3 / 34
第一章
贄 三
しおりを挟む
みなほの生まれた家は、古くは村の長の血筋の家だった。
村の名と同じ 上岡という姓を称していた。今の村長も同じ一族の末で、姓は同じである。みなほの家のほうが本流だった。
集落の他の家に比すればずいぶんと構えの大きな「上岡の 上の屋敷」と呼ばれるその屋敷には、今の村長の工兵衛一家が住まう。
村の一番奥の山を少し上がった、鎮守の社の傍らに、屋敷はあった。
村長に引き取られるまでのみなほの住まいは、屋敷の塀の北側の脇。屋敷に比べれば納屋のようにも見える小さく粗末な建物である。
そこに、父と母と兄と姉と弟と、住んでいた。
家族が居たのは、みなほには遠い過去の事になる。家族は死に絶えた。
みなほは、八歳のとき独りになった。
独りになった後、上の屋敷の使用人たちが、雑穀の粥をみなほに朝夕に一椀ずつ与えてくれた。裏口で、犬の子に餌を与えるようなものだった。それが村長の指示だった。
その粥の冷たさはみなほだけしか知らない。
慈悲深いことよ、と村の人々は村長のことをたたえた。
彼等の慈悲とは、暖を取れと薪や藁を与えつつ、火打ち石を与え忘れるような仕業だった。
社の外を風が通る。
僅かな隙間からか、ふと吐息のような風が静かに髪を一筋、撫でて社の中から去った。
龍彦の手がみなほの胸の微かな膨らみを掴む。その指先が尖った蕾を弾いた。その感触に、みなほはびくりと膝を縮めた。
「ここが尖っている……。快いと感じているからだ」
違うか、言いながら何度もその蕾を弾き、強く摘んだ。
「い……や! ちが……」
「違うものか。認めよ。そして委ねるのだ」
「あぁ……っ!」
摘まれ、潰されて、みなほは背中を跳ねるように反らす。
「何を恥じらう? ここには儂とそなたしか居らぬ。誰も、……見てはいない」
「……う……く」
目の前に龍彦の美しい顔が迫る。唇を、奪われている。舌が絡め取られている。ぬめりとしたその感触が、みなほの身体をざわめかせた。
「何を守って頑なな顔をするか。……溶けてしまえ」
龍彦の手がみなほの帯に掛る。ほどいている。
「愉悦に、酔え。歓喜に悶えよ。……悦び、狂え。その姿が、その気色が、祈りになる」
神であろうか。魔のような囁きをみなほは悪寒とともに聞いた。
腕を押さえていた龍彦の手が、下降した。唇を貪るまま、両手がみなほの胸の膨らみを揉みしだく。痛いほど尖ったその頂きに触れ、磨り潰すように摘む。痛みのようであり、違う。違う感覚が、みなほの体内に灯る。
「ふ、……ぁ……あ」
弾かれたように膝を縮め、腿をより合わせた。その下肢が外気を覚える。絹に包まれていたはずのその肌が、身悶えている内に露呈した。
「怖がるな」
「……や!」
撚り合わせた腿の間に、龍彦の手が忍び入る。戦慄を帯びながらみなほはその手を押さえた。だが抗いの力にもならぬ。
「いや、……いや、お願い」
波打つみなほの身体を龍彦の腕が押さえている。もう一方の手が、ひそと閉じた小さな門を探る。入り口を見いだそうとするように、そろりと撫でた。
みなほが息を詰めて身体を強張らせる。
「委ねよ」
耳元に龍彦の声がする。彼の手が、みなほを触れている。
指先がみなほの花弁を開き、下から上へと繰り返しなぞっていく。円を描くように触れたとき、同時に龍彦の歯が胸の蕾を甘く噛む。みなほが身体を跳ね上げた。
身体に這入る物を知る。あらぬところにそれを覚え、みなほは凍えたように縮まった。
「やだ……! 痛い」
薄く開いた目で、あり得ぬ箇所に龍彦の指先を含んだ姿を見た。愕然と目を背ける。おびえ、凍えた。
「怖い! ……痛い、怖い!」
身体の其処が、触れ得る場所であることも知らない。
開かれることなどあろうと思ったこともない。内側をまさぐられる感覚が、ひどくみなほを混乱させた。
恐慌に泣いた。
「みなほ……」
「……嫌……」
嗚咽するみなほに低い声で龍彦が言う。
「力を抜くのだ……。痛いようにはせぬ」
「……あ、……ぁ……」
青白い光を帯びた瞳が、みなほの濡れた瞳を捉えて見据える。
人ならざる、この龍彦という存在は、何か。
身体に触れる、肌は。
怖い。
だが美しい。
「……そうだ、みなほ」
龍彦の手がみなほの額を撫で上げる。
「そなたの快いようにする……」
