いじめられっ子の僕が

さくしゃ

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成長と仲間③

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 「昨日、グールと相対した時に、グールから「ごめんなさい」と話す声が聞こえたんです」

 日向は向かい合うリナではなく、自分の足を見て話す。ここの人達は日本にいた人達と違い真剣に話を聞いてくれるのはわかっているので目を見て話したいのだが、癖になっていてなかなか抜けない。

 リナは、そんなことは特に気にせずに真剣に話を聞く。

 (グールから声?いろんなグールと戦ってきたが、そんなものは聞いたことがないな。もしかしたら勇者特有のものなのだろうか?)

 「それでグールはどんな感じだったんだ?」
 
 日向は昨日のグールを思い出し、太ももに置いた手を強く握る。

 「苦しそうでした……父さん。母さん。ごめんなさい……ずっとそればかり……」

 胸につっかえて飲み込めなかった物を吐き出すように、日向はあの時感じた事を話す。

 「僕は目の前で両親を殺されて失いました」

 沈んでいく太陽、休日のそれなりに人通りのある住宅地へ向かう裏通り、僕に覆いかぶさり通魔から何度も刺される両親、どんどん白くなって行く2人、滴り落ちる血……

 日向はリナに短くはあるが、過去に目の前で両親を殺されたことを話す。

 「そして、昨日見た女性グールの姿が両親と重なりました。両親も刺されるたびに苦しそうな声をあげていました。血だらけでした。肌が白くて、唇は青かった……」
 「……」

 リナは日向の告白に一切動じずに視線を動かしたりせず、話を聞く。

 「僕は、火葬される前の両親と最後の別れの時、顔のなくなってしまった両親に何もいえなかった……悔しくて……あの女性のグールの家族の人達もその時の僕と同じでした……あの気持ちを知っていながら僕は……僕は!」

 日向は両手を握って、自分の足を思いっきり叩く。

 ビシビシビシィ……地面に亀裂が走る。

 「昨日からずっと考えてました。次は、あの女性のようにしないために、家族の元に綺麗な体のまま帰れるようにどうすればいいのか……でも、これと言った解決策が思いつかなくて……」
 
 話終わった日向の表情は、下を向いたままだが、思い詰めた表情がだんだん普段の気弱そうな表情へと戻っていく。

 (そんな事考えたこともなかった。ただ生きている者たちを守ることに精一杯になっていた。おそらく他の者たちも……)

 「そうですね。今まで歴代の勇者が使った武器しか試してきませんでしたが、弓矢などどうですか?通常の矢だと魔物の核を貫けませんが、魔法で創成した弓矢なら貫けます。遠距離部隊の中で魔力量が少ない者達は、魔力消費が少なくて使用していますよ」
 
 リナの話を聞いて、日向は立ち上がる。

 「そっか!魔法なら魔石から作られた過剰威力の武器と違って調節することができる!」

 (こんな簡単なことも見落としていたなんて……母さんの言う通りだ。話してよかった!早速、試しに行こう)

 日向は、可能性が見えたことに嬉しくなり、訓練場を目指して走り出す。

 「……あ!」

 日向は慌てて止まり振り返る。

 「リナさん!ありがとうございました!」

 そんな日向にリナは、「私も話を聞いてもらったからお互い様だよ」と笑って答える。

 日向は、王妃を虜にした母親譲りの心から笑っている時にしか見せない笑顔を浮かべる。

 「ありがとうございます!失礼します!」

 日向は自然公園を後にする。

 「あんな顔も見せるのだな……」

 リナは遠ざかっていく日向の背中を自然と目で追う。

 ー翌日ー

 「なんか勇者様危機迫るって感じで魔法の矢を的に打ってるけど、なんかいつもより表情が明るいな……」
 「だな。でも、勇者様って不思議だよな。勇者様が笑ってるだけでこっちの気持ちまで明るくなってくるよな」
 「そうなんだよな……さあ!俺たちも負けてらんねえぞ!」
 「よし!今日も頑張るか!」

 兵士たちは、体力作りのメニューを消化していく。

 「は!」

 構えた弓矢の照準を20m先にある的めがけて放つ。

 ヒュゥゥゥ……

 風の矢は、自然の風を吸収し、どんどん加速して、的を貫く。

 (威力はいいけど、まだ狙った通りに的の真ん中に飛んでいかないな……)

