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導きの魔女と美しき女王
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目が覚めるほどの美人、てホントにいるのね。
いろいろ思い浮かべたが、とどのつまり魔女の思うことはそれだった。
瑞々しい肌、艶やかな長い髪、豊かな胸、魅惑的な曲線を描く身体―――身にまとわりつく毒の気配はいただけないが、どこぞのエロ蛇が何千年でも悦んで見つめるだろう。
魔女も素直に綺麗だなと思える姿だった。だが、羨ましいとは思わなかった。
魔女が見つける前から女はさめざめと泣くばかりだったから。
せっかくの美人でもこんなに泣きはらすハメになるなら、容姿端麗てのも考えものね。
それとも美人ならではってカンジのお悩みかしら。男がうじゃうじゃ集まって相手するのが大変!とか、どの男も素敵で一人に決められないの…とか?あぁ!アタシは心から愛してるのに男が信じてくれないの~っなんてどうよ?
……………にしてもよく泣くわね。
涙の量がずっと適正量続いてることも脱帽だけど、いーかげん見飽きたわ。
この間の小男は怖かったけど、ベソベソ女も鬱陶しいわ~………
魔女はおもむろにため息をついて、口を開く。
「そうやって泣いてても、ここには私しかいないから無駄だと思うけど」
女はしゃくりあげながら頭を巡らし、少し離れて突っ立っている魔女を見つけた。
半分は意図的に泣いていたのだと思っていた魔女は、申し訳なさそうに首を竦めた。
「あんた美人だからさ。なんか助けが必要で泣いてるのかと思ったんだけど―――悪かったわよ、意地の悪い言い方で」
女は目を見開いたままふるふると首を振る。
驚いた顔も綺麗だ。笑ったら、大輪の花が咲いたような笑顔、とか賞されるに違いない。
女は指で涙を拭いながら辺りを見渡す。
「わたくしは、いつの間にここに………ここは、天国でしょうか?」
「まぁ、そうとも言える、かな」
天国、という響きが恥ずかしくて魔女は視線を逸らす。
女は嬉しそうに身を乗り出した。
「まぁ!ではわたくしは神の御前に参ることができるのですね?」
「いや、まだあんた死んでないから。人間だからいつかは死ぬけど、それは今じゃないね」
女は途端に落胆し、たちまち目尻に涙が溢れる。
まぁいいや。こっちへおいでよと魔女は女を立たせ、手招きしながら歩く。
いずれ帰るにしても、ここでバカみたいに泣いても仕方ない。お喋りでもしようよ。
木の下に敷物を敷くと魔女は適当にお茶の仕度をして、ここに座りなと敷物を叩いた。
「大体さ、自分で毒飲むなんて自害じゃん。それで神の前行ったっていーことにはならないんじゃない?」
女は哀しそうにそれでも良いのですと囁いた。
現世は、もう堪えられないのです。
「なんで」
魔女の短い問いに、女はぽつりぽつりと話し出した。
「わたくしはわたくしの民のために女王であり続けたかった。でも、わたくしの現在の夫はわたくしもわたくしの国も民も己のための道具としてしか見ていない。夫の民にはもちろん、わたくしの民にさえわたくしの声は届かず、すべて夫の思うがまま。わたくしはもう、生きる望みがないのです」
ふぅん、と魔女はお茶を飲む。
「死にたいってのは今更どうしようもないけど。なんでまた効き目遅い毒なんか選ぶの。じわじわやたら時間かかって、長く苦しいのはあんたなんだよ」
お茶で喉を潤した女は微かに苦笑する。
「ただ死ぬのは簡単です。でもわたくしは………あの夫に、一矢報いたかった。夫は、わたくしの死すら民を動かす道具にするでしょう。それが嫌だったのです。虫の息でも夫に一言言ってやりたかった」
「心なんてそもそもない、身体にも食指が動かない女が恨み言のオンパレードしたところで痛くも痒くもないんじゃない?」
魔女のなげやりな言葉に、一瞬キョトンとしてから女はそうですねと肩を落とした。
「………現状に耐えられないとはいえ、愚かなことをしました」
「そうしなきゃと思い詰めてたんなら、仕方ないさ」
魔女も首を竦める。
