婚約破棄されたばかりの私の手が第三王子のお尻にめり込んでしまった。

さくしゃ

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婚約破棄と、、

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新しいクラスメイトと親睦を深め合い

「……」

 和気あいあいと賑わっていた教室……だけど、

「……マジかよ」

 それは一瞬にして崩れ去り

「あいつ」

 成り行きを見守るクラスメイト達の顔色が

「だ、第三王子のお尻に……」

 青色に染まった。

「手をめり込ませやがったぁぁ!!」


◇◇◇◇◇


 世界歴890年 四月一日

 季節外れの雪達が太陽の光によって溶け、下敷きとなっていた桜の花びらが顔を出した。

「……」

 日の出から三時間、空の頂上近くまで登った太陽の光が照らす廊下を私は歩いていた。

「……」

 暖かな光が心地良く、春特有のほのぼのとした雰囲気に、いつもなら影響を受けていた。

"君との婚約を破棄する!"

 少し前に突然告げれたその言葉に私の心は動揺していた。







「キャロル・レバノン!」

 授業が始まる前に用事があるーーそう言われて指定された校舎裏に行った私ーーキャロル・レバノンは、婚約者である「マイク・ドールマン」から突然、婚約破棄を言い渡された。

「君との婚約を破棄する!」

 キッ!と鋭い視線を向けられながら怒りを含んだ荒々しい声音で。

「え……?」

 しかし、あまりに唐突すぎる展開に

「ど、どうして」

 私は理解が追いつかず聞き返してしまった。

「どうして……だと」

 それが良くなかったのか、彼はプルプルと体を震わせると額に青筋を浮かべて憎々しげに私を見つめ

「そんなこともわからないのか!!」

 と叫んだ。その声は校舎に当たって反響し、時間差で私の耳へと飛び込んできた。

「まあまあ落ち着いて。マイク」

 そんなマイクを見て、彼の横で寄り添うように立っていた私の妹ーーマリアベル・レバノンは、彼の頬へ熱い口付けをした後に優しく包容した。

「どう?落ち着いた?」

 そしてマリアベルは、私の方に顔を向けるとニヤリと笑った。

「ああ、すまない。マリアベル」

「いいわよ。それよりも私がかわりに伝えてあげるからあなたはそのまま目を閉じていて」

「わかった」
 
「ふふ……さて、レバノンの家の『出来損ない』さん」

 マリアベルは、マイクを抱きしめたまま彼に変わって婚約破棄の理由を話し始めた。

「バカなあなたにもわかるように説明すると貴族であるにも関わらず魔力なしで、レバノン家、そしてこの王立学園でも『出来損ない』と言われるあなたの婚約者でいることが恥ずかしくてたまらないのよ」

 この世界には「魔力」が存在する。しかしその魔力を使えるのは貴族のみで、平民や奴隷は使えない。

「それに魔力なしの象徴である『白髪』が目立ちすぎるのよ。自分がなんて呼ばれているか知ってる?」

 そして魔力は髪色に現れるーー火の魔力なら「赤髪」水の魔力なら「青髪」……私のように魔力なしは「白髪」となる。

「不健康的な白すぎる肌と白い髪は、まるでおとぎ話に出てくるような『老婆』だって……あなたにピッタリよね!あははは!」

 マリアベルは高らかに笑った。

「……」

 でも、改めてマリアベルに言われなくても自分が何て呼ばれているかなんてわざと聞こえるようにコソコソ言われているから知っていた。

「でも」

「は?でも、なによ」

 それでもマイクはそんな私の髪が「綺麗だ」と言ってくれた。

「……」

「……何もないなら授業が始まるしもう行くわよ。マイク、最後に何か言ってあげなさいよ」

 そうマリアベルに促されたマイクは、私へ振り返ると

「君との日々は苦痛でしかなかった。さよなら、醜い老婆さん」

 清々しい笑顔を浮かべてそう言って、

「ははは!いい挨拶ね。それじゃあ、今日からマイクの婚約者は私だから2度と近づかないでね」

 二人は校舎裏から去っていった。

「……」
 
 残された私は「どうして?」が言えないままマイク達が歩いて行った方向を呆然と眺めた。
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