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守れなかった
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6年前、世界で魔族に苦しめられている人々を救う旅に出る前、絶対に守ると約束した。
(守れなかった……)
………
……
…
時は遡りちょっと前。
サラに向かって3人の女性が武器を構え襲い掛かった。
「死ね!」
悍ましい声に背筋がゾッとしたマーク。
気配を感じた方へ視線を向ける。
そこには、うすら笑みを浮かべた黒いモヤと無表情で刃物をサラに振り下ろす3人の女性。
「サラ!」
少し離れた所でエレナが叫ぶ声。
危機的状況、頭の中では警笛が鳴り響く。
しかし体が反応しない。
いつもなら、危険を察知したら即座に抜剣して制圧してしまうのに、体というか心が鉛のように重たくて動かない。
(不味い、動かないと……)
聖剣を掴む。
しかし、サラに迫る白刃の方がどう見ても早く、抜剣していたら間に合わない。
ただ、やはり体が正常に動いてくれない。
「得意じゃないけど……"聖盾 シールド"!」
エレナの叫ぶ声。
すると目前に半透明の壁が出現。
「死ね!」
と、迫る3本の白刃を3人の女性達ごと跳ね返した。
少しして金属同士が弾ける甲高い音が鳴り響いた。
そしてその音によって、
(うわ!……て、何やってるんだ、ぼくは!)
マークはビクつき目を覚ます。
信じられないほど重かった体は、いつもと変わらぬ感覚へと戻る。
調子を取り戻したマークは、転がる3人の女性の首筋を叩き、気絶させる。
鮮やかな動き。
一連の出来事を目にしていた住民達はマークが3人を気絶させるまでの動きが早すぎて目で追えず、急に気を失った3人を見て疑問符を浮かべる。
「エレナ! サラを頼む!」
駆け寄ってきたエレナにサラを任せ、3人の女性を調べる。
女性達は、サラに向けた刃物以外は特に武器らしい武器は持っていなかった。
しかし気になったのは、彼女達の体温だった。
通常、人は目を覚ました瞬間から体内の動きが少しずつ活発になり体温も上がっていく。
そして、朝の8時位ともなれば平熱となっている。
だが、彼女達の体温は明らかに通常の体温よりも低い。
まるで、水風呂に使った直後の冷え切った体のように冷たい。
その他にも女性達には首筋に2本の鋭い犬歯で貫かれた跡……いや、正確に言えば歯形?と言うべきか?が残っていた。
それには見覚えがあった。
3年前、旅の途中で訪れた訪れたラトス連邦領にあるミルズ村。
この村で起こった吸血鬼による村人眷属化事件。
吸血鬼、又の名をヴァンパイアと呼ばれる。
女型、男型と人間のように性別が分かれている。強さは貴族の爵位と同じく1番上は公爵、1番下は男爵となっている。
男爵級はC級、ワイバーンと同等の強さを誇る。
公爵級は最高ランクのS級。Aランク冒険者数十人でようやく相手にできる強敵。
そして、その能力は最高ランクにふさわしく昼間でも関係なく活動でき、吸血した相手を自身の手駒(眷属化)とする事が出来る。
「この王都内に……でも、結界に阻まれ……
いや、一つだけ方法があった。反転だ」
ごく稀に眷属化された人間の中に突然変異を起こして吸血鬼となる者がいる。
その者は特異な存在であり、瞬く間に強者への階段を登っていく。その中でも特別な者は公爵級へと登り詰める者も。
そしてさらに希少な存在として、聖職者がこの事例に当てはまってしまう事がある。
人間だった時は、神に支え聖属性魔力を高めた者がヴァンパイアとなり、魔の力を手にする。
すると、その者が公爵級へと進化した時、相反する二つの力を持った存在だけが使えるようになる"反転
リバース"
という能力を獲得する。
これは全ての魔力、事象を反転させるというもの。今回のことで言うなら、王都内に侵入した吸血鬼は、自身の魔力を聖属性魔力に反転させることで結界を通り抜け、王都に侵入、その後も難なく活動できていると思われる。
「厄介だ……」
苦々しい顔のマーク。
サラをチラッと確認する。
エレナに担がれている。
おそらく疲れと精神的ストレスetc……などにより限界のサラを気遣って彼女の体が休むようにと強制的に眠りにつかせたもよう。
「エレナに任せよう……
それより王都に吸血鬼、それも公爵級。
すぐに発見しないと不味い事になってしまうな」
マークは駆け付けた騎士に横たわる女性3人を任せ、エレナに吸血鬼が侵入しているかも知れないと危険を伝え、走り去る。
(告白した後、返事はまだ後いいって言ったけど、多分うまくは……それにあの時の約束を守る事もできなかった)
心が弱気になるマーク。
しかし、すぐに「今はそんな時じゃない」と頬を叩き、思考を切り替え、吸血鬼討伐へ向かう。
(守れなかった……)
………
……
…
時は遡りちょっと前。
サラに向かって3人の女性が武器を構え襲い掛かった。
「死ね!」
悍ましい声に背筋がゾッとしたマーク。
気配を感じた方へ視線を向ける。
そこには、うすら笑みを浮かべた黒いモヤと無表情で刃物をサラに振り下ろす3人の女性。
「サラ!」
少し離れた所でエレナが叫ぶ声。
危機的状況、頭の中では警笛が鳴り響く。
しかし体が反応しない。
いつもなら、危険を察知したら即座に抜剣して制圧してしまうのに、体というか心が鉛のように重たくて動かない。
(不味い、動かないと……)
聖剣を掴む。
しかし、サラに迫る白刃の方がどう見ても早く、抜剣していたら間に合わない。
ただ、やはり体が正常に動いてくれない。
「得意じゃないけど……"聖盾 シールド"!」
エレナの叫ぶ声。
すると目前に半透明の壁が出現。
「死ね!」
と、迫る3本の白刃を3人の女性達ごと跳ね返した。
少しして金属同士が弾ける甲高い音が鳴り響いた。
そしてその音によって、
(うわ!……て、何やってるんだ、ぼくは!)
