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第8話
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「ルシアさん・・・ルシアさん・・・」
ああニール様の声だわ。
「ルシア! いい加減にしなさい!」
あれ? この声はアリス様? いくらアリス様でも、この幸せな時間を奪わないで・・・・。
「痛っ!」
ぺシンと誰かに頭を叩かれて我に返った私。アリス様? なんで叩かれたの?
「ルシア! ニール様が困っているでしょう。いい加減に離れなさい!」
アリス様に言われて自分の姿を確認した。
ニール様にお姫様だっこされたまま、私もしっかりとニール様に抱きついていた。
それはもうしっかりと、ニール様の首に手を回し引き寄せるようにしがみついていた。
「アハハハハ」
騎士たちとアリス様の前でなんてことを・・・恥ずかしすぎて苦笑いが自然に出てしまった。
周りの騎士たちも温かい目で私たちを見てくる。
ここが戦場でなかったら、どんなに良かったのでしょうか。
私がニール様から降りたその頃、時を同じくして魔獣が遂に倒れた。
勝利の歓声に沸く騎士団の方々。私たちも大歓声に包まれた。
恐ろしかった魔獣も遂に倒され、ニール様もアリス様も無事だった。
亡くなった学生や教師、学園の関係者、騎士の皆様には申し訳ないけど、ホントに良かった。
「まったく、こんなとこでイチャついて。ルシア良かったわね」
「アリス様・・・そのごめんなさい」
「ルシア。いいのよ謝らなくても。あなたもニール様も殿下も無事だったのだから喜びましょう」
「はいっ! アリス様ありがとうございます」
「それより、これは後始末も大変そうね」
「ですね・・・講堂は半壊しているし、きっと校庭も同様でしょうね」
辺りを見回してもそれはもう酷いありさまだった。
「殿下、後はお任せを。 誰か殿下を王宮までお送りして差し上げろ」
騎士団長らしき立派な鎧を着た騎士と殿下だ。
「ルシアさん。殿下を送って行かなくてはいけませんのでここでお別れです。ルシアさんもアリス様も早くお帰りください」
「そうね。ニール様も殿下をよろしくお願いしますね。あの方は私のことなど気にしていないでしょうから・・・」
「アリス様・・・・」
なんともいたたまれない空気が・・・どうするのよこれ。
「ではルシアさんも気を付けて」
「はい。ニール様もありがとうございました」
「殿下がまってるから行くね」
ニール様は去り際に私の頭を撫でながら去っていった。
もう! 子ども扱いして! そこはハグやキスでしょ。
でもそこがニール様らしくて、ちょっと嬉しかった。
「アリス様、私たちも行きましょう」
「そうね」
騎士たちは現場検証や瓦礫の撤去、負傷者の捜索など忙しそうだが貴族である私たちのやることはない。
学園の入り口には多くの人だかりができていた。
魔獣の噂はすでに学園の外まで広がっているようだった。
ふたつの騎士団が召集されたのだから、民が不安に思うのも無理はない。
馬車の駐車場には、大きの馬車が並んおり列ができていた。
王家や公爵家の馬車は優先されており、殿下も馬車に乗り込もうとしているところだった。
あれは何かしら? 近くの大きな木の上、そこに光るモノに目を凝らした。
太陽の日差しに反射したクロスボウの矢?・・・顔を隠したいかにも怪しい人物が狙うは殿下? まさか暗殺!?
「危ない! 伏せてぇ!」
私の叫びとともに放たれた矢。
私の声に反応したニール様が、ミューラー殿下を突き飛ばす形になって倒れ込んだ。
ここからでは、人の陰になってどうなったか分からない。
「きゃああぁぁ!」
近くの女生徒の悲鳴が聞こえてきた。
まさか! よくない感じがする。
「ニール様!」
私はニール様のもとに急いで駆け寄った。
「早く手当てを! 止血を急ぐんだ!」
そこには腹に矢を受けたニール様が倒れていた。
矢は抜かれていたが、出血が止まらない。
「いやああぁぁぁぁぁぁ!!」
惨状を見て、錯乱した私の魂の叫びが辺りに木霊した。
ああニール様の声だわ。
「ルシア! いい加減にしなさい!」
あれ? この声はアリス様? いくらアリス様でも、この幸せな時間を奪わないで・・・・。
「痛っ!」
ぺシンと誰かに頭を叩かれて我に返った私。アリス様? なんで叩かれたの?
