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第四十七話 白と紫、そして第三位
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がたごとがたごと。
馬車は揺れる。がたごと揺れる。
ぽよぽよふよふよ。
馬車につられて皆のおっぱいが揺れる。ヤバい楽しい。一生見てられる。
ギンシュのをじーっと見てると、ギンシュが私をちらりと見て、さっと胸を隠した。
「なんで隠すのさぁ」
「そなたの目がいやらしいからだ」
「違うよ。いやらしいのは私の目じゃなくて、ギンシュちゃんのおっぱいだよ」
「はぁ!? わたっ、わたっ……私のむっむむ胸が悪いだとぉ!?」
「そうだよ。ギンシュちゃんの胸がそんなに大きくなかったら揺れなかったしじっと見つめなかったしこうしてミレイのおっぱいを揉むことも無かったよ」
「あぁん……お姉さまぁ……だめですぅ……」
「おいこら! どさくさに紛れてミレイの胸を揉むな! おまけに最後のは私は全く関係ないだろう!」
「そうかなぁ」
私は果てしなくフリーダムに振舞う。いいよねーこういうの。
おまけにかわいこちゃんがたーくさん。まあ男も混じってはいるけどきにしなーい!
「なあギンシュ……エリィってあんなんだっけ?」
「さぁ……前から頭はおかしかったが、今日は特に気分が高揚しているようにも見えるが」
なんか二人で私のことどうこう喋ってるっぽい。てかちょっとまって頭はおかしくないぞ。
そしてこちらはと言えば。
「素数を……素数を数えねば……。危険だ……童貞の俺にはこの空間は危険すぎる……」
目をつぶって素数を数えてた奴隷で賢者で童貞のハジメ君。がんばれ。
でもいやらしい目で見たりするのは別に構わないぞ。そういうのはえちちな行為の最高のスパイスだからな。
もっとも、そんなの毎日見せつけられたら……辛いよね、きっと。ごめんね。でもやめないけど。
「ぐがー……すぴぴぴ……ごがー……すぴぴぴ」
そして『北の氷結姫』様ことシグさんはと言えば、あれから一度も目を覚まさずにぐっすりぐーすか寝ておられる。
凄いなぁ。馬車って結構揺れるんだよ。新幹線とは訳が違うんだよ。
でも姿勢を全く崩さないまま、ゆらりゆらりと揺れはしても決して倒れたりしないまま、シグさんはかるいいびきを立てて、鼻ちょうちん作ってしっかりと睡眠をとっておりました。
「エリィちゃーん、ちょっといーいー?」
「はぁーい」
私は御者台にいるリンドゥーさんに呼ばれて前に行く。
「どうしました?」
「そろそろお昼だし、どこかに止めて休憩したいと思うんだけど。馬達に水と餌をやりたいし」
「そうですね。お腹も減ってきましたし。いい場所があったら休憩しましょう」
「もう少し進めば駅が見えてくるはずよ。そこにしましょう」
「はい」
『駅』というのは、きっと鉄道の駅ではなく、馬車の駅である。
私達の世界ではもう馬車なんて見ないので、駅と言えば鉄道の駅が一般的なのだが、元々駅とは馬を休ませる施設だったりするのだ。いやホント。これホントだから。
この世界ではまだそういう駅が普通にあるらしい。やっぱ面白いね。
今回休む駅は綺麗に片付いていた。つまり、誰もいないってことだ。
馬車をゆっくりと止めて、皆で外に降りて、さーってご飯の準備をっと思ったら。
なんか空気がピシリと、音がした気がした。
え? 何があったの?
思わずそっちを向くと……シグさんとリンドゥーさんが睨み合っていた。
「アンタ……こんなトコで何してんだい?」
「そういうアンタこそ……平和な世の中じゃさぞ息苦しいでしょうに」
めっちゃピリピリしてる。なにこれ。なにこれ?