マークはビクつき目を覚ます。
信じられないほど重かった体は、いつもと変わらぬ感覚へと戻る。
調子を取り戻したマークは、転がる3人の女性の首筋を叩き、気絶させる。
鮮やかな動き。
一連の出来事を目にしていた住民達はマークが3人を気絶させるまでの動きが早すぎて目で追えず、急に気を失った3人を見て疑問符を浮かべる。
「エレナ! サラを頼む!」
駆け寄ってきたエレナにサラを任せ、3人の女性を調べる。
女性達は、サラに向けた刃物以外は特に武器らしい武器は持っていなかった。
しかし気になったのは、彼女達の体温だった。
通常、人は目を覚ました瞬間から体内の動きが少しずつ活発になり体温も上がっていく。
そして、朝の8時位ともなれば平熱となっている。
だが、彼女達の体温は明らかに通常の体温よりも低い。
まるで、水風呂に使った直後の冷え切った体のように冷たい。
その他にも女性達には首筋に2本の鋭い犬歯で貫かれた跡……いや、正確に言えば歯形?と言うべきか?が残っていた。
それには見覚えがあった。
3年前、旅の途中で訪れた訪れたラトス連邦領にあるミルズ村。
この村で起こった吸血鬼による村人眷属化事件。
吸血鬼、又の名をヴァンパイアと呼ばれる。
女型、男型と人間のように性別が分かれている。強さは貴族の爵位と同じく1番上は公爵、1番下は男爵となっている。
男爵級はC級、ワイバーンと同等の強さを誇る。
公爵級は最高ランクのS級。Aランク冒険者数十人でようやく相手にできる強敵。
そして、その能力は最高ランクにふさわしく昼間でも関係なく活動でき、吸血した相手を自身の手駒(眷属化)とする事が出来る。
「この王都内に……でも、結界に阻まれ……
いや、一つだけ方法があった。反転だ」
ごく稀に眷属化された人間の中に突然変異を起こして吸血鬼となる者がいる。
その者は特異な存在であり、瞬く間に強者への階段を登っていく。その中でも特別な者は公爵級へと登り詰める者も。
そしてさらに希少な存在として、聖職者がこの事例に当てはまってしまう事がある。
人間だった時は、神に支え聖属性魔力を高めた者がヴァンパイアとなり、魔の力を手にする。
すると、その者が公爵級へと進化した時、相反する二つの力を持った存在だけが使えるようになる"反転
リバース"
という能力を獲得する。
これは全ての魔力、事象を反転させるというもの。今回のことで言うなら、王都内に侵入した吸血鬼は、自身の魔力を聖属性魔力に反転させることで結界を通り抜け、王都に侵入、その後も難なく活動できていると思われる。
「厄介だ……」
苦々しい顔のマーク。
サラをチラッと確認する。
エレナに担がれている。
おそらく疲れと精神的ストレスetc……などにより限界のサラを気遣って彼女の体が休むようにと強制的に眠りにつかせたもよう。
「エレナに任せよう……
それより王都に吸血鬼、それも公爵級。
すぐに発見しないと不味い事になってしまうな」
マークは駆け付けた騎士に横たわる女性3人を任せ、エレナに吸血鬼が侵入しているかも知れないと危険を伝え、走り去る。
(告白した後、返事はまだ後いいって言ったけど、多分うまくは……それにあの時の約束を守る事もできなかった)
心が弱気になるマーク。
しかし、すぐに「今はそんな時じゃない」と頬を叩き、思考を切り替え、吸血鬼討伐へ向かう。
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