さあ、と呟いて、龍彦はみなほにまた唇を重ねる。唾液を与えるように、舌を、差し入れて絡めた。
裸体にされたみなほは、龍彦の下で身をくねらせた。彼の手が花芯に触れる。痛いようにはせぬ、と言われ、疑うような気持ちでいる。が、嘘ではないかもしれぬと思い始めた。
退いた龍彦の指先を、みなほの蜜が糸を引いて追った。
「……それで、良い」
「あぁ……っ」
高い声を恥じる。唇を手の甲で覆い、抑えた。
身体にまた彼の指を含んだ。腹の中にかっと熱が灯る。先ほどより奥へなめらかに侵入者が滑り込む。己から溶け出す物がそうしているのだと、悟ってみなほは恥ずかしくなる。
「良い。……なめらかになった」
「……こ、んな……」
嫌、と龍彦の唇に訴えた。
くちゅりくちゅりと水音が耳に聞こえる。その音色が、みなほを出入りする龍彦の指の動作と和している。身体が、立てる音なのだと気づき、ますます恥じらいを覚えた。
「は、……恥ずかし、いっ……!」
体内に熱が灯る。触れられる感応がますます熱を高め、内に籠もり始めた。どうすれば、この熱を解き放てるのか。戸惑っているうちにどんどん高まる。
あらぬ声で啼きながら、みなほは首を振り、肩を浮かせて身をよじる。背を反らし、顎を跳ね上げて身悶えた。それでも、まだ。
肌が熱い。汗が湧く。
「みなほ、良いぞ……。可愛い姿だ」
「や、あぁ……!」
「さあ、……」
果てよ、と龍彦が言った。
それまで触れられなかった、秘裂の上を飾る芽を、龍彦の親指が弾く。
つむじまで雷が通ったように痺れ、みなほは高い悲鳴を上げて身体を痙攣させていた。
「や、はぁ……っ! はぁ……!」
爆ぜたような意識から少し戻っても、残った震えがみなほの呼吸を乱し続ける。
(……何……? 何が、起きているの……?)
ぼう、と霞んだ瞳で、微笑む龍彦の姿を捉えた。整って美しい面差しに、僅かに紅を刷いたような昂ぶりをそこに見た。
「ひととせ、祈りは通じたことだろう」
「あ……?」
龍彦の言葉の意味が、みなほには解らない。
村の名と同じ 上岡という姓を称していた。今の村長も同じ一族の末で、姓は同じである。みなほの家のほうが本流だった。
集落の他の家に比すればずいぶんと構えの大きな「上岡の 上の屋敷」と呼ばれるその屋敷には、今の村長の工兵衛一家が住まう。
村の一番奥の山を少し上がった、鎮守の社の傍らに、屋敷はあった。
村長に引き取られるまでのみなほの住まいは、屋敷の塀の北側の脇。屋敷に比べれば納屋のようにも見える小さく粗末な建物である。
そこに、父と母と兄と姉と弟と、住んでいた。
家族が居たのは、みなほには遠い過去の事になる。家族は死に絶えた。
みなほは、八歳のとき独りになった。
独りになった後、上の屋敷の使用人たちが、雑穀の粥をみなほに朝夕に一椀ずつ与えてくれた。裏口で、犬の子に餌を与えるようなものだった。それが村長の指示だった。
その粥の冷たさはみなほだけしか知らない。
慈悲深いことよ、と村の人々は村長のことをたたえた。
彼等の慈悲とは、暖を取れと薪や藁を与えつつ、火打ち石を与え忘れるような仕業だった。
社の外を風が通る。
僅かな隙間からか、ふと吐息のような風が静かに髪を一筋、撫でて社の中から去った。
龍彦の手がみなほの胸の微かな膨らみを掴む。その指先が尖った蕾を弾いた。その感触に、みなほはびくりと膝を縮めた。
「ここが尖っている……。快いと感じているからだ」
違うか、言いながら何度もその蕾を弾き、強く摘んだ。
「い……や! ちが……」
「違うものか。認めよ。そして委ねるのだ」
「あぁ……っ!」
摘まれ、潰されて、みなほは背中を跳ねるように反らす。
「何を恥じらう? ここには儂とそなたしか居らぬ。誰も、……見てはいない」
「……う……く」
目の前に龍彦の美しい顔が迫る。唇を、奪われている。舌が絡め取られている。ぬめりとしたその感触が、みなほの身体をざわめかせた。
「何を守って頑なな顔をするか。……溶けてしまえ」
龍彦の手がみなほの帯に掛る。ほどいている。
「愉悦に、酔え。歓喜に悶えよ。……悦び、狂え。その姿が、その気色が、祈りになる」
神であろうか。魔のような囁きをみなほは悪寒とともに聞いた。