私はアシンさんに近寄ってこそこそ。
「あの、リンドゥーさんとシグさんって知り合いなんです?」
「し、知らねぇよ。俺の反応見ただろ? リンドゥーのことは知ってても、氷結姫様は完全に初対面だ。俺も何がなんだか」
「おい主様よぉ!」
「あっあるじさまぁ!? アンタが!? アンタが!?」
「ちっうるさいねぇ。今は後にしな」
シグさんのご指名だ。
「私ですか? なんでしょう」
「どうしてこいつがいるんだい?」
「それは私の台詞。どうしてこの人がいるのかしら?」
「えっと……シグさんは私についてくって決めたから。リンドゥーさんはまあ、色々ありまして」
「主様……いや、主様達全員か。こいつがどこの誰だか分かってないのかい?」
「ちょっと!?」
「へぇ……やっぱりアンタ、黙ってたんじゃないか」
「べっ、別にこれから言おうと思ってたのよ」
「そう言って後でも絶対言わない癖に。アンタのそーゆー所、昔から嫌いだよ」
「アタシだって、アンタのそーやって何もかも真っすぐ進めば大丈夫、なんて所、大っ嫌いだわ」
「そうかい。じゃ好きにさせて貰うよ」
「ちょっ」
シグさんは言うが早いか、一瞬でリンドゥーさんに近付き、眼鏡を取って、髪を解いた。
長い髪を編んで頭にまとめていたシニヨンの髪が一気に解けて、長い長いロングヘアーになる。
そして瞳も……今までとは違う装いになっていった。
どうやらリンドゥーさんがかけていた眼鏡は、あれからミレイがほぼずっと着けたままにしているヴェールと同じような機能を持った魔道具だったようだ。
彼女の栗色の髪は、光を通しそうなくらい透き通るような薄紫色に。そして桃色の瞳は、ルビーのような真っ赤な赤へと変化した。
私は全く分からないので、周りの反応を伺う。というか一番分かりやすいのはギンシュだろう。ギンシュをちらりと。
するとやっぱり予想通りである。ギンシュはあわあわしながら、すかさず土下座を始めた。
あーやっぱり。そういうことですか……。
アシンさんは流石庶民代表。ギンシュがさっと土下座をしたので、良く分からないけれど一瞬で同じように動く。
そして私のすぐそばにいたハジメ君は何がなんだかって顔をしている。仕方ないよねー。私は「死にたくなければ土下座しときな」と囁く。彼はぎょっとして、ぱっと動いた。いいよその反射神経。生き残るのには大事。
え? 私? 私はねぇ……既に彼女との関係性は『主人と犬』ですから……誰にも言えないけど。
「あらあら。やっと分かったのかい、コイツの立場が。……ってあれ? なんで頭下げないんだいあんたら」
「私は、相手が誰か知ってから頭を下げるようにしているので」
「アッハハハハ! やっぱしアタシはアンタのことサイコーだと思うよ! こいつはねぇ! スパンコール家さ!」
「ひぇあぁっ!?」
凄い声出したのはアシンさん。そーいや過去色々あったもんねぇ。でも私は残念ながら。
「……誰?」
「ぷっ」
私の声に反応したのはミレイ。しょーがないじゃん知らないんだから。笑わないでよ。
「えっ、ちょ、ちょっと待ってくれよ主様よ。スパンコール家だよ? なぁ? スパンコール家って聞いてどうしてそんなお馬鹿な反応になるんだい?」
「恐れながら! 恐れながら発言をお許しいただけますでしょうか?」
「ふぅ……あー頭下げてる全員。私は気にしないので自由に振舞って結構! はいバニング家のあなた、どーぞ」
「ありがとうございます! さてエリィ……お前先日、マンジローさんからドワーフの国の話を聞いたのは覚えているか?」
「ええ聞いたわね。最終的に国が亡んだって」
「ドワーフ王家の名が、スパンコール家だ」
「えっ!? じゃあリンドゥーさんってドワーフ王家の生き残り!?」
「そうだ! そもそも紫髪に赤眼はドワーフ王家の色だ! もうホントお前には呆れてモノがいえん……」
はい。ごめんなさい。
……でもさぁ。リンドゥーさんの過去話聞いたけどさぁ。
昔めっちゃ遊んでたんだよねぇ。冒険者の皆さんと。
その人達って……このこと……知らないよねぇ。
恐る恐るアシンさんを見ると。
あっ……土下座したまま気絶してた。
そりゃそうだよねぇ……だって、遥か遥か高みに住まうはずの御方と、カレカノになったり色々しちゃったりしたんでしょ? そりゃーねぇ……うん。なーむー。
「エリィは別にいいのよ。それよりも気になるのは……そっちの小娘よ。アタシの事をスパンコール家って聞いても頭下げないなんて、どういうことなのよってちょっとなに? え? なにするの?」
ミレイは近付いてきたリンドゥーさんのことを全身くんかくんかしてる。どしたの?