自分だってヒトのことは言えない。
あの小男に導きは届いたのか―――――
「そもそもさ、旦那に一言言うなら本人がダメージ喰らうのはもちろん、周りの人間がついついネタにしちゃいたくなる悪口をオンパレードしなくちゃ。旦那の性癖とか、女の趣味のクセがすごいとか。一握りの人間が知ってるかどうかレベルのコンプレックスとか、イメージ戦略上ひた隠しに隠したいけど止められない趣味とか―――なんかないの?」
べらべら挙げる魔女を呆然と見つめて、女はありませんと首を振った。
「知りません―――夫は、わたくしの話も聞いてくれませんでしたが、自分のことも話さない人でした」
うわ勿体ないと魔女は舌打ちする。
「そんだけ外面ブ厚いならぜーったいツッコみ甲斐ありそうなところ山のようにあるはずなのに!高貴な美人さんは意趣返しも綺麗にしようとするから、結局意味ないことになってんじゃんか」
お茶の残ったカップを両手で持ったまま、はぁと女は呆けた相槌を打った。
「そうだよ!せっかく美人なんだからあんたに見向きしない旦那なんて放っておいて、剣でも頭でも使えそうな男をわんさかたらしこめば良かったじゃん!」
なんでしなかったのと息巻く魔女に女は咎めるような目を向けた。
「そのようなふしだらなこと………」
「―――ソウデスネ」
自殺する人間に窘められる魔女ってどーなの?
遠い目をする魔女をよそに女は考え込むような目をした。
「それに、わたくしが初めて婚姻したのは、わたくしの立場を妹から守るためでした。わたくしの国の者を頼ることができず、他の国の若い王に頼らざるを得なかったのです。だから―――その王の国の強者なら、と思ってしまったのです」
国が同じなら考え方も同じ、なんてことないのに。女の国にも女を支えようとする猛者の一人や二人いたろうに。
つくづく勿体ない。
「なんなら妹に女王やらせれば良かったんじゃない?」
女は静かに答える。
「あの時玉座を渡していれば、わたくしの未来は変わったでしょう。でも当時はあの妹に玉座を渡してはいけないと思った。あの子はわたくしのモノならなんでも欲しがったのです。ドレスも髪飾りも」
女は遠い目をした。
「最期に見た妹は、鉄の檻に入れられて民の罵声や石を浴びていました。今の夫の言葉で、わたくしもいずれそうなるでしょう。それが堪えられずにわたくしは自害を―――」
「―――じゃあさ。腹いせの一つに死因紛らわしくするってどうよ?」
「は?」
女は再び目を丸くする。
こんな顔も美人なのに、それを活用できないなんて。つくづく残念な女だ。
「毒で死ぬのは変わらないけど、毒は飲むだけじゃないじゃん?それっぽい傷つけりゃ、旦那の手の者に殺られた!とか騒いでくれるかもよ?」
「そんなに上手くいくでしょうか?」
「んー………あんたの死後すぐに必ずそうなるとは言えないけど、あんたの当初の予定よりはマシだと思う」
ベクトルはマイナスだけど姿勢は前向きだし。
「なんと言っても美人はとにかく話のネタになるからねっ。死後何年経っても人間はあんたの話をしたがるよ。そんで旦那に不名誉な話が人間たちの間で流行っても、当の旦那は否定できないのさ。考えるとワクワクしないかい?」
魔女の悪戯めいた笑い顔につられて呆然としていた女も破顔した。
ふと思い当たって、せっかくの綺麗な身体に傷つけていいのと聞くと、女はあっさり首を振った。
「だってもうすぐ死ぬのですから」
「それもそうか」
女が差し出した腕の一部をさっと撫でる。ごく小さな丸く黒い穴が二つ開いていた。
魔女が座り直すと、ありがとうございますと女が晴れやかに笑った。
「これで心穏やかに死ねます」
「まぁ、自殺は自殺だからね。神にいろいろ言われるのは覚悟しといた方がいいよ」
はい、と笑って頷く。
その笑顔は、魔女が最初にぼんやり思ったように、光が溢れるほど美しかった。
茶器やお菓子を避けて魔女は寝転がる。
このまま昼寝の続きもいいなぁ………
一度目を閉じるが顔に影が射すのを感じ、目を開ける。
影になって表情は解らないが―――
「なんだ、来てたの」
「うん」
やたら素直に頷く。何か悪いものでも食べたのか?
