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○第五章「道具」
しおりを挟むそうして三度、人形屋へ。
すると、早速という具合に店主のお出迎えが始まった。
「お一人様入りま~す! はい喜んで~!」
「……居酒屋?」
思わず冷静に突っ込んでしまったけど……この人、本当に何がしたいんだろう。
と、そこで店主は僕の傍らにあった、トランクケースに気がついたようだ。
「む? その様子だとまた壊してしまったようだな。今度は何が原因かね」
原因か……僕も、それを昨日一日、じっくり考えた。
色々と思いつく事はあった。例えば、そもそもの属性の選択を間違えたから、とか。
今回の属性は、『都会のギャル』だった。
何でそんな属性にしたかって言えば、仮に僕がまた欲望に負けてしまっても、この属性の人形なら、余り抵抗なく受け入れてくれるかも、とか思ったからだ。
けど現実には、『都会のギャル』という属性を持った人形は、人間として面白みに欠ける僕を見下すだけだった。
そして結末は……このとおりだ。
だから、恐らく根本的な原因はーー
「たぶん……彼女を作ろうとしたことが原因だと思います」
「と言うと?」
「どうやっても、彼女そのものは作れないから……だから僕の思い出や気持ちも、同じようにはならないんじゃないかと。それで最終的には欲望をぶつけるか……もしくは、同じ顔や声なのに、僕の知っている彼女と全然違う事をされて、許せなくなるかのどっちかに」
と、僕の話を聞いた店主は、納得したように小さく頷いた。
「なるほど……では、もう新しい人形はいらんかね?」
「はい。それに……持ってたお金も、二体の人形を買った事で大分減ってしまいましたから」
「ふむ……ならば私から、一つだけ提案がある」
「え?」
少々意外な言葉に、思わず店主の顔を見詰めてしまう。
と、その目線にはどこか……僕を試すような雰囲気を感じた。
「もう一体人形を用意しよう。特別仕様の、だ。それをお主に預ける」
「で、でも僕はもう――」
「最後まで話を聞いてくれたまえ。その人形をお主が受け入れられるかどうか、一週間様子を見よう。そしてお主が受け入れられると感じたら、代金を払ってくれたまえ。受け入れられず、壊してしまったのなら……お金は要らない」
正直、意味が分からない。店主にとっては殆どメリットのない話だ。何でそんな提案を?
と、そう思う一方で……僕の胸の中には、ある種の渇きのようなものが湧き上がっていた。
「……そ、そんな……そんな条件でいいんですか? 例えまた欲望をぶつけるだけぶつけて壊しても、お金を払わないって事ですよ?」
すると店主は、そんな僕の渇きを見抜いたかのように、ニヤリと笑った。
「そうなるねえ、だが恐らくお主は、次の人形を壊さない」
「なぜ?」
「お主は恐らく無意識に、人形達を道具として捉えている。だからこそ壊してきた。どうせまた作れる、そう思っていたはずだ」
「え……」
「人形達が何処からきてるか、大体察しはついているだろう? 体毛を提出した時点で予想がついていたはずだ」
「は、はあ……けど、僕は――」
「倫理やら道徳心やらは今は無視したまえ。クローンという、紛れもなく生きているコピーを、お主は道具と同列に扱った。これは事実だ。代えが利くという一種の甘えが、お主を極端な行動に走らせた、そうだろう?」
「………はい」
認めたくはないけど、店主の言うとおりだ……僕は心のどこかで彼女達を道具として見ていて……だからこそ、欲望のままに動けてしまったのだ。
「だから、お主に特別な人形を預ける。お主はそれを壊せない。なぜなら……」
「なぜなら……?」
「それが最後の人形だからだ」
「え……?」
「お主から預かった体毛から作れるのは、三体が限度だ。その内二体をお主は壊した。オリジナルは既に死亡しているわけだから、次が正真正銘最後の人形という事になる」
「……次が、最後……」
「さて……どうする?」
「………」
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