くんかくんかを終えたミレイは一言。
「……お姉さまの匂いがしますぅ」
……やべ。何あの子怖い。
「お姉さまぁ? 何か言う事はないですかぁ?」
「いえ……べつに……」
「今ならぁ、特別に今晩だけで許してあげますぅ。今言わないなら一週間搾り取りますぅ」
「ごめんなさいリンドゥーさんと色々しました」
「ちょっと!? ご主人様!?」
あっ……
ミレイがゆらぁりとリンドゥーさんの方を向く。怖い。私ですら怖い。
後ろ姿ですら怖いのに、その圧を向けられているリンドゥーさんはどれくらいなのだろう。
「ひ……いっ……」
「そんな呼び方をするってことはぁ、それはもう色々あったみたいですねぇ……そうだ、一つ、大事な事を教えてあげますぅ」
そういって、彼女は滅多に外さない黒のヴェールを脱いだ。
リンドゥーさんはきょとんとしながらも、じっと待つ……が、ある時ふと気付く。そして……がたがたと震え出した。
「『スカバラサーサス』。知ってますぅ?」
「しっ、『四最貴族』第三位……サキュバス……王家……」
「ご存じならいいんですぅ……さて、『命令』しますぅ」
「ひいっ!?」
「『今すぐその場で全裸になって両足を大きく広げて両手は頭の後ろにつけろ』ですぅ」
「いやっそんなぁあぁああああっっ!?」
彼女は自分の意志とは明確に違う行動をしだす。そして……彼女の体に色々と着いている器具やら印やら。
「うわぁ……」
「なっ……ななっ……」
「おいアンタ……」
「すげぇ……漫画でしか見たことねぇや……」
「見ないでぇ!! 見ないでぇええ!! あっっ!! すきぃ!! すきぃ!!」
あっ今飛んだな。飛んだら『すき』って言うように調教したからな。やっぱMすぎるでしょ。
「ふぅーん……じゃあちょっと、『お仕置き』ですぅ」
ミレイはリンドゥーのお腹に手を当てると、ずぶずぶと手を腹の奥へと沈めていった。
何それそんなこと出来るの?
そしてリンドゥーが『はうっ!?』という声を出すと、キィイイン! とお腹が、私のつけた紋が光って、そしてゆっくりと手を抜いた。
「これで、『ずっとお腹の奥が高ぶったままだけど、何をしても気持ちよくなれない』呪いをかけたですぅ。当分は私に許しを請うですぅ」
「ううっっ……すみ……すみません……でした……」
「分かればいいんですぅ……とりあえず今日は一日そのままにしてろですぅ……さて」
「ひいっ!?」
ミレイがこっちに近付いてくる。ヤバい怖い超怖い。
でもそっとミレイが私に触れた。あれそんなに怒ってない? あれ?