「もう少し早く来てれば、すんごい美人とお話できたのに。残念ねー」
大男は無言で空いている場所に座り、お菓子を物色する。
「驚いても呆れても崩れないなんて、ホントすごい美形だったわ。顔だけじゃないわよ。胸もたゆんたゆんで腰がこぉキュッと締まってて。あんたの好きそーな美人だったわ」
「毒がまわった女なんか不味くて喰えるか」
仏頂面で言い捨ててシードケーキを掴み口に放り込む。
軽口をたたくことなくただ黙々とお菓子を食べお茶を飲む。
不機嫌でも具合いが悪いわけでもなさそうだけど、一体どうしたというのだ。
「やっぱ自殺はさ、魂の浄化時間かかるかな」
「殺人者よりは短いが、長くかかるな」
寝転がったまま、考えを巡らせる。
「―――その方がいーのかもね。本人は忘れてるだろうけどさ。遠く離れた時代と場所で、今度は玉座とか関係なくて、自分のことちゃんとみてくれるヒトと会ってほしいよね」
せっかくここまで来て自分と話したのだ。
今生で導きが間に合わない分、来世の希望を願いたい。
大男が無言なのが気になって、起き上がる。
大男はまじまじと魔女を見ていた。
「………………なに。自分でもガラじゃないな~って思うけど、思ったんだからいーじゃん」
気持ち身を退きながら言うと、はぁぁぁぁぁっ!と息を吐いて後ろ頭をガシガシと掻き乱した。
「……………俺は今、ものすごく後悔している」
「…………………………なんで」
「……………お前を魔女と呼んだのは、失敗だったかもしれん」
「え。今さらなんで?」
「うるさいっ!もういいから、食え!そんで昼寝してろ!」
「はぁぁぁぁっ!?なにソレっ。ワケ解んないんですけどっ」
魔女と大男の言い合いは、しばらく辺りに響き渡った。
いろいろ思い浮かべたが、とどのつまり魔女の思うことはそれだった。
瑞々しい肌、艶やかな長い髪、豊かな胸、魅惑的な曲線を描く身体―――身にまとわりつく毒の気配はいただけないが、どこぞのエロ蛇が何千年でも悦んで見つめるだろう。
魔女も素直に綺麗だなと思える姿だった。だが、羨ましいとは思わなかった。
魔女が見つける前から女はさめざめと泣くばかりだったから。
せっかくの美人でもこんなに泣きはらすハメになるなら、容姿端麗てのも考えものね。
それとも美人ならではってカンジのお悩みかしら。男がうじゃうじゃ集まって相手するのが大変!とか、どの男も素敵で一人に決められないの…とか?あぁ!アタシは心から愛してるのに男が信じてくれないの~っなんてどうよ?
