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スキル

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「私は地球とは違う別の世界『ジェダイト』と言う世界の神なの。曜には『ジェダイト』で生きてほしいの。使命とかそういうのは特にないわ。今まで私は『ジェダイト』に余り干渉出来ないから人を送ってその人の目を介して『ジェダイト』の様子を見ていたの」

「つまり、私の目を介して『ジェダイト』を見ると?」

プライバシーはどこ行った?

「大丈夫よ、四六時中見てるわけじゃ無いから。これでも私忙しいのよ?」

なら大丈夫そうね。

「『ジェダイト』の説明をしていいかしら?」

「ええ、お願い」

「その前に…」

フローラが小振りのベルを鳴らすと淡い光が形を成し、テーブルとティーセットになった。

「ミルクティーよ、好きでしょ?」

少し戸惑いながら頷く。

「何故知っているの?」

「地球の神に聞いたのよ。曜は地球の神のお気に入りだから」

…お気に入り?

「そうなの?」

「ええ、人と違う所がたくさんあったでしょ?」

違う所…ああ、だからか。

「あったわね、確かに」

「お茶が冷めないうちにどうぞ、そのままでいいから聞いてね」

私はミルクティーを飲みながら説明を聞いた。いつの間にかフローラも私も服を着ていた。

 ・

 ・

 ・

「…と言うことよ」

フローラの説明をまとめると、

・『ジェダイト』は地球を参考にした為、似た環境である。

・フローラは『ジェダイト』の他にいくつかの世界を持っている。

・『ジェダイト』は一番初めに創った世界で一番愛着があり、他の世界には眷属神を複数置いているが、『ジェダイト』はフローラと地球の神の二柱しかいない。

・『ジェダイト』の神は『再生の神・フローライト』と『破壊の神・インカローズ』だけで眷属神はいない。二柱は双女神で『創造神』がいないのは二柱がそうだから。

・基礎は一緒に創ったがその後はフローラが一人で創った。時々インカローズも見ているけど、見るだけで手は出さない。

・管理する世界が増えるとともに、比較的安定している『ジェダイト』に割ける時間が減ってしまったが、気になるので自分と魔力の相性の良い人間を送り、その人間の目を通して『ジェダイト』を見ることにしている。

・送る人間は『地球』からだけ。

ということらしい。

「送る人間は『地球』からね…。弟や妹は来れないのかな…?」

「う~ん。今地球で魔力の相性の良い人間は五人いるわね。その中で曜と血のつながりがあるのは…二人いるわ!双子の兄妹よ」

「二人だわ!あ、でも…」

来る頃には私が先に死ぬわね…。

「地球と『ジェダイト』の時間は違うのよ?地球で百年経っても『ジェダイト』では十年しか経ってないのよ」

十分の一!?でも

「それなら会えるわ!!」

また三人で暮らせる!!

「二人共『ジェダイト』に呼びましょう」

「ありがとうフローラ!!」

「友達である曜のためならこれぐらいどうってことないわ」

「ふふっ」

「まぁそれは置いといて『ジェダイト』について聞きたいことは無い?」

聞きたいことね。

「じゃあまずは三つ。一つ、似た環境はどのくらい似ているの?二つ、地球との違いは?三つ、地球で言えばどのくらいの文化?」

「そうねぇ簡単に言えば…」

・動植物相が似ている。でも、『ジェダイト』には魔物と呼ばれる生物が生息している。

・神獣と呼ばれる眷属神では無いが『ジェダイト』を見守る役目を持った存在がいる。

・科学の代わりに魔法が発達した、剣と魔法の世界。

・魔法がある為、医療等の知識が薄く衛生面が良くない。

・人種は、私と同じ姿の人族だけではなく、獣人やエルフ、ドワーフなど多種族がいる。

・貨幣が流通していて一応の秩序もあるが、治安はあまり良くない。

・魔物や盗賊がいる分、全体の寿命は日本より短い。

・文化を例えるなら中世ヨーロッパのような世界。

「ファンタジー小説のような世界?」

「その認識で十分よ。他には?」

「神獣の役目は何?獣人やエルフは何を崇めているの?今までどのくらいの人が来たの?生き方は?」

「神獣の役目は世界レベルの災害や天災が起きた時にそれを鎮めたり、人々を助けたるするのが役目よ。獣人やエルフは昔神獣に助けられたことがあって私やローズと一緒にその神獣を崇めているわね。今まで来た人の数は結構多いいわ、五十人くらいかしら。生き方は様々ね」

様々…。

「例えば?」

「例えば村人として生きた人もいたし、商人として世界を回った人もいたわ。魔物を倒して生計を立てる冒険者として生きた人もいれば、奴隷になってしまった人もいる。伴侶を得た人もいれば、独りで生きた人もいるわね」

奴隷…

「奴隷制度があるの?」

「ええ、でもない国の方が多いわよ」

「なるほど…死亡率は?」

「全体の約七割がこちらに来て1年以内に死亡しているわね」

全体の約七割が1年以内に死亡?