「お姉さまぁ……ミレイはお姉さまのモノですけどぉ、お姉さまはミレイのモノなんですぅ。分かりますぅ」
「はい。分かります。あとホントごめんなさい。私がリンドゥーさんにちょっかいかけたらリンドゥーさんものってきたってだけの話なの。本当にごめん」
「むーん……お姉さまからだったら仕方ないですぅ」
「良かった……許してくれる?」
「じゃあ今度からぁ、この手の事の『はじめて』は全部ミレイに欲しいですぅ。ミレイは、ミレイは……お姉さまの為なら何でもできるですぅ」
「分かったよ。次から気を付けるから」
私はミレイの頭をよしよしした。
「むふーん。さてお姉さまには別の罰があるですぅ」
「あっやっぱりあるのね」
「ひとつ聞きたいんですけどぉ……彼女についてたお姉さまの匂いがぁ、雌っぽくなくて雄っぽかったですが……どういうことですかぁ?」
あっ……私、弁解の余地なし。
結論としまして。
私は【肉体変化】でバナナを作らされ、それを【闇魔法】で外されて彼女のマンゴーにしまわれてしまいました。
あかん。サキュバスってあかん。めっちゃ絞られてる。今も絞られてる。
なーんにも考えられない。ごはんたべたいのに手が震えて食べられない。
ミレイがたべさせてくれる。あーんじゃなくて口移しだって。ぺろぺろ。
あっ……あっ……しゅき……しゅき……
これ……ちょっとご褒美だと最初思った私を殴りたい……これ……完全に拷問だ……
サキュバス甘く見てた……駄目……搾り取られちゃう……うそ……むりぃ……
「むふーん……お姉さまぁ」
あっくっつかないでからだねじらないで……すごいの……しゅごいのぉ……
リンドゥーは目の毒なのだが、どうにもならない。
あと本人はめっちゃ興奮して気持ちいいのに、それでしゅきぃ! になれなくて泣きながらミレイに謝ってた。
二度とミレイを怒らせてはならないと、全員で誓った。
ちなみにアシンは気絶したままなので馬車に載せておいた。
馬車は揺れる。がたごと揺れる。
ぽよぽよふよふよ。
馬車につられて皆のおっぱいが揺れる。ヤバい楽しい。一生見てられる。
ギンシュのをじーっと見てると、ギンシュが私をちらりと見て、さっと胸を隠した。
「なんで隠すのさぁ」
「そなたの目がいやらしいからだ」
「違うよ。いやらしいのは私の目じゃなくて、ギンシュちゃんのおっぱいだよ」
「はぁ!? わたっ、わたっ……私のむっむむ胸が悪いだとぉ!?」
「そうだよ。ギンシュちゃんの胸がそんなに大きくなかったら揺れなかったしじっと見つめなかったしこうしてミレイのおっぱいを揉むことも無かったよ」
「あぁん……お姉さまぁ……だめですぅ……」
「おいこら! どさくさに紛れてミレイの胸を揉むな! おまけに最後のは私は全く関係ないだろう!」
「そうかなぁ」
私は果てしなくフリーダムに振舞う。いいよねーこういうの。
おまけにかわいこちゃんがたーくさん。まあ男も混じってはいるけどきにしなーい!
「なあギンシュ……エリィってあんなんだっけ?」
「さぁ……前から頭はおかしかったが、今日は特に気分が高揚しているようにも見えるが」
なんか二人で私のことどうこう喋ってるっぽい。てかちょっとまって頭はおかしくないぞ。
そしてこちらはと言えば。
「素数を……素数を数えねば……。危険だ……童貞の俺にはこの空間は危険すぎる……」
目をつぶって素数を数えてた奴隷で賢者で童貞のハジメ君。がんばれ。
でもいやらしい目で見たりするのは別に構わないぞ。そういうのはえちちな行為の最高のスパイスだからな。
もっとも、そんなの毎日見せつけられたら……辛いよね、きっと。ごめんね。でもやめないけど。
「ぐがー……すぴぴぴ……ごがー……すぴぴぴ」
そして『北の氷結姫』様ことシグさんはと言えば、あれから一度も目を覚まさずにぐっすりぐーすか寝ておられる。
凄いなぁ。馬車って結構揺れるんだよ。新幹線とは訳が違うんだよ。
でも姿勢を全く崩さないまま、ゆらりゆらりと揺れはしても決して倒れたりしないまま、シグさんはかるいいびきを立てて、鼻ちょうちん作ってしっかりと睡眠をとっておりました。
「エリィちゃーん、ちょっといーいー?」
「はぁーい」
私は御者台にいるリンドゥーさんに呼ばれて前に行く。
「どうしました?」
「そろそろお昼だし、どこかに止めて休憩したいと思うんだけど。馬達に水と餌をやりたいし」
「そうですね。お腹も減ってきましたし。いい場所があったら休憩しましょう」
「もう少し進めば駅が見えてくるはずよ。そこにしましょう」
「はい」
『駅』というのは、きっと鉄道の駅ではなく、馬車の駅である。
私達の世界ではもう馬車なんて見ないので、駅と言えば鉄道の駅が一般的なのだが、元々駅とは馬を休ませる施設だったりするのだ。いやホント。これホントだから。
この世界ではまだそういう駅が普通にあるらしい。やっぱ面白いね。
今回休む駅は綺麗に片付いていた。つまり、誰もいないってことだ。
馬車をゆっくりと止めて、皆で外に降りて、さーってご飯の準備をっと思ったら。
なんか空気がピシリと、音がした気がした。
え? 何があったの?
思わずそっちを向くと……シグさんとリンドゥーさんが睨み合っていた。
「アンタ……こんなトコで何してんだい?」
「そういうアンタこそ……平和な世の中じゃさぞ息苦しいでしょうに」
めっちゃピリピリしてる。なにこれ。なにこれ?
私はアシンさんに近寄ってこそこそ。
「あの、リンドゥーさんとシグさんって知り合いなんです?」
「し、知らねぇよ。俺の反応見ただろ? リンドゥーのことは知ってても、氷結姫様は完全に初対面だ。俺も何がなんだか」
「おい主様よぉ!」
「あっあるじさまぁ!? アンタが!? アンタが!?」
「ちっうるさいねぇ。今は後にしな」
シグさんのご指名だ。
「私ですか? なんでしょう」
「どうしてこいつがいるんだい?」
「それは私の台詞。どうしてこの人がいるのかしら?」
「えっと……シグさんは私についてくって決めたから。リンドゥーさんはまあ、色々ありまして」
「主様……いや、主様達全員か。こいつがどこの誰だか分かってないのかい?」
「ちょっと!?」
「へぇ……やっぱりアンタ、黙ってたんじゃないか」
「べっ、別にこれから言おうと思ってたのよ」
「そう言って後でも絶対言わない癖に。アンタのそーゆー所、昔から嫌いだよ」
「アタシだって、アンタのそーやって何もかも真っすぐ進めば大丈夫、なんて所、大っ嫌いだわ」