 日向は難しい顔で考える。

 「槍の時と同じだ。体の真ん中に一本の軸となる棒があると意識することだ」

 そんな日向に、後ろからアドバイスが飛んでくる。

 その人物はいつもは纏めずにいる赤い髪を珍しく後ろで纏め、小学生のように張りがあり、綺麗な艶々のうなじを露出させて現れる。

 「リナさん。おはようございます」

 日向はその人物「リナ」へと挨拶する。

 「おはようございます。日向殿。邪魔をしてしまったか?」

 リナも日向へ挨拶する。

 「そんなことはないですよ。ちょうど狙ったところに飛ばずにいたのでどうしたらいいかわからなかったですから。ありがとうございます」
 「役に立てたのならよかった。では」

 リナはその場を後にする。

 (綺麗なうなじしてたな……さて、やるぞ!)

 日向は、訓練を続ける。

 一方、リナは……

 (昨日からなぜか日向殿に少し緊張してしまう……今日もいつもなら気にしない髪を後ろで纏めてみたり……何かの病気か?)

 日向から急いで離れるように早歩……ほぼ小走りでそんなことを考えながら、南門へと向かう。

 それから1週間後……

 「グールが攻めてきた!数は500!南門で紅蓮隊が交戦中!」

 隊士の1人が訓練場へとやってきた。

 「みんな!行きますよ!」

 今日の訓練責任者は副隊長のエミ王女。彼女の指示のもと南門へと向かう。

 訓練場から南門まで身体強化によって走って5分で到着。

 「戦況は」

 エミは門兵に尋ねる。

 「……」

 しかし門兵は、答えない。その代わりに震える手を動かして指を差す。

 「何です?」

 エミは指差す先を見る。

 「うそ……」

 エミの目にする先には、日向1人が魔法の弓矢で500のグールを相手にとんでもない速さで動き回りながら次々に胸の核を撃ち抜いていく姿……その光景は、まるでカマイタチ。

 (気配探知……)

 日向は、その桁外れの魔力による風を戦闘区域となっている200mに展開し、残りのグールの数を把握。

 (残りは……150か。縮地)

 一般隊士では目で追うこともできない速度で、上空へと飛ぶ。

 (あんなに高く飛んで何をするつもり?)

 エミは、日向の行動の意図が読めずに疑問符を浮かべる。

 1度に放てる矢は、魔力の多いもので5発が限界。グールの数は見たところ100以上は残っている。一気に倒せる数ではない。にも関わらず、日向は全てのグールが見下ろせる高さまで飛んでいる。

 (いくら勇者とはいえ、そんな事……)

 しかし、数秒後……

 グールに向かって、雨のように矢が降り注ぎ、次々に胸の核を的確に打ち抜いていく。1秒もしないうちに全てのグールが動かなくなった。

 (これが勇者の力……でも、この世界を魔王から救うのは私!)

 エミは闘志を燃やす。

 それから、さらに1週間後……訓練が始まって1ヶ月。

 「予定通りフレバンス解放作戦を開始する!」

 フレバンスへの遠征が決行された。

 メンバーは、「紅蓮」の隊長「リナ・ブラントン」、副隊長補佐「アルス・ブラントン」と以下前線部隊30名、遠距離部隊5名、支援部隊3名……そして、風の勇者「有沢日向」。

 王都防衛にギリギリの人数を要しているため、これが遠征に派遣できる限界人数。しかし、数は少ないが、1人1人がオーガを1人で相手にできるレベルのもの達。それに加えて、新しく開発された防具と兵器により戦力は以前とは考えられないほどに向上している。


 ちなみに、現在の勇者のステータス

 有沢日向(16) 職業:勇者 Lv.35/上限Lv.99

 HP       300/300        身長:160cm   体重:50kg
 MP       350/350

 筋力  30/50
 俊敏性 40/50
 知力  35/50
 
 〈スキル〉
 風魔法 Ⅴ 体術 Ⅲ 槍術 Ⅳ 弓術 Ⅲ 魔力操作 Ⅴ 
   気配察知 Ⅲ 回避 Ⅳ 危険予測 Ⅴ 
   縮地 経験値倍 成長促進 

 〈耐性〉
 身体的苦痛耐性 Ⅳ
   精神的苦痛耐性 Ⅴ
 
 〈称号〉
 優しき者 導く者

 〈状態〉
 正常(マイナス思考)

 (魔王に支配された世界を救う一歩!……大丈夫!1人じゃない!行ける!よし!)

 他の隊士達と一緒に門をくぐり、街を出る。
 
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