……………にしてもよく泣くわね。
涙の量がずっと適正量続いてることも脱帽だけど、いーかげん見飽きたわ。
この間の小男は怖かったけど、ベソベソ女も鬱陶しいわ~………
魔女はおもむろにため息をついて、口を開く。
「そうやって泣いてても、ここには私しかいないから無駄だと思うけど」
女はしゃくりあげながら頭を巡らし、少し離れて突っ立っている魔女を見つけた。
半分は意図的に泣いていたのだと思っていた魔女は、申し訳なさそうに首を竦めた。
「あんた美人だからさ。なんか助けが必要で泣いてるのかと思ったんだけど―――悪かったわよ、意地の悪い言い方で」
女は目を見開いたままふるふると首を振る。
驚いた顔も綺麗だ。笑ったら、大輪の花が咲いたような笑顔、とか賞されるに違いない。
女は指で涙を拭いながら辺りを見渡す。
「わたくしは、いつの間にここに………ここは、天国でしょうか?」
「まぁ、そうとも言える、かな」
天国、という響きが恥ずかしくて魔女は視線を逸らす。
女は嬉しそうに身を乗り出した。
「まぁ!ではわたくしは神の御前に参ることができるのですね?」
「いや、まだあんた死んでないから。人間だからいつかは死ぬけど、それは今じゃないね」
女は途端に落胆し、たちまち目尻に涙が溢れる。
まぁいいや。こっちへおいでよと魔女は女を立たせ、手招きしながら歩く。
いずれ帰るにしても、ここでバカみたいに泣いても仕方ない。お喋りでもしようよ。
木の下に敷物を敷くと魔女は適当にお茶の仕度をして、ここに座りなと敷物を叩いた。
「大体さ、自分で毒飲むなんて自害じゃん。それで神の前行ったっていーことにはならないんじゃない?」
女は哀しそうにそれでも良いのですと囁いた。
現世は、もう堪えられないのです。
「なんで」
魔女の短い問いに、女はぽつりぽつりと話し出した。
「わたくしはわたくしの民のために女王であり続けたかった。でも、わたくしの現在の夫はわたくしもわたくしの国も民も己のための道具としてしか見ていない。夫の民にはもちろん、わたくしの民にさえわたくしの声は届かず、すべて夫の思うがまま。わたくしはもう、生きる望みがないのです」
ふぅん、と魔女はお茶を飲む。
「死にたいってのは今更どうしようもないけど。なんでまた効き目遅い毒なんか選ぶの。じわじわやたら時間かかって、長く苦しいのはあんたなんだよ」
お茶で喉を潤した女は微かに苦笑する。
「ただ死ぬのは簡単です。でもわたくしは………あの夫に、一矢報いたかった。夫は、わたくしの死すら民を動かす道具にするでしょう。それが嫌だったのです。虫の息でも夫に一言言ってやりたかった」
「心なんてそもそもない、身体にも食指が動かない女が恨み言のオンパレードしたところで痛くも痒くもないんじゃない?」
魔女のなげやりな言葉に、一瞬キョトンとしてから女はそうですねと肩を落とした。
「………現状に耐えられないとはいえ、愚かなことをしました」
「そうしなきゃと思い詰めてたんなら、仕方ないさ」
魔女も首を竦める。
自分だってヒトのことは言えない。
あの小男に導きは届いたのか―――――
「そもそもさ、旦那に一言言うなら本人がダメージ喰らうのはもちろん、周りの人間がついついネタにしちゃいたくなる悪口をオンパレードしなくちゃ。旦那の性癖とか、女の趣味のクセがすごいとか。一握りの人間が知ってるかどうかレベルのコンプレックスとか、イメージ戦略上ひた隠しに隠したいけど止められない趣味とか―――なんかないの?」
べらべら挙げる魔女を呆然と見つめて、女はありませんと首を振った。
「知りません―――夫は、わたくしの話も聞いてくれませんでしたが、自分のことも話さない人でした」
うわ勿体ないと魔女は舌打ちする。
「そんだけ外面ブ厚いならぜーったいツッコみ甲斐ありそうなところ山のようにあるはずなのに!高貴な美人さんは意趣返しも綺麗にしようとするから、結局意味ないことになってんじゃんか」
お茶の残ったカップを両手で持ったまま、はぁと女は呆けた相槌を打った。
「そうだよ!せっかく美人なんだからあんたに見向きしない旦那なんて放っておいて、剣でも頭でも使えそうな男をわんさかたらしこめば良かったじゃん!」
なんでしなかったのと息巻く魔女に女は咎めるような目を向けた。
「そのようなふしだらなこと………」
「―――ソウデスネ」
自殺する人間に窘められる魔女ってどーなの?