腕を押さえていた龍彦の手が、下降した。唇を貪るまま、両手がみなほの胸の膨らみを揉みしだく。痛いほど尖ったその頂きに触れ、磨り潰すように摘む。痛みのようであり、違う。違う感覚が、みなほの体内に灯る。
「ふ、……ぁ……あ」
弾かれたように膝を縮め、腿をより合わせた。その下肢が外気を覚える。絹に包まれていたはずのその肌が、身悶えている内に露呈した。
「怖がるな」
「……や!」
撚り合わせた腿の間に、龍彦の手が忍び入る。戦慄を帯びながらみなほはその手を押さえた。だが抗いの力にもならぬ。
「いや、……いや、お願い」
波打つみなほの身体を龍彦の腕が押さえている。もう一方の手が、ひそと閉じた小さな門を探る。入り口を見いだそうとするように、そろりと撫でた。
みなほが息を詰めて身体を強張らせる。
「委ねよ」
耳元に龍彦の声がする。彼の手が、みなほを触れている。
指先がみなほの花弁を開き、下から上へと繰り返しなぞっていく。円を描くように触れたとき、同時に龍彦の歯が胸の蕾を甘く噛む。みなほが身体を跳ね上げた。
身体に這入る物を知る。あらぬところにそれを覚え、みなほは凍えたように縮まった。
「やだ……! 痛い」
薄く開いた目で、あり得ぬ箇所に龍彦の指先を含んだ姿を見た。愕然と目を背ける。おびえ、凍えた。
「怖い! ……痛い、怖い!」
身体の其処が、触れ得る場所であることも知らない。
開かれることなどあろうと思ったこともない。内側をまさぐられる感覚が、ひどくみなほを混乱させた。
恐慌に泣いた。
「みなほ……」
「……嫌……」
嗚咽するみなほに低い声で龍彦が言う。
「力を抜くのだ……。痛いようにはせぬ」
「……あ、……ぁ……」
青白い光を帯びた瞳が、みなほの濡れた瞳を捉えて見据える。
人ならざる、この龍彦という存在は、何か。
身体に触れる、肌は。
怖い。
だが美しい。
「……そうだ、みなほ」
龍彦の手がみなほの額を撫で上げる。
「そなたの快いようにする……」
さあ、と呟いて、龍彦はみなほにまた唇を重ねる。唾液を与えるように、舌を、差し入れて絡めた。
裸体にされたみなほは、龍彦の下で身をくねらせた。彼の手が花芯に触れる。痛いようにはせぬ、と言われ、疑うような気持ちでいる。が、嘘ではないかもしれぬと思い始めた。
退いた龍彦の指先を、みなほの蜜が糸を引いて追った。
「……それで、良い」
「あぁ……っ」
高い声を恥じる。唇を手の甲で覆い、抑えた。
身体にまた彼の指を含んだ。腹の中にかっと熱が灯る。先ほどより奥へなめらかに侵入者が滑り込む。己から溶け出す物がそうしているのだと、悟ってみなほは恥ずかしくなる。
「良い。……なめらかになった」
「……こ、んな……」
嫌、と龍彦の唇に訴えた。
くちゅりくちゅりと水音が耳に聞こえる。その音色が、みなほを出入りする龍彦の指の動作と和している。身体が、立てる音なのだと気づき、ますます恥じらいを覚えた。
「は、……恥ずかし、いっ……!」
体内に熱が灯る。触れられる感応がますます熱を高め、内に籠もり始めた。どうすれば、この熱を解き放てるのか。戸惑っているうちにどんどん高まる。
あらぬ声で啼きながら、みなほは首を振り、肩を浮かせて身をよじる。背を反らし、顎を跳ね上げて身悶えた。それでも、まだ。
肌が熱い。汗が湧く。
「みなほ、良いぞ……。可愛い姿だ」
「や、あぁ……!」
「さあ、……」
果てよ、と龍彦が言った。
それまで触れられなかった、秘裂の上を飾る芽を、龍彦の親指が弾く。
つむじまで雷が通ったように痺れ、みなほは高い悲鳴を上げて身体を痙攣させていた。
「や、はぁ……っ! はぁ……!」
爆ぜたような意識から少し戻っても、残った震えがみなほの呼吸を乱し続ける。
(……何……? 何が、起きているの……?)
ぼう、と霞んだ瞳で、微笑む龍彦の姿を捉えた。整って美しい面差しに、僅かに紅を刷いたような昂ぶりをそこに見た。
「ひととせ、祈りは通じたことだろう」
「あ……?」
龍彦の言葉の意味が、みなほには解らない。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです
沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる