いじめられっ子の僕が

さくしゃ

文字の大きさ
15 / 69

襲来①

しおりを挟む
 「アルスさん!狼煙です!狼煙が上がりました!」

 遠距離部隊長が、アルスに報告する。

 「わかった!みんな!聞いた通りだ!目標地点まで撤退!」

 アルスは、魔物の軍勢に勝利して湧く、隊士達に指示。

 「「「はい!」」」

 アルスの指示に隊士達はすぐに反応し、武器をマジックバックにしまい、撤退していく。

 (姉さん……日向殿……)
 
 アルスは崩れたフレバンスの街を見つめ、隊士達の後に続き、撤退する。

 ******************

 「……」

 リナは、父の鎧を手に持ち、じっと鎧を見つめる。

 「……」

 次第に瞳からポタポタ涙が出てきて、止まらなくなる。

 街のみんな、私や部下達を逃すために父さんは、1人で門の前に立ち、街から出てこようとするグールやオーガ達を相手に立ち向かっていった。

 ーーリナやアルスは、本当に強くなった。俺の誇りだ。お前達が居てくれるから俺は最後の最後までこの街を守るという誇りを持って戦える。ありがとう。

 最後に父さんが私たちに言った言葉。

 (やっと……やっと解放させてあげられた!お父さん!)

 リナはギュッとマイルズの鎧を抱きしめる。

 ひとしきり泣いて、リナは、そっとフレバンスの地に鎧を置く。

 「やはりお父さんは、フレバンスがよく似合うな」

 マイルズがフレバンスの守護隊長になったばかりの頃、紺の全身鎧を照れながら着ていた時に、小さかったリナが言った言葉。

 ーーははは。なら、もっと頑張らないとな

 マイルズは笑って言っていた。

 「隊長!狼煙を上げました!俺達も撤退しましょう!」

 回復薬を飲み、動けるようになった隊士から声がかかる。

 「ああ。今行く……それじゃあ。お父さん」

 リナは、マイルズの鎧に背を向けて、隊士達の元へ向かう。

 *******************

 「勇者様!やりましたね!」
 「喜んでる場合じゃないって!作戦通りにすぐ行動!」

 怪力部隊(と呼ばれる予定)の2人が、日向に駆け寄る。

 「はぁはぁ……」

 日向は一気に魔力を使いすぎて体に力が入らず、その場で四つん這いになる。

 (残りMP30か……やっぱり魔力を一気に使いすぎるとしばらくは体に力が入らなくなるな……ん!)

 日向はなんとか立ち上がる。が、ふらふら。

 「よいしょ!」

 隊士の1人が、すかさず日向を肩に担ぐ。

 「お!隊長!よかった!」

 そこにリナ達がタイミングよくやってくる。

 「ブハハハ!みんなボロボロですね!」
 
 日向を担ぐ隊士が笑う。

 「当たり前だ。誰を相手にしていたと思っているんだ!寧ろ、全員生きているんだから頑張った方だぞ!」

 リナの横にいる隊士が怒り出す。

 「喧嘩はそこまでにしておけ。予定地まで撤退するぞ!」

 すかさず、リナは指示を出す。

 「まあ、そう慌てることもないのではないか?ボロボロではないか。ゆっくりしていけ」

 リナの指示に異をとなえる意見が飛ぶ。

 (うちの隊士の中にこんな喋り方をするやつはいない)

 リナは後ろを振り返る。

 「ふむ。やはり太陽という奴はただ眩しいだけで何が良いのか……」

 ピシッとしわの一つ無い白シャツ、黒のネクタイ、紺のスーツベスト、紺のスラックス、長年使ってそうなあじのあるダークブラウンの革靴と革のベルトを着こなした長い白髪、額には2本の角、青色の肌の野性味を感じる美男子が、瓦礫に足を組んで座り、陶器のティーカップとお皿を持って、優雅に紅茶を飲んでいた。

 「その豚の肩にいるのが勇者か……ふむ」

 その男は一瞬で姿を消し、気がつくとリナの背後にいた。

 (な……全く反応できなかった……)

 その男は、無防備にもリナと隊士達に囲まれた中で、担がれている日向を物珍しそうジロジロと見る。その様子は、商品を売り込まれた時に査定する商人のよう。

 「なるほどな……レベルは40といったところか……この世界にきて日は浅そうだな。それでここまで強くなるとは……」

 男は再び姿を消す。

 「おい。勇者。起きているのだろう?」

 今度は、上の方から男の声がした。

 リナ達は一斉に上を見る。

 男の声に反応して、担がれていた日向は、隊士の肩から降りて、男の方を向く。

 「お前が……魔王?」

 日向は、男を見てなんとなく感じたことを口に出す。

 「そうだ。俺が魔王「ダークネス」お初にお目にかかる風の勇者よ」

 男は優雅にお辞儀をする。

 「俺はお前が気に入った。この世界で唯一オレと並び得る力を持った存在だろう。俺は久しぶりに気分がいい。久しく踊ることのなかった胸が高鳴っているほどだ」

 魔王はそうは見えないテンションで話す。

 「その礼と言ってはなんだが、お前の強さを1段階上げる手助けをしてやろう」

 上機嫌?な魔王は、空中に手をかざす。その手に可視化するほどの闇の魔力が集まり、ピンポン玉の大きさにまとまる。

 「今から、この黒い球をお前に向かって放つ。こいつはお前の前についた途端に、この街を飲み込むほどの大きさに一気に肥大化する。それを抑え込んでみろ。見事抑え込めたならば、「俺は」、王都に手を出さずにこのまま帰ってやる。だが、抑え込めなかったら、このまま王都へ行き、残っているゴミ共を俺自らの手で皆殺しに行く」

 魔王から絶大な殺気が放たれる。

 「あばば」
 「ひ……」

 殺気に耐えられずに隊士達は、次々と気を失っていく。

 「ほら。ちょうど力が出しやすいように動けない者達も出たぞ?「闇穴(ブラックホール)」」

 日向に向けて、絶望が飛んでいく。
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

35年ローンと共に異世界転生! スキル『マイホーム』で快適5LDK引きこもり生活 ~数学教師、合気道と三節根で異世界を論破する~

月神世一
ファンタジー
紹介文 「結婚しよう。白い壁の素敵なお家が欲しいな♡」 そう言われて35年ローンで新築一戸建て(5LDK)を買った直後、俺、加藤真守(25歳)は婚約者に捨てられた。 失意の中、猫を助けてトラックに轢かれ、気づけばジャージ姿の女神ルチアナに異世界へと放り出されていた。 ​「あげるのは『言語理解』と『マイホーム』でーす」 ​手に入れたのは、ローン残高ごと召喚できる最強の現代住宅。 電気・ガス・水道完備。お風呂は全自動、リビングは床暖房。 さらには貯めたポイントで、地球の「赤マル」から「最新家電」までお取り寄せ!? ​森で拾った純情な狩人の美少女に胃袋を掴まれ、 罠にかかったポンコツ天使(自称聖騎士)が居候し、 競馬好きの魔族公爵がビールを飲みにやってくる。 ​これは、借金まみれの数学教師が、三節根と計算能力を武器に、快適なマイホームを守り抜く物語。 ……頼むから、家の壁で爪を研ぐのはやめてくれ!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...