遠い目をする魔女をよそに女は考え込むような目をした。
「それに、わたくしが初めて婚姻したのは、わたくしの立場を妹から守るためでした。わたくしの国の者を頼ることができず、他の国の若い王に頼らざるを得なかったのです。だから―――その王の国の強者なら、と思ってしまったのです」
国が同じなら考え方も同じ、なんてことないのに。女の国にも女を支えようとする猛者の一人や二人いたろうに。
つくづく勿体ない。
「なんなら妹に女王やらせれば良かったんじゃない?」
女は静かに答える。
「あの時玉座を渡していれば、わたくしの未来は変わったでしょう。でも当時はあの妹に玉座を渡してはいけないと思った。あの子はわたくしのモノならなんでも欲しがったのです。ドレスも髪飾りも」
女は遠い目をした。
「最期に見た妹は、鉄の檻に入れられて民の罵声や石を浴びていました。今の夫の言葉で、わたくしもいずれそうなるでしょう。それが堪えられずにわたくしは自害を―――」
「―――じゃあさ。腹いせの一つに死因紛らわしくするってどうよ?」
「は?」
女は再び目を丸くする。
こんな顔も美人なのに、それを活用できないなんて。つくづく残念な女だ。
「毒で死ぬのは変わらないけど、毒は飲むだけじゃないじゃん?それっぽい傷つけりゃ、旦那の手の者に殺られた!とか騒いでくれるかもよ?」
「そんなに上手くいくでしょうか?」
「んー………あんたの死後すぐに必ずそうなるとは言えないけど、あんたの当初の予定よりはマシだと思う」
ベクトルはマイナスだけど姿勢は前向きだし。
「なんと言っても美人はとにかく話のネタになるからねっ。死後何年経っても人間はあんたの話をしたがるよ。そんで旦那に不名誉な話が人間たちの間で流行っても、当の旦那は否定できないのさ。考えるとワクワクしないかい?」
魔女の悪戯めいた笑い顔につられて呆然としていた女も破顔した。
ふと思い当たって、せっかくの綺麗な身体に傷つけていいのと聞くと、女はあっさり首を振った。
「だってもうすぐ死ぬのですから」
「それもそうか」
女が差し出した腕の一部をさっと撫でる。ごく小さな丸く黒い穴が二つ開いていた。
魔女が座り直すと、ありがとうございますと女が晴れやかに笑った。
「これで心穏やかに死ねます」
「まぁ、自殺は自殺だからね。神にいろいろ言われるのは覚悟しといた方がいいよ」
はい、と笑って頷く。
その笑顔は、魔女が最初にぼんやり思ったように、光が溢れるほど美しかった。
茶器やお菓子を避けて魔女は寝転がる。
このまま昼寝の続きもいいなぁ………
一度目を閉じるが顔に影が射すのを感じ、目を開ける。
影になって表情は解らないが―――
「なんだ、来てたの」
「うん」
やたら素直に頷く。何か悪いものでも食べたのか?
「もう少し早く来てれば、すんごい美人とお話できたのに。残念ねー」
大男は無言で空いている場所に座り、お菓子を物色する。
「驚いても呆れても崩れないなんて、ホントすごい美形だったわ。顔だけじゃないわよ。胸もたゆんたゆんで腰がこぉキュッと締まってて。あんたの好きそーな美人だったわ」
「毒がまわった女なんか不味くて喰えるか」
仏頂面で言い捨ててシードケーキを掴み口に放り込む。
軽口をたたくことなくただ黙々とお菓子を食べお茶を飲む。
不機嫌でも具合いが悪いわけでもなさそうだけど、一体どうしたというのだ。
「やっぱ自殺はさ、魂の浄化時間かかるかな」
「殺人者よりは短いが、長くかかるな」
寝転がったまま、考えを巡らせる。
「―――その方がいーのかもね。本人は忘れてるだろうけどさ。遠く離れた時代と場所で、今度は玉座とか関係なくて、自分のことちゃんとみてくれるヒトと会ってほしいよね」
せっかくここまで来て自分と話したのだ。
今生で導きが間に合わない分、来世の希望を願いたい。
大男が無言なのが気になって、起き上がる。
大男はまじまじと魔女を見ていた。
「………………なに。自分でもガラじゃないな~って思うけど、思ったんだからいーじゃん」
気持ち身を退きながら言うと、はぁぁぁぁぁっ!と息を吐いて後ろ頭をガシガシと掻き乱した。
「……………俺は今、ものすごく後悔している」
「…………………………なんで」
「……………お前を魔女と呼んだのは、失敗だったかもしれん」
「え。今さらなんで?」
「うるさいっ!もういいから、食え!そんで昼寝してろ!」
「はぁぁぁぁっ!?なにソレっ。ワケ解んないんですけどっ」
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