「何故…ああそういう事。地球よりもずっと危険なのね。だから平和ボケしている日本人は死にやすいのね」

「平和ボケ…曜の言う通りなのかしら?」

「そうよ。日本はもうずっと戦争をしてないから戦争を知っている人の方が少ないわ。私は幼い頃から誘拐、殺人未遂、毒殺…あらゆる危険が身近にあったから平和ボケなんてしてないけどね」

「…所々に凄い情報があるんだけど?」

「フローラはインカローズ様から聞いているでしょ?」

「…他には?」

あ、逸らした。まぁありがたいけど。

「他…魔物以外に危険は?」

「盗賊ね。盗賊は、行商人を襲ったり村を襲ったり…」

ああ、盗賊もいるのか…。

「フローラ」

「何?」

こてんと首を傾げて聞くフローラ。…可愛い。って違う違う。

「フローラ、私は余り強くない。今まで生きれていたのは産まれた時からある三つの能力と阿保みたいに運が良かっただけ。1年以内に死ぬ確率の方が高いわ。だから一杯現地の人と交流したり、綺麗なモノを見たり、美味しい物を食べたりして、楽しい世界をフローラに見せてあげるわ」

「…死なせないわ」

「頑張って生きてみるわ」

「曜を1年以内になんて、絶対に死なせない!!ええ、絶対に死なせないわ!!曜には全力の加護を授けます!!」

フローラが固く決意したような目で両手で握り拳を作って宣言した。

「他の人にはあげなかったの?」

「他の人は話を聞くと喜んでさっさと同意してくれたの。だから彼らの望む能力を3つほど授けてから転移してもらっていたわ」

ああ…。

「フローラ綺麗だから…」

「ありがとう曜。今から私と一緒に長生きする為に必要な能力を考えましょう!そして授けましょう!!」

「…過度な干渉波出来ないんじゃ?」

「加護を与えるのは神の仕事の一環。だから曜にどれだけ加護を与えようと干渉したことにはならないわ。それに干渉出来ないのは地上に降りてからよ」

「なるほど…頼もしいわね」

「任せて頂戴!!」

そう言って微笑むフローラどこまでも麗しく、そして頼もしかった。

「まずは、強い事が前提よ」

戦うことが前提条件みたいね。

「剣が使えるわ。剣術だけど」

「なら『身体強化』を付けましょう」

「魔法を使えると戦闘が楽になりそうね」

「なら『全属性』と『魔力制御』と『魔力視』と『魔力感知』かしら。魔法やスキルを使いたいだけ使えるように、
魔力も多めにしておきましょう」

「うん…負担とかは無いの?」

「あるわよ。だから今言ったのは全てレベル1よ。でも、曜がローズのお気に入りだって言ったでしょ?曜は付けるスキルが多くても大丈夫なのよ、だからいっぱいスキルをつけてもレベル1のほうが魂にかかる負担が少ないの」

「なるほどね」

「他に必要なのは…」

「あ、『鑑定』ってある?」

「あるわ。『鑑定』と『料理』もいるわよね?」

「お願い。あとどれくらい付けれる?」

「まだ全然付けれるわ!!」

「そう…なら『害意察知』『気配感知』『急所看破』『気配遮断』『消音行動』『薬草学』『魔法学』『言語理解』『剣術』『刀術』『弓術』『護身術』『威圧』『武器破壊』『魔力回復上昇』『体力回復上昇』『空間転移』『収納』『物理耐性』『状態異常耐性』『痛覚耐性』『演劇』『鍛冶』『建築』『話術』『生存術』『支援補助』『模倣』『地形把握』『偽装』『快適安眠』『手加減』『感覚強化』『環境適応』『暗視』『千里眼』『念話』『並列思考』『情報収集』『裁縫』『緊急処置』『空間感知』『解毒』…このうち何個付けれる?」

「えっと攻撃系で
『剣術』『刀術』『弓術』『護身術』『威圧』『武器破壊』『害意察知』『気配感知』『急所看破』『気配遮断』『手加減』『痛覚耐性』『状態異常耐性』『模倣』『偽装』。
生活系で『薬草学』『魔法学』『演劇』『鍛冶』『建築』『話術』『暗視』『千里眼』『裁縫』『緊急処置』『空間感知』…かしら」

