LUNAPROJECT

瑞希

文字の大きさ
1 / 2

月華

しおりを挟む

 私は、人を愛する事が出来ない。私が愛した人はすぐに私の元から離れてるから……こんな悲しい事が起きるのならと自分の手で感情を無くした。そんな私を帝は そなたの事が好きになった。我が妻になれ!と書簡が来た。私は、その申し出を受けるかどうか決める為に条件を出した。それは、一年間毎夜私の邸へ来る事。帝は飽きっぽいとの噂は聴いていたのできっと諦めるだろうと思っていた。
しかし、彼は私に色々な話しや珍しいものを送ってきたりして私の興味を引こうとして来たが私は声を発する事もニコリと笑う事もせずその贈り物や話しを聞いていた。そんな私に彼は、こんなにも私はそなたの事を思っているのに何故お前は答えてくれぬのだ!と私を抱きしめようと私の方へ足を進め寝室へと入って私の身体を貪る様に求めて来た。 私はその場を動く事が出来ず彼にされるがままで居た。何も考えず何も感じずただ空に浮かぶ月を見つめ、事が済むのを待った。満足したのか彼は自分の屋敷へと帰った、去り際にまた明日も来るから…と言い残して。不安でしかない、震えが止まらない。
 朝が来て、不意にお庭を歩いていると若い庭師と目が合った。庭師はハッとして頭を下げた。そんな彼に私はクスッと笑い 仕事を続けて下さいな、それと後で私に庭に咲いてる花を持ってきてはくれませんか? と優しい口調で言う。庭師は驚いた顔をしていたが分かりました!と答え作業を再開した。
少しして、庭師が花を持って私の部屋へと来た。その手には、白い花が握られていた。私は侍女にお茶とお菓子そして花瓶を持ってくるようにと伝えると、侍女はスタスタと頼んだ物を取りに行く。侍女が帰ってくる間に、私の話し相手になってほしいと頼み、部屋へ上げた。庭師と私が談笑していると侍女が戻ってきてお茶とお菓子を二人の間に置いたそれを食べながら彼は優しく外の様子を教えてくれた。それが唯一の私の安らぎの時だった……しかし、それも長くは続かなかった……笑顔も声を発する事を自分にはしなかったっと帝が庭師に嫉妬しその夜、帝は強引に婚儀を行うと言い出し、家臣たちが明日の宵に出来ると伝える。帝はそれまでは部屋から出る事を禁じ、門の前に見張りを置いた……。
そして、帝は婚儀が終わったら私が外に出る事を禁じると言った。
それを聞いてからどれ程の時が過ぎたのだろう…私は出された食事にも菓子にも手を付けず外を見ていた。気付くと空には蜜のような満月が上っていて、婚儀の為に用意された服を着せようと侍女達が並んでいた。帝との婚儀を終わってしまったら部屋から出ることは叶わなくなる……最後にこの好きだった景色を見たいと願い、侍女はそっと帝の準備が終わるまでの間ならと目を瞑ってくれた。最後となる庭の散歩をしていると物陰から1人動く人影が……それは紛れもなく庭師だった。私は庭師に近づきここに来てはならないのにどうして?と尋ねると庭師がどうしてもこの華を貴女に渡したかった と両手に抱えていたその華を私に手渡した。その華は月の光に映える白く甘い香りをさせていた。きっと、帝は貴女を幸せにしてくれますよ。俺は離れた所であなたの事を見てますよ。幸せになって下さい……と涙を堪えながら言う彼の手を取り、私は貴方と一緒にいたい!でも、帝はそれを許しはしない…ならこうするしかないの…と私は庭師に短刀を渡して、最後のお願いをした。
その短刀で…私を…〇〇くれますか?
私は、そっと彼に問う。彼は出逢った頃のようにハッとして居たが、言葉の意味が分かると涙を流していたが微笑み 貴女が望むのなら… と答えて手に持っていた短刀を私の胸へと突き刺した。倒れて行く私を庭師は支え、薄れ行く意識の中 ありがとう…最後に愛したのがあなたで良かった…もし…来世…が…あった…ら…私を…貴方の…と言うと庭師は 必ず貴女を見つける!そしたら嫁にするからと言った、その言葉にすっと一雫の涙が私の目から流れ、短刀へ零れ落ち永遠の眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜

かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。 徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。 堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる…… 豊臣家に味方する者はいない。 西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。 しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。 全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

ある国立学院内の生徒指導室にて

よもぎ
ファンタジー
とある王国にある国立学院、その指導室に呼び出しを受けた生徒が数人。男女それぞれの指導担当が「指導」するお話。 生徒指導の担当目線で話が進みます。

処理中です...