俺TUEEEの【転生魔術師】~ほのぼの暮らしながらも陰から仲間の復讐を支援します~

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第2章 魔術学園編

17話 試験開始とティアナの実力

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 特別試験の当日。
 
 早朝のホームルームで、教壇に立つサーシャが試験の概要とルールのおさらいをしていく。
 生徒たちは黙って耳を傾けている。
 退学がかかった試験なのだから当然と言えば当然だろう。
 そんな緊張感が張り詰めた教室で、俺はアリスとの話を思い返していた。


 アリス・ナーダによる調査。
 俺がアリスに頼んでから十日と経っていないにも関わらず、かなりの詳細までを調べきっていた。
 アリスが凄いのか、バキュロスとやらの謎の組織が凄いのかは定かではない。どちらにせよ、俺が進級させると決めた二人の美少女。その素性をある程度把握することが出来たのは幸いだ。

 マリア・アーガネット──西都の元伯爵家の令嬢。

 ティアナ・シス──西都の元男爵家の養女。

 二人とも貴族家系ときたものだからビックリしたのだが、今はただのクラスメイトである。
 二人を進級させると決めたのは、何も二人が美少女だからではない。ティアナに関しては異世界に来て初めて知り合った仲間であるし、情たるものも多少あるのは否定しない。だが、そんな軽いものではない。

 俺が進級までサポートすると決めた基準。
 それは──強いかどうかである。
 弱いものを無理に進級させても意味がない。ローレン魔術学園は二年制だ。
 進級して二年生になっても、実力が適当でなければ卒業出来ないだろうしな。

 マリアの実力に関して言えば申し分ない。常に授業でも優秀な生徒だ。
 ティアナは実力を隠しているが、彼女も確実に強いだろう。実は入学試験のときには既にその確信を持っていた。

 俺がティアナと初めて出会ったのは森の中だ。
 あの時は見抜けなかったが、俺たちが出会ったのは偶然ではない。彼女の目的をはばかり知ることは出来ないが、間違いなくティアナは意図を待って俺へ近づいた。

 彼女を追っていたモンスターは目を負傷していた。古い傷ではなかった。恐らくティアナによって被った傷だろう。
 要は全てティアナによる演出なのだ。
 モンスターに襲われているか弱い少女を演じたのだ。

 よくよく考えれば、あの時、俺に助けを求めてきたこと自体がおかしい。
 助けを求めたのが、見てくれから強そうだとわかるぐらいの魔術剣士や魔道士なら分かる。俺はどちらにも当てはまらない。ただの小柄な少年である。

 彼女が何故俺に近づいたのかはわからない。俺の実力を試すためだったのかもしれないし、他の意図があったのかもしれない。
 いづれにせよ彼女は確信があったのだ。

 ────大型のモンスターを自分で抹殺できると。

 それ以外にも不審な点はあった。
 タームの怪我を回復魔法で治した際、詠唱の類を唱えていなかった。
 これは魔術学園に入ってから知りえた知識だが、詠唱破棄による魔法の発動はレベルが高いようだ。

 最も、俺がティアナに対し不信感を持ったのは、試験終了の際に彼女と合流したときだ。
 俺は力を制御出来ずに大地震を起こしてしまった。受験生たちや観覧席の親たちも動揺を隠せなかった出来事を、ティアナは一言も触れずにスルーした。

 本当にか弱い少女なら、何らかのリアクションがあって然るべきだ。しかし彼女は平然としていた。
 魔術学園の試験にも上手く誘導されてしまっていたのかもしれない。

 どちらにせよ、ティアナとマリアの実力はD組の中でも一つ頭を出ている。
 俺が進級のためのサポートなどしなくても問題ないのかもしれないが……。

 サーシャの話では、D組からの進級者は十年間で一人。

 進級率はほぼゼロに等しい。
 実力以外に何らかの要因があると考えた方がよさそうか────。


「では、試験会場に向かうぞ」

 サーシャの合図で、俺たちは特別試験が行われる学園敷地内にあるダンジョンとやらへ一斉に移動したのだ。
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