「結構付くのね」

「必要なさそうなのは省いたのよ。『解毒』は『全魔法』があればいいもの」

確かに。

「この中でレベル3にあげるのは、『鑑定』『料理』『害意察知』『害意察知』『手加減』『痛覚耐性』『状態異常耐性』『偽装』『薬草学』『魔法学』『千里眼』『空間感知』ね」

「『料理』は何故?」

「知らない食材でも、調理法が分かるのよ」

「そういうことね…収納系は無い?」

「『アイテムボックス』いえ、『ストレージ』にしましょう!時間経過無し、リスト機能とソート機能付きの曜専用よ!」

「おお!…やっぱり『アイテムボックス』も付けてくれない?」

「いいけど…何故?」

「偽装用に。レベル1でいいから」

「分かったわ」

「後、地図を入れといてくれない?」

「地図は各国の防衛上、あまり流通させてないのよね。一応簡単な地図ならギルドに置いてあるけど…。あれは地図とは呼べないほど簡単なやつだし…。そうだわ、地図が無いならスキルにすればいいのよ。『地図』じゃ安直だし『マップ』ね。これも曜専用なのよ!」

特別スキルってことよね。

「ありがとうフローラ。フローラから貰ったスキルで生き抜いて見せるわ!!」

「当たり前よ!すぐに戻ってきたりしたらお説教だからね?」

「アハハ…」

「他には?」

他か…。

「私の体って今どんな状態なの?」

「曜の体は無いわ。『ジェダイト』に馴染む体を新しく創るのよ。何か希望はある?」

希望か…。

「髪は黒のままにして欲しいの。弟達が分かりやすいように」

「容姿はこっちの好きなようにしての良い?」

「うん。あ…結婚とかもしてみたいから『ジェダイト』では少し幼くしてくれる?」

「幼く…何歳くらい?」

歳か…十歳から十五歳くらいかな?

「分かったわ、そのくらいにしておくわ」

後、服もどうにかしないと。

「そうねその服も似合っているけど、戦闘となるとねぇ…」

今、私が着ているのは誕生日に信五と夕月がくれたプレゼントの片方である白いドレスなのだ。

「曜が使いたい武器ってある?」

武器…

「木刀のような形か、刀」

「強い刀を用意するわね!…防具は『ドレスアーマー』で良いわよね?」

強い刀かぁ…え?一択!?まさかの一択!?

「女の子は目立たないとね♪」

えー…。

「あーうん、分かったその代わりに一着でいいから目立たないのをお願いします…」

「分かったわ…後、持ち込み一つだけならいいわよ?」

え、本当に!?

「勿論!」

「なら…セットのでもいい…?」

「セット…う~ん、いいわ!」

「本当!?なら今、私が着ているこのドレスと同じ物とオブシディアンの粒が付いたシルバーリングを持って行きたいわ…大切な物なの」

「うん、大丈夫よ。ドレスアーマーも丈夫で可愛いのにするから」

何か楽しそうねぇ、まぁいいけど。

「色々持たせてあげたいけど、余り持って行けないのよね。だから強い装備にして見せるわ!ドレスとシルバーリングは壊れないように加工しておくわね♪」

その心遣いが嬉しい。

これで不安は無くなったかな?せっかくフローラが特別スキルまでくれたんだから頑張らないとね。

「終わるまでこれでも飲んでて」

そう言って出されたのは紅茶。あ、これ好きなやつだ。

「頂きます」

 ・

 ・

 ・

紅茶を飲んでいる間フローラは別のところに行っているのか、姿を見せなかった。結構時間がかかるんだなと思いつつ最後の一口を飲むとフローラが帰って来た。準備が整ったらしい。

「できたわ」

「そう…」

「…怖い?」

「ううん、それよりも…初めて心の底から一緒にいるのが楽しいと思った友達との別れはさびしいわ」

そう、さびしい。もう会えなくなるのがさびしいんだ。

「曜、大丈夫よ。神殿に来て祈りを捧げて?そうすればまた会えるから」

「本当?」

「ええ、だからまた会えるわ」

「分かったわ、必ず会いに行くから」

「待ってるわ」

 ・

 ・

 ・

「そろそろね、最後に曜は好きな動物っている?」

好きな動物…。

「犬と猫と鳥が好きだったわ」

何でそんなこと聞くのかしら?

「目を閉じて」

言われた通りに目を閉じる。

「曜、あなたの人生にたくさんの光を」

その言葉を最後に私の意識は暗転した。


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