「そうかい。じゃ好きにさせて貰うよ」
「ちょっ」
シグさんは言うが早いか、一瞬でリンドゥーさんに近付き、眼鏡を取って、髪を解いた。
長い髪を編んで頭にまとめていたシニヨンの髪が一気に解けて、長い長いロングヘアーになる。
そして瞳も……今までとは違う装いになっていった。
どうやらリンドゥーさんがかけていた眼鏡は、あれからミレイがほぼずっと着けたままにしているヴェールと同じような機能を持った魔道具だったようだ。
彼女の栗色の髪は、光を通しそうなくらい透き通るような薄紫色に。そして桃色の瞳は、ルビーのような真っ赤な赤へと変化した。
私は全く分からないので、周りの反応を伺う。というか一番分かりやすいのはギンシュだろう。ギンシュをちらりと。
するとやっぱり予想通りである。ギンシュはあわあわしながら、すかさず土下座を始めた。
あーやっぱり。そういうことですか……。
アシンさんは流石庶民代表。ギンシュがさっと土下座をしたので、良く分からないけれど一瞬で同じように動く。
そして私のすぐそばにいたハジメ君は何がなんだかって顔をしている。仕方ないよねー。私は「死にたくなければ土下座しときな」と囁く。彼はぎょっとして、ぱっと動いた。いいよその反射神経。生き残るのには大事。
え? 私? 私はねぇ……既に彼女との関係性は『主人と犬』ですから……誰にも言えないけど。
「あらあら。やっと分かったのかい、コイツの立場が。……ってあれ? なんで頭下げないんだいあんたら」
「私は、相手が誰か知ってから頭を下げるようにしているので」
「アッハハハハ! やっぱしアタシはアンタのことサイコーだと思うよ! こいつはねぇ! スパンコール家さ!」
「ひぇあぁっ!?」
凄い声出したのはアシンさん。そーいや過去色々あったもんねぇ。でも私は残念ながら。
「……誰?」
「ぷっ」
私の声に反応したのはミレイ。しょーがないじゃん知らないんだから。笑わないでよ。
「えっ、ちょ、ちょっと待ってくれよ主様よ。スパンコール家だよ? なぁ? スパンコール家って聞いてどうしてそんなお馬鹿な反応になるんだい?」
「恐れながら! 恐れながら発言をお許しいただけますでしょうか?」
「ふぅ……あー頭下げてる全員。私は気にしないので自由に振舞って結構! はいバニング家のあなた、どーぞ」
「ありがとうございます! さてエリィ……お前先日、マンジローさんからドワーフの国の話を聞いたのは覚えているか?」
「ええ聞いたわね。最終的に国が亡んだって」
「ドワーフ王家の名が、スパンコール家だ」
「えっ!? じゃあリンドゥーさんってドワーフ王家の生き残り!?」
「そうだ! そもそも紫髪に赤眼はドワーフ王家の色だ! もうホントお前には呆れてモノがいえん……」
はい。ごめんなさい。
……でもさぁ。リンドゥーさんの過去話聞いたけどさぁ。
昔めっちゃ遊んでたんだよねぇ。冒険者の皆さんと。
その人達って……このこと……知らないよねぇ。
恐る恐るアシンさんを見ると。
あっ……土下座したまま気絶してた。
そりゃそうだよねぇ……だって、遥か遥か高みに住まうはずの御方と、カレカノになったり色々しちゃったりしたんでしょ? そりゃーねぇ……うん。なーむー。
「エリィは別にいいのよ。それよりも気になるのは……そっちの小娘よ。アタシの事をスパンコール家って聞いても頭下げないなんて、どういうことなのよってちょっとなに? え? なにするの?」
ミレイは近付いてきたリンドゥーさんのことを全身くんかくんかしてる。どしたの?
