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月蝶
しおりを挟む夢を見た。私が何処かの庭で死ぬ夢……とても怖いはずなのにとても心が穏やかでどこか懐かしい。何なのだろうと考えていると、行き良いよく襖が開き世話役が数人入って来て私に着物やら髪を結ったりして来た。あっという間に私は皆が憧れるであろう姫へと変わり、口々に姫様はいつ見てもお美しゅうございます。等と飽き飽きする様な事を言っている、まるでそれしか言えないからくり人形だと心の中で呟いた。そんな私に、世話役の1人が近付いてきて、御母上とお父様がお呼びです。と謁見の間へと連れて行った。そこには父と母が座っており、父がお前の結婚相手が決まった……相手はこの国の帝だ!お前の噂を聞いて是非ともと言っている。お前はほんに良い娘だと大喜び、横に居る母を見ると、少し不安そうな顔で私を見ていました。私は、父上に少し考えさせて欲しいとお願いをし部屋へ戻りました。部屋に戻る際に母上と話がしたいと世話役に言い、庭にある荒屋で母上と話す事になりました。荒屋で待っていると、母上が1人でやって来ました。その姿を見た私は一目散に母上の胸へと抱きついて泣きました。母上もそんな姿を見て私の背中をぽんぽんと撫でてくれました。ひとしきり泣いた私に母上はたった一言……不安なのですね。と言い、母上が刺している短刀を私に見せて来た。そこには美しい華が描かれておりこの短刀には言い伝えが有ると教えてくれました。その内容はまさに今朝見た夢と同じだったのです。もし、不安な事があったらこの短刀を思い出しなさい……そうすればきっと大丈夫 と言い荒屋を出て行きました。1人残った私に1羽の蝶が止まりました。その蝶は月の光の様に柔らかな白い蝶でその蝶を見ていると心が軽くなる様な感覚になりました。
数日して、私は父上にお見合いを受けることを伝えました。母上は決めたのですね……と微笑みながら目で私に言い私も、行ってまいりますと答えました。婚礼当日、帝はやっと私を見ることが出来ると嬉しそうにまだかまだかと待っておりました。控え室でこの日の為にと用意された打掛けを着た自分の姿を見ていると、急に不安な気持ちになりました。私は母上から貰った短刀をぎゅっと握り締め怖くない……怖くない……と言い聞かせました。すっと、襖が開きそこに居たのは私の幼なじみでした。私は平静を装って「どうしたの?もうすぐ婚礼の時間かしら?」と聴くと彼は眉をひそめて「そんな震えているのに平静を装ってるなよ。俺には分かってるんだからな…」とギュッと抱き締めてくれました。その温もりに、私の秘めていた想いが溢れ涙と共に本音を吐露しました。本当は嫁ぎたくない事、幼馴染である彼の事を好いていた事をそれを聴いた帝の使者は急いで帝の元へと走りました。その足音に気付いた彼は、私に「逃げよう!」と言い、私の手を引いて走り出しました。私が逃げ出したと使者から知らされた帝は怒り、何がなんでも私を手に入れる、一緒に逃げた彼を亡き者にしても良いと息巻いておりました。その名により帝の連れて来た兵はもちろん、父上までもが敵になりました。
私達は逃げに逃げて、神殿へと逃げ込みました。外からは開けろ開けろ!と怒号が響き、帝がそなたが私の物になればその男は見逃してやろう……と言い父上も帝の物になりなさい!父に恥を欠かすな!と言いました。痺れを切らした父上は家来に火を放てと言い、火を放ちました。神殿は火に包まれこの部屋に燃え移るのも時間の問題でした。彼は「もう良いよ、俺とお前じゃ住む世界が違うんだ。俺はお前と一緒には居られないけどずっとお前を思っている……それだけは忘れるな」と私の手を離し閂を取ろうとしました。しかし、私は彼の手を握り、持っていた短刀を彼に渡しました。「この短刀で私を〇〇して!私は心から愛した人と添い遂げたいの!だからお願い……逃げられないのなら貴方の手で私を終わらして……」初めは拒んでいた彼も私が本気である事を知ると「分かった……もし来世でも逢えたら、きっと……」と
彼は涙を流しながらも私の胸に短刀を突き刺した。すると何処からかあの白い蝶が現れ短刀の上へと停りスっと消えて行きました。……意識が少しずつ遠くなる……ああ、前世の私もこんな気持ちだったんだ!ようやく分かった……と安堵して私は永遠の眠りに着きました。
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