聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ

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初めてのアルバイト「壊滅!闇武器商人」①

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 学校に入学してから2回目の連休を前にした4月半ばの金曜17時……

 私はリサから受けたアルバイト場所へと来ていた。

 「ハンナの許可は取ったし。門限も気にしなくていい!よっしゃ!初アルバイト!稼ぐぜぇ!」

 私は、様子を伺っていた茂みの中から身を乗り出す。

 「ちょ!師匠!隠れてください!」

 隣で潜んでいたアルバイト仲間のクラウドくん(35)……

 彼によって元の茂みの中へと戻される。

 くそぅ……折角、テンション上がってきたところだったのによぅ……
 
 私を必死で押さえつけるクラウドくんは館の周囲を警備する敵兵士の様子を伺う。

 「おい……なんか人の声がしなかったか?」

 1人の警備兵が館の周りを囲む山林を睨見つけて杖を構えて警戒する。

 「気のせいだろ……こんな山奥に来るとしたら取引相手くらいさ」

 もう1人の男はつまらなさそうに槍で地面に絵を描きながら話す。

 「それもそうか……ならよぅ♡」

 森に向かって杖を構えていた男は安心した顔を浮かべると急にモジモジして隣の男にしなだれかかる。

 「誰もいないことだしぃ~本当のアタシになってもいいでしょ?」

 杖の男は寄りかかるとバスの低さだった声をアルトくらいまで高くして上目遣いで槍の男へと甘える。
 
 「おい!」

 自身の左胸に寄りかかる杖の男の両肩へ手を伸ばす槍の男。
 
 「お?引き剥がすのか?それともそのままぐふふ!なことをするのか?」

 2人の様子をワクワクしながら覗き込む私。

 「よし!賭けようじゃないか!……クラウド君は、あの2人がこれからどんな行動を取ると思う?」
 
 ジーッと屋敷の周りを覆う結界を見て悩み顔のクラウス君(35)に話しかける。

 悩んだって仕方ないって!結界なんて一目で侵入者の魔力を感知して警報を鳴らすタイプかそれとも防御だけなのかなんてわからないんだから。

 そんなクラウド君は、私の声に反応して屋敷から視線を動かす。

 「予備動作から敵の次の攻撃を予測するための修行ですか?」

 真顔で聞いてくる。

 こいつは、いつもことあるごとに私の行動一つ一つを何かの修行だと思って聞いてきやがる。
 私はそこまで意識高い系じゃねぇ!
 どっちかっていうと……直感!そう!
 それで生きてるからボンヤリ系だ!

 それでもいちいち説明するのがめんどくさい私は、

 「うんうん。それそれ!」

 適当に答えるようにしている。

 「おお!さすがは師匠だ!」

 と勝手に勘違いしてくれるし、なんかそれで勝手に強くなっていくし……
 それでいいやって感じ。

 意識高い系……恐る!

 「ベシっ!」

 とりあえずクラウス君の痺れて辛そうな太ももを人差し指でつつく。

 「……ぐあああ!」

 足を抑えてうずくまるクラウド君。

 「フッ……お主もまだまだよのぅ」

 その瞬間……

 「ふ!お主もなー」

 いつの間にか亜空間から出てきたシルフィによってふくらはぎをつつかれる。

 「ぐあああ!」

 稲妻が足を突き抜ける。

 ぐあっ!やられた!

 「ええ!急にどうしたんですか!師匠!」

 痺れから解放されたクラウド君が私に駆け寄る。

 あ……そうか!シルフィの姿は私にだけしか見えねぇんだ!

 「おおーお辛そうだー」

 地面をのたうち回る私の頭の上に舞い降りるシルフィ。

 くそ……後で覚えておけよぅ……って、私が覚えてられないから無理だ!

 「あのぅ……師匠ってヒールが使えますよね」

 初めは慌てていたクラウド君はすっかり冷静になったようで落ち着いた声で話す。

 「ぐあああ!…ぁ?…あ、そっか。ーーーーヒール」

 回復魔法を自身の足へとかける。

 そうだ。難病じゃなければ大抵のことはヒールで解決できたわ。

 「ほっ……みんなのクミ様~あ!復活!」

 回復した足で飛び置き、着地と同時に肩幅に足を開いて両手を伸ばす。

 ああ……久しぶりの地面の感触。幸せだぁ

 「……ねぇ!あれって侵入者じゃない!」
 「あ!本当だ!」

 抱き合い唇同士でぐふふ!なことをしていた警備兵2人に見つかる。

 「なに!」
 「侵入者だって!」

 抱き合う警備兵の声を聞きつけた別の兵士たちが館の裏手となる北へと集まってくる。

 「やばい!やばい!どうしよう!」

 慌てる……

 「お、落ち着け!とにかーく!オデ達のかんへいがぁっ!」
 「ええ!なによ!どうしたの!」

 一度離れたが、愛しの槍男の異変に振り返り再び抱きつく杖を持つオネエさん。

 「つっ!…つ!…舌噛んだぁ!……
 痛いよぅぅ!」
 「ああ!よしよし!大丈夫よ!ツヨシ君は強いからねぇー」

 舌を噛み抜いた様子のツヨシ君は、

 「ええ~ん……ママァ……」

 と、杖を持つオネェさんに膝の上でぐずり頭を撫でてもらう。
 そうすると次第に笑顔を取り戻していく。

 「おお……よしよ……」
 「やめい!」

 2人の甘い?やりとりを見ていたら思わず体が勝手にテレポートで近づき蹴り飛ばしていた。

 あ……鳥肌がおさま……

 「ああ!ママぁ!」

 槍の男は私に蹴り飛ばされて結界を突き破り館の壁にめり込んだ杖のオネエさんの元へ駆け寄っていく。

 「や、やめえくれぇ!」

 私はめり込んだオネェさんの元へ走る男を蹴り飛ばす。

 「マ、ぐはぁ!」

 蹴られた瞬間に甘えた声は年相応の低い声へと戻る。

 あ、鳥肌が止まった。

 「侵入者発見!」

 鳥肌が止まると同時に警備兵に取り囲まれる。その数は30人……

 「おっと……まあ、いいか」

 私は森の中に隠れるクラウド君をチラリと見る。

 ーー敵の注目は私に集めておくから、今の隙に館の中へ入れ

 と、館の方へ視線を動かす。

 伝わったのかどうかはわからないけど、意識高い系のクラウド君のことだから敏感に感じ取って中に入ることだろう。

 「やっぱり直感で生きてるから思わず体が反応してしまったな……まあ、失敗したことを気にしても仕方ない!」

 バン!と顔を叩く。

 「うっし!かかってこい!私のめり込み芸術のサビにしてやる!」
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