くんかくんかを終えたミレイは一言。
「……お姉さまの匂いがしますぅ」
……やべ。何あの子怖い。
「お姉さまぁ? 何か言う事はないですかぁ?」
「いえ……べつに……」
「今ならぁ、特別に今晩だけで許してあげますぅ。今言わないなら一週間搾り取りますぅ」
「ごめんなさいリンドゥーさんと色々しました」
「ちょっと!? ご主人様!?」
あっ……
ミレイがゆらぁりとリンドゥーさんの方を向く。怖い。私ですら怖い。
後ろ姿ですら怖いのに、その圧を向けられているリンドゥーさんはどれくらいなのだろう。
「ひ……いっ……」
「そんな呼び方をするってことはぁ、それはもう色々あったみたいですねぇ……そうだ、一つ、大事な事を教えてあげますぅ」
そういって、彼女は滅多に外さない黒のヴェールを脱いだ。
リンドゥーさんはきょとんとしながらも、じっと待つ……が、ある時ふと気付く。そして……がたがたと震え出した。
「『スカバラサーサス』。知ってますぅ?」
「しっ、『四最貴族』第三位……サキュバス……王家……」
「ご存じならいいんですぅ……さて、『命令』しますぅ」
「ひいっ!?」
「『今すぐその場で全裸になって両足を大きく広げて両手は頭の後ろにつけろ』ですぅ」
「いやっそんなぁあぁああああっっ!?」
彼女は自分の意志とは明確に違う行動をしだす。そして……彼女の体に色々と着いている器具やら印やら。
「うわぁ……」
「なっ……ななっ……」
「おいアンタ……」
「すげぇ……漫画でしか見たことねぇや……」
「見ないでぇ!! 見ないでぇええ!! あっっ!! すきぃ!! すきぃ!!」
あっ今飛んだな。飛んだら『すき』って言うように調教したからな。やっぱMすぎるでしょ。
「ふぅーん……じゃあちょっと、『お仕置き』ですぅ」
ミレイはリンドゥーのお腹に手を当てると、ずぶずぶと手を腹の奥へと沈めていった。
何それそんなこと出来るの?
そしてリンドゥーが『はうっ!?』という声を出すと、キィイイン! とお腹が、私のつけた紋が光って、そしてゆっくりと手を抜いた。
「これで、『ずっとお腹の奥が高ぶったままだけど、何をしても気持ちよくなれない』呪いをかけたですぅ。当分は私に許しを請うですぅ」
「ううっっ……すみ……すみません……でした……」
「分かればいいんですぅ……とりあえず今日は一日そのままにしてろですぅ……さて」
「ひいっ!?」
ミレイがこっちに近付いてくる。ヤバい怖い超怖い。
でもそっとミレイが私に触れた。あれそんなに怒ってない? あれ?
「お姉さまぁ……ミレイはお姉さまのモノですけどぉ、お姉さまはミレイのモノなんですぅ。分かりますぅ」
「はい。分かります。あとホントごめんなさい。私がリンドゥーさんにちょっかいかけたらリンドゥーさんものってきたってだけの話なの。本当にごめん」
「むーん……お姉さまからだったら仕方ないですぅ」
「良かった……許してくれる?」
「じゃあ今度からぁ、この手の事の『はじめて』は全部ミレイに欲しいですぅ。ミレイは、ミレイは……お姉さまの為なら何でもできるですぅ」
「分かったよ。次から気を付けるから」
私はミレイの頭をよしよしした。
「むふーん。さてお姉さまには別の罰があるですぅ」
「あっやっぱりあるのね」
「ひとつ聞きたいんですけどぉ……彼女についてたお姉さまの匂いがぁ、雌っぽくなくて雄っぽかったですが……どういうことですかぁ?」
あっ……私、弁解の余地なし。
結論としまして。
私は【肉体変化】でバナナを作らされ、それを【闇魔法】で外されて彼女のマンゴーにしまわれてしまいました。
あかん。サキュバスってあかん。めっちゃ絞られてる。今も絞られてる。
なーんにも考えられない。ごはんたべたいのに手が震えて食べられない。
ミレイがたべさせてくれる。あーんじゃなくて口移しだって。ぺろぺろ。
あっ……あっ……しゅき……しゅき……
これ……ちょっとご褒美だと最初思った私を殴りたい……これ……完全に拷問だ……
サキュバス甘く見てた……駄目……搾り取られちゃう……うそ……むりぃ……
「むふーん……お姉さまぁ」
あっくっつかないでからだねじらないで……すごいの……しゅごいのぉ……
リンドゥーは目の毒なのだが、どうにもならない。
あと本人はめっちゃ興奮して気持ちいいのに、それでしゅきぃ! になれなくて泣きながらミレイに謝ってた。
二度とミレイを怒らせてはならないと、全員で誓った。
ちなみにアシンは気絶したままなので馬車に載せておいた。
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