「ルシア! ニール様が困っているでしょう。いい加減に離れなさい!」
アリス様に言われて自分の姿を確認した。
ニール様にお姫様だっこされたまま、私もしっかりとニール様に抱きついていた。
それはもうしっかりと、ニール様の首に手を回し引き寄せるようにしがみついていた。
「アハハハハ」
騎士たちとアリス様の前でなんてことを・・・恥ずかしすぎて苦笑いが自然に出てしまった。
周りの騎士たちも温かい目で私たちを見てくる。
ここが戦場でなかったら、どんなに良かったのでしょうか。
私がニール様から降りたその頃、時を同じくして魔獣が遂に倒れた。
勝利の歓声に沸く騎士団の方々。私たちも大歓声に包まれた。
恐ろしかった魔獣も遂に倒され、ニール様もアリス様も無事だった。
亡くなった学生や教師、学園の関係者、騎士の皆様には申し訳ないけど、ホントに良かった。
「まったく、こんなとこでイチャついて。ルシア良かったわね」
「アリス様・・・そのごめんなさい」
「ルシア。いいのよ謝らなくても。あなたもニール様も殿下も無事だったのだから喜びましょう」
「はいっ! アリス様ありがとうございます」
「それより、これは後始末も大変そうね」
「ですね・・・講堂は半壊しているし、きっと校庭も同様でしょうね」
辺りを見回してもそれはもう酷いありさまだった。
「殿下、後はお任せを。 誰か殿下を王宮までお送りして差し上げろ」
騎士団長らしき立派な鎧を着た騎士と殿下だ。
「ルシアさん。殿下を送って行かなくてはいけませんのでここでお別れです。ルシアさんもアリス様も早くお帰りください」
「そうね。ニール様も殿下をよろしくお願いしますね。あの方は私のことなど気にしていないでしょうから・・・」
「アリス様・・・・」
なんともいたたまれない空気が・・・どうするのよこれ。
「ではルシアさんも気を付けて」
「はい。ニール様もありがとうございました」
「殿下がまってるから行くね」
ニール様は去り際に私の頭を撫でながら去っていった。
もう! 子ども扱いして! そこはハグやキスでしょ。
でもそこがニール様らしくて、ちょっと嬉しかった。
「アリス様、私たちも行きましょう」
「そうね」
騎士たちは現場検証や瓦礫の撤去、負傷者の捜索など忙しそうだが貴族である私たちのやることはない。
学園の入り口には多くの人だかりができていた。
魔獣の噂はすでに学園の外まで広がっているようだった。
ふたつの騎士団が召集されたのだから、民が不安に思うのも無理はない。
馬車の駐車場には、大きの馬車が並んおり列ができていた。
王家や公爵家の馬車は優先されており、殿下も馬車に乗り込もうとしているところだった。
あれは何かしら? 近くの大きな木の上、そこに光るモノに目を凝らした。
太陽の日差しに反射したクロスボウの矢?・・・顔を隠したいかにも怪しい人物が狙うは殿下? まさか暗殺!?
「危ない! 伏せてぇ!」
私の叫びとともに放たれた矢。
私の声に反応したニール様が、ミューラー殿下を突き飛ばす形になって倒れ込んだ。
ここからでは、人の陰になってどうなったか分からない。
「きゃああぁぁ!」
近くの女生徒の悲鳴が聞こえてきた。
まさか! よくない感じがする。
「ニール様!」
私はニール様のもとに急いで駆け寄った。
「早く手当てを! 止血を急ぐんだ!」
そこには腹に矢を受けたニール様が倒れていた。
矢は抜かれていたが、出血が止まらない。
「いやああぁぁぁぁぁぁ!!」
惨状を見て、錯乱した私の魂の叫びが辺りに木霊した。
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