婚約破棄された友人。ことを収めたと思ったら、なぜか皇子から言い寄られるのですが

たぬきねこ

文字の大きさ
7 / 31

第7話

しおりを挟む
 ランドガリアン!
 ・・・・私が魔獣を見たのはこれが初めてだった。それもこんなまじかな距離で。

 大きな爬虫類のような口、その口には尖った牙が沢山あり、その手足にも鋭い爪がついている。

「きゃあああぁぁぁぁ!!」
「うわあぁぁ・・・」
「逃げろ! ここにいると危ないぞ!」

 講堂内に避難している生徒たちの悲鳴が木霊する。

「アリス様・・・」
 魔獣は怖い! でもアリス様とミューラー殿下だけでも、この場から逃がさないといけない。
 たとえこの身がどうなろうとも・・・そうですよねニール様。

「ここは自分らが食い止めます。殿下は早く脱出を!」

 教師の何人と護衛の騎士が勇敢にも魔獣の前に立ちはだかった。

「済まない・・・後は任せた」
 ミューラー殿下はそう呟いて、魔獣と反対側に走りだした。

 私とアリス様、大勢の生徒がそれに続いた。
 
 逃げる私たちの後ろから悲鳴が聞こえてくる。
 狭い講堂の入り口に大勢の生徒が殺到していた。
 魔法で応戦している者もいたが、足止めにもなっていない。

 そこへ騎士団が遅れて到着した。

「今のうちに屋外に逃げるんだ!」
「はいっ!」
 私たちもなんとか屋外に逃げだすことができた。
 
 屋外には多くの騎士たちが講堂を囲むように集結していた。
 あの紋章は王都の守護騎士団と第二騎士団?

「殿下! よくぞご無事で」
 ミューラー殿下の姿を見つけた騎士の小隊が私たちを保護してくれた。
 これで私たち助かったの?
 でもまだ安心するのは早い。魔獣は生きているのだから。

 安心した私をあざ笑うかのように、轟音は辺りに響き渡った。
 破壊された講堂の外壁、まっすぐ伸びる炎の渦。

「まさかブレスか! 各員抜刀! 魔獣が出てくるぞ!」
 
 講堂からゆっくりと姿を現した魔獣、あんなのどうやって倒すのよ。

「各員攻撃開始!」
 攻撃魔法が次々に魔獣に命中していく。
 爆発音と土煙が魔獣を包み込んだ。

「やったか?」
 だが土煙から魔獣が姿を現した。
 その姿は傷つき全身ボロボロだった。だが目は鋭いままこちらを睨んでいる。
 
「まだ動けるの?・・・えっ!?」
 魔獣の驚愕の生命力に驚くまもなく、魔獣がこちらに向かってくる。
 なんでこっちにくるのよ。
 周囲を囲むように騎士たちがいるが、なんでこっちに?
 講堂でも私たちを狙ってきたような・・・まさか狙いは私たち? いや狙いは殿下かしら?
 
 だとしたら殿下のそばが一番危ないってことになる。この場から離れるべき? いやいやそれはダメでしょ。
 私たちは殿下をお守りしないといけないのよ。

「殿下は避難を!」
 避難指示を飛ばす騎士の眼前にまで魔獣が迫ってきていた。

 もはや逃げれることはできない。
 ・・・でも怖い! 魔獣の恐ろしい姿を見て足がすくんで動かない。
 誰か助けて! 
 助けてニール様!

 魔獣が私のそばまでやってきた。

 怖い! 助けてお父様! 助けてニール様!

 私の前に魔獣の鋭い爪が迫ってきた。

 私は死を予感した。


 死を予感して目を瞑ったが、一向に痛みが襲ってこない。
 それとも痛みを伴わないうちに死んだの?

 あれ? 私・・・まだ生きてる。
 ・・・私を呼ぶ声が聞こえる。
 この声は?
 この声は誰?
 聞き覚えのある声。

「ルシア! 早く逃げるんだ!」
 
 おそるおそる目を開けた私の眼前には、魔獣の爪を剣で受け止めたニール様の姿があった。

「ニール様!」
 ああっ、ニール様だ。私のピンチを救ってくれたのはニール様だった。
 よかった。まだ無事だったんだのですね。
 よかった。ホントに良かった。

「ルシア! 何してる早く逃げるんだ!」

「足が・・・足がすくんで動けないの・・・」
 ニール様が生きてた。安心したら足がすくむどころか、腰が抜けちゃった。

「きゃっ!」
 魔法攻撃が再開され、その一瞬の隙に私はニール様に抱きかかえられた。

 これはまさか・・・お姫様だっこというものではなかろうか。
 あわわわわ・・・私、ニール様にお姫様抱っこされてる。
 幻ではなく、本物のニール様に抱きかかえられた私、超恥ずかしい・・・でも同時に凄い嬉しい。

 好意のある男性に抱きかかえられて、喜ばない女性なんていないわよね。
 もう私の愛しい気持ちが溢れ出しそうです。
 ああっ、なんて幸せな瞬間なのでしょう。
 
 ニール様・・・私のニール様。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

処理中です...