いじめられっ子の僕が

さくしゃ

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異世界召喚

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 「はぁ……今回も最悪の想像は超えなかったけど、想定は超えてたなぁ……なかなかうまくいかないな……」

 異世界人特有の黒髪、黒目、やや平たく、自信のなさげな顔をした少年は地面に横たわり、太陽の光を遮っていた真っ黒の雲が消えていく空を眺める。

 「ああ。やっぱり青空が1番だ……」

 それから少年は自身の目に映るHPゲージを見る。

 「ははは。HP1とかホントにギリギリだった……な……」

 少年の意識はそこで途切れる。

 「よかった……」
 「いつも自分よりも他人を優先してボロボロになって……
生きてて本当に良かった……」
 「本当によかった」

 4人の美少女が少年に駆け寄る。



 *****************



 日本の地方中枢都市。季節は梅雨。ザーザーと雨が降る日……

 (今日の起こり得る最悪の事態は……突然の巨大地震によって日本が壊滅すること……いや、本当に最悪なのは、巨大隕石が直撃して、地球の壊滅!そうだ!それが考え得る最悪の事態)

 ピピッピピッピピッ……

 ケータイのアラームが鳴る。時刻は朝の6時30分。

 (そして、想定しておいた方がいいのは、最近は交通事故が多いこと……死にたくないから突っ込んできそうな車がいたら即座に横に飛んで避けるが今日の鉄則だ)

 毎日の日課である起床するまでにその日に起こりそうな最悪の想像と想定をしてからベッドを出て、部屋にある洗面所で身だしなみを整える。

 それが終わると、次は食堂へと行き、他のみんなが揃ってから
7時にご飯を頂く。その後、服を着替えて、市内の端にある両親のお墓へと月命日のお供えに行くため、施設を出た。

 外は、先週から続く雨で冷え切っており、歩く人の中には、春用のコートを着ている人もいる。

 スマホを確認する。

 (7時55分。電車が8時30分だから十分に間に合う)

 駅へと続く裏通りを抜けて、大通りへ。

 8時前ということもあり、出勤する人の波が駅を目指して向かっていく。

 「流石に土曜日でも仕事の人は仕事だから混んでるな……」

 人の波に逆らわないように合流し、駅へと向かう。

 「駅まではあと10分だから、間に合うな。花は、霊園の途中にある花屋で買っていこう」

 取り出したスマホを戻した。その時……

 「あぶない!避けろ!」

 男性の慌てた声が響く。

 視線を右ポケットから正面に戻した瞬間……

 ドシン!

 大きな鉄骨が縦に落ちてきて、地面が揺れる。

 「へ?」

 状況が掴めず、ただ茫然と自身に倒れてくる鉄骨を見つめる。

 「きゃあああ!」

 女性の悲鳴……

 その悲鳴は僕の前を歩いていた女性のもの。

 その女性は頭を両手で押さえて下を向いて悲鳴を上げていた。

 「!」

 無意識だった。とっさに体が動いて、
 目の前の女性を両手で力一杯、横に突き飛ばしていた。

 「きゃっ!」

 女性は倒れてくる鉄骨の下敷きにならない場所まで転がっていった。
 
 (よかった……)

 僕の胸中では、迫ってくる鉄骨に対する恐怖よりも女性が助かったという安堵感が強かった。

 頭の中には、これまでの16年という短い人生だが、精一杯歩んできた思い出が駆け巡る。

 (本当は11年前に死んでいるはずだったんだから、頑張って生きた方かな)

 普段は、怖がりでどんなことに対しても不安を抱く僕だけど、この時は「死」というものを受け入れられていて、恐怖を感じなかった。

 僕は、目を閉じて数瞬後に訪れであろう痛みに備える。

 「……」

 しかし、訪れるはずの痛みはいつまで経っても来ない。

 (おかしい……目を開けて確認した方がいいんだろうけどすごく怖い……)

 僕が目を開けるかどうか怖がっていると

 「間違いない!伝承通りのお姿だ!」
 「はい!召喚は成功です!」

 喜ぶ男性と女性の声がした。

 (え?どういうこと?)

 僕は、恐る恐る目を開ける。

 「……ええ!」

 僕は腰を抜かしてその場に座り込んでしまう。

 (さっきまで外にいたのになんでこんな高級そうな部屋にいるんだ!)

 大理石を装飾した1mはある立派な柱が、重厚な扉へと向かって6本、教会のような円形の天井……一言で言えば、「玉座の間」

 その壇上に黒髪の少年は立っていた。

 (そして、なんで大勢の人が僕に向かって頭を下げているんだ!)

 床に片膝をついて十数人の人間が壇上の少年に向かって頭を下げている。その中には王冠を被った者、鎧を着た者など様々。

 「……なんで?」

 思わず声に出てしまう。そんな声に、頭を下げている人達の中で1番前にいたサンタクロースのようなふわふわの白髪に白いひげ、柔らかそうなふくよかな体、ベートーヴェンなどが着てそうな服を身にまとったおじいさんが顔を上げる。

 その顔はとても真剣なもので、おじいさんが顔を上げたことで他の人たちの緊張感も増し、場の空気が重苦しいものへと変わっていく。
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