同様に目前の強敵に高揚し、より一層強い光を放つ聖剣。
まさに一心同体……同じ心と体を持っているかのような強い絆を持っている事。
「でも、これ以上君と戯れていると魔族を完全に取り逃してしまうから、これで終わらせるよ」
片手で握っていた剣を両手で持つマーク。
背筋を伸ばした綺麗な無駄のない姿勢。
これまではどこかダンスをしているように変幻自在な剣術を披露していたのだが、現在の構えの方が無駄な力みも取れ、完全な自然体と集中。
そしてその視線は心の内までも見透かされているような気さえ起こる。
(ふぅ……考えすぎるな。その時点で相手に呑まれている証拠……今以上の実力なんかだそうとしなくていい)
おそらく次に放つ一撃はこれまでの比ではない。
そう感じ取っているネロは一瞬とは言えマークの闘気とでもいうのかに呑まれかけたが、何とか持ち直す。
(今放てる一撃に、僕の全てを乗せればいいだけ……)
ネロもマーク同様に剣を中段に構え、マークだけに全集中。
二人の放つ闘気が、ちょうど二人の間でぶつかり弾ける。
朝の冷えた風が轟音を奏で吹き荒れるが、二人の間を通る瞬間だけは音が消える。
そして、二人の作り出すとんでもない緊迫した空気に止めに入ろうとしたサラ達は思わず動きを止める。
四人が止まった地点はギリギリ二人の攻撃範囲外となる場所。そこから先に足を踏み入れられるのは命を落とす覚悟がある者だけ。
半歩、半歩と摺り足で相手の間合いへ少しずつ近づくネロとマーク。
「……」
「……」
相手の呼吸、目線、肩や腕、足の運び、腰の動きに意識を集中しつつ、二人は自身の間合いにて敵を捉える……そして、一呼吸。
(目線が心臓に……踏み込みからの刺突?
いや、先程の攻防の中で右の横凪、唐竹が他の斬撃に比べて鋭さが違った……いや、足の運びから言って袈裟斬り?)
一呼吸の間にネロが見せた視線、先程までの攻防から来るデータ、足の運びから、放ってくる斬撃について候補を上げ、絞っていくマーク。
(構えが変わっても斬撃における基本は変化する事はない。さっきまでの攻防では、刺突もしくは、切り上げから攻撃が始まることが多かった。目線は喉元を向いているけど、それはフェイク、本命は左右どちらかからの切り上げ)
ネロも同じく相手の狙いについて絞り対策を練っていく。
まさに達人同士による一瞬の間の攻防が終わり、二人は動き出し、今まさに剣が交差する瞬間……
「"岩石弾 ロックガン"!!」
「"氷結刃 アイスエッジ"」
二人に向かって遠方から魔法が放たれた。
それも直撃すれば二人とも死んでもおかしくない程の威力で。
「!」
「!?」
危険を察知したネロとマークは、互いに飛んできた魔法を剣によって切り裂き、距離を取る。
「何をやってるのですか!! あなた達は!」
そんな二人に魔法を飛ばした人物は一喝。
皆の視線は声のした人物に注がれる。
「お、王妃様!」
その人物はアルメリア国王妃、名をアリス。
ネロの母親である。
彼女は黒曜石を彷彿とさせる髪と32歳とは思えない抜群のスタイルと美しい肌を持ち合わせた童顔美女。
ネロのお姉さんと言っても通じる若い見た目をしている。
王国女子達の憧れの的。
そして、もう一人マークへ魔法を飛ばした人物がいる。
彼女は名をダリア。氷魔法を得意とし、その動じないドライな性格から絶対零度の異名を持つ、王妃専属侍女。
そんなダリアは落としていた視線を上げるとヴェイルの方を向き、キッ!と睨む。
「ひ!」
あまりの鋭い眼光に思わず悲鳴をあげ震え出すヴェイル。
その様子は蛇に睨まれたカエルだ。
アリスとダリアはそれぞれ息子であるネロとヴェイルの前に立つ。
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「ネロ。あなたに隠して進めていた婚約話が正式に決まりました。国王陛下より正式な言い渡しがありますので、今すぐに私と王城へ戻りますよ」
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