LUNAPROJECT

瑞希

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月華

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 私は、人を愛する事が出来ない。私が愛した人はすぐに私の元から離れてるから……こんな悲しい事が起きるのならと自分の手で感情を無くした。そんな私を帝は そなたの事が好きになった。我が妻になれ!と書簡が来た。私は、その申し出を受けるかどうか決める為に条件を出した。それは、一年間毎夜私の邸へ来る事。帝は飽きっぽいとの噂は聴いていたのできっと諦めるだろうと思っていた。
しかし、彼は私に色々な話しや珍しいものを送ってきたりして私の興味を引こうとして来たが私は声を発する事もニコリと笑う事もせずその贈り物や話しを聞いていた。そんな私に彼は、こんなにも私はそなたの事を思っているのに何故お前は答えてくれぬのだ!と私を抱きしめようと私の方へ足を進め寝室へと入って私の身体を貪る様に求めて来た。 私はその場を動く事が出来ず彼にされるがままで居た。何も考えず何も感じずただ空に浮かぶ月を見つめ、事が済むのを待った。満足したのか彼は自分の屋敷へと帰った、去り際にまた明日も来るから…と言い残して。不安でしかない、震えが止まらない。
 朝が来て、不意にお庭を歩いていると若い庭師と目が合った。庭師はハッとして頭を下げた。そんな彼に私はクスッと笑い 仕事を続けて下さいな、それと後で私に庭に咲いてる花を持ってきてはくれませんか? と優しい口調で言う。庭師は驚いた顔をしていたが分かりました!と答え作業を再開した。
少しして、庭師が花を持って私の部屋へと来た。その手には、白い花が握られていた。私は侍女にお茶とお菓子そして花瓶を持ってくるようにと伝えると、侍女はスタスタと頼んだ物を取りに行く。侍女が帰ってくる間に、私の話し相手になってほしいと頼み、部屋へ上げた。庭師と私が談笑していると侍女が戻ってきてお茶とお菓子を二人の間に置いたそれを食べながら彼は優しく外の様子を教えてくれた。それが唯一の私の安らぎの時だった……しかし、それも長くは続かなかった……笑顔も声を発する事を自分にはしなかったっと帝が庭師に嫉妬しその夜、帝は強引に婚儀を行うと言い出し、家臣たちが明日の宵に出来ると伝える。帝はそれまでは部屋から出る事を禁じ、門の前に見張りを置いた……。
そして、帝は婚儀が終わったら私が外に出る事を禁じると言った。
それを聞いてからどれ程の時が過ぎたのだろう…私は出された食事にも菓子にも手を付けず外を見ていた。気付くと空には蜜のような満月が上っていて、婚儀の為に用意された服を着せようと侍女達が並んでいた。帝との婚儀を終わってしまったら部屋から出ることは叶わなくなる……最後にこの好きだった景色を見たいと願い、侍女はそっと帝の準備が終わるまでの間ならと目を瞑ってくれた。最後となる庭の散歩をしていると物陰から1人動く人影が……それは紛れもなく庭師だった。私は庭師に近づきここに来てはならないのにどうして?と尋ねると庭師がどうしてもこの華を貴女に渡したかった と両手に抱えていたその華を私に手渡した。その華は月の光に映える白く甘い香りをさせていた。きっと、帝は貴女を幸せにしてくれますよ。俺は離れた所であなたの事を見てますよ。幸せになって下さい……と涙を堪えながら言う彼の手を取り、私は貴方と一緒にいたい!でも、帝はそれを許しはしない…ならこうするしかないの…と私は庭師に短刀を渡して、最後のお願いをした。
その短刀で…私を…〇〇くれますか?
私は、そっと彼に問う。彼は出逢った頃のようにハッとして居たが、言葉の意味が分かると涙を流していたが微笑み 貴女が望むのなら… と答えて手に持っていた短刀を私の胸へと突き刺した。倒れて行く私を庭師は支え、薄れ行く意識の中 ありがとう…最後に愛したのがあなたで良かった…もし…来世…が…あった…ら…私を…貴方の…と言うと庭師は 必ず貴女を見つける!そしたら嫁にするからと言った、その言葉にすっと一雫の涙が私の目から流れ、短刀へ零れ落ち永遠の眠りについた。
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