いじめられっ子の僕が

さくしゃ

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予想……

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 「皆さん!ご無事の帰還何よりです!」

 シュウウウウ……

 赤く短い髪、まっすぐな眼差しと端正な顔立ち……リナと瓜二つの男性が上空からゆっくりと降りてくる。両足の靴から火を吹きながら……

 「ここまで見事に予想が的中するなんて……」
 
 リナ、エミは乾いた笑みを浮かべる。

 「……」

 ミカは、気をつけていたのに気を抜いてしまいメデューサの邪眼を目にしてしまったキャラクターのように引き気味に一歩下がったまま固まる。

 「あは…ははは……」

 日向は笑う。ただただ笑う。

 (完全に再現しちゃったよ……)

 「祝!勇者様方ご無事の御帰還!」と書かれた懸垂幕がデカデカと掲げられた王都を見上げて笑う。

 ー1日前ー

 疲労の溜まった日向達はゆっくりと王都を目指して人の手入れがされなくなり、風化や戦闘でボロボロになった街道を歩く。

 「私は王女だぞ~もっと丁重に扱え~」

 1日3食、1食につき10kgの量を平らげるミカの相手をするエミは疲労の果てに、リナの小脇に抱えられ上下に揺られながら、王都行き人力者「rina」にぐったりとしながらも苦情を述べる。

 「……」

 リナは無言のまま、ベシン!とお尻を叩き黙らせる。

 「はん!」

 ぷるん……とゼリーのように揺れるぐふふん!(日向目線)

 「zzz」

 時刻は15時……気持ちの良い日差しに眠くなったミカは日向におぶさり夢の中へ。

 「ははは…よく眠ってる……」

 母親似の女顔で華奢な体型の日向が小学5年生くらいのミカをおんぶする姿はお兄ちゃんが歳の離れた妹の世話をしているよう。

 「ごめんなさ……zzz」

 謝りつつもリナの背中に移動してエミも眠る。

 「全く……」

 手のかかる妹を見て優しい笑みを浮かべる姉のようなリナ。

 「昔は会う度にこんな感じでエミを背負って王城まで届けていました。でも、いつからか笑わなくなって苦しそうにしていました……」

 落ちそうになるエミを抱え直す。

 「しかし、日向殿に出会って昔のように素直で我儘なエミに戻りました。エミだけじゃなくて、私も、ミカも救われました。ありがとうございます」

 リナは立ち止まり頭を下げる。

 「それに私たちも同じです。魔物達からしたら大量殺戮者に変わりありません。多分死んだら地獄行きでしょう。その時はみんなで地獄にある温泉を楽しみましょう」

 頭を上げたリナは日向を見て笑う。

 「……ふふ!あははは!」

 リナの話から、レトロな温泉旅館を連想し、「いらっしゃいませぇ」とお淑やかにお客を出迎える和服姿のごつい赤鬼を想像してしまった日向は吹き出してしまった。

 「あははは!はぁ……ああ……敵わないな」

 ひとしきり大声で笑った日向は、なぜだかわからないが、リナに歩み寄り頬にキスしていた。

 「……へ?」
 「え?」

 2人揃って真顔で見つめ合う。鼻先が触れそうになる距離で……

 「……」

 もう付き合えばいいじゃんって周りの友達から言われる男女が、それでも普段は相手を意識しないのに、予想外のハプニングで思わず互いを意識して見つめ合ってしまう2人。

 (なんだろう……視線が引き寄せられる)
 (ダメ!……でも、視線が引き寄せられる!)

 次第に触れ合う2人の鼻……

 「んんん!……おやつ……食べたいです」

 お腹を鳴らしたミカが目を覚ます。

 「瞬動!」
 「縮地!」

 2人は一瞬にして高速移動で距離を取る。

 「ああああ……」

 日向はミカを下ろしながら、うがいをしている時のように喉を鳴らして何かを絞り出そうとする。

 「いいいい……」

 リナも同じく茹で蛸のように真っ赤な顔で喉を鳴らして話題を探す。

 (何か…何かいい話題は……)

 そこである事を思い出す。

 「そう言えば…王都を出る前日なんですが。新しい装備を渡しに来てくれたネイサンさんに僕の世界のアニメっておとぎ話?の話をしたんですけど、それを聞いたら目を輝かせて王都を改造するって張り切っていたんですけどどこまで改造されていると思います?」

 脈絡がめちゃくちゃだが、とりあえずとして話題を提供。

 「へぇ……ソウナンデスネ」

 情報処理が追いつかず、頭から煙を上げていたリナは、話題を振られた途端にロボットダンスのようにカチカチした動きで歩き、カタコトで話し始める。

 「そうなんですよ!世界征服を企む悪の組織を相手に3人の主人公「赤」「青」「黄」のぴっちりした全身タイツの人物達が、透明になる建物で空を飛んで移動して、悪の組織と戦うって物語なんです」
 
 日向も日向で脳がショート仕掛けているので、とりあえず声がしたら脊髄反射で即座に話し返す。

 「へぇ……ソウナンデスネ」

 最早、気のない相手に無理矢理2人きりの遊びに連れ出され、明らかにテンションの低い女の子のように対応する。

 「そうなんです!魔法とネイサンさんの科学力が集まったらどこまで再現されてるんだろうって……なんだか、ワクワクしてきたな!」

 鈍感すぎて女の子の気持ちを察せずにどんどん嫌われていく男のように一方的に話を進める。

 「ふぁぁ」と目を覚ましたエミと日向の隣を歩くミカは、リナと日向の様子を見て、

「あれ?2人って喧嘩でもしたの?」
「わかりません。私も今目を覚ましたばっかりなので……」

 と目線で会話する。

 「へぇ……ソウナンデスネ!」
 「そうなんです!小さい頃に見ていたお話なのでワクワクが止まりません!」
 「へぇ……ソウナンデスネ!!」
 「そうなんですよ!!」

 こんなやり取りが就寝するまで続き、その会話を聞いていたエミはネイサンが目を輝かせた時の異常性を知っているので王都のことが心配になり、ミカは「?」と1日中難しい顔をして過ごす。

 ーそして、現在ー

 「どうですか!完全に再現いたしました!」

 ブゥン……

 透明化を解いた全身タイツのネイサンが空から降りてくる。

 「あは…あははは…」

 (確かにワクワクしていた。していたけど!)

 ヒュンヒュンヒュンヒュン……

 ヘリコプターのローターのように街の中心に巨大な塔があり、その先にローターとブレードが高速で回り、街を飛ばしていた。

 (流石にこの数ヶ月でここまで改造しちゃうなんて……)

 「どうですかな!」

 ネイサンが新しく手に入ったおもちゃを自慢したい子供のように嬉々として詰め寄ってくる。

 「あははははは」

 ただただ……笑うしかなかった。
 
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