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第二章
373
エニグマが愉悦の笑みを浮かべて高笑いする。
彼が嘲笑うのは人間社会か、それとも人間そのものか。
両方だろう。どちらも彼からすれば嘲笑すべき対象なのだろう。
そして、僕にとっても。
「君の言う通りだよ。地獄は人間界にこそある。そして悪魔とは……僕にとっては両親だった」
僕の言葉を受け、エニグマが笑うのを止めた。
そして、僕を見据えて静かに言う。
「だから殺した?」
僕はゆっくりと瞼を閉じる。
そして考える。あのときのことを。
「そうだね。だから殺した。その通りだ。施設から連れ帰らされたあの日。案の定僕は、これまでにない苛烈な暴力の渦に襲われた」
「帰ってすぐにかい?」
「ああ。家に帰るまでは決して彼らは仮面を脱がなかった。ずっと冷たい笑みをその顔に張り付けていた」
「ほう、なかなか」
エニグマが感心したように言う。
「家に帰るまでは、周囲の目があるからね。彼らは示し合わせていたんだろうと思う」
「それで、帰った早々暴力を?」
「思い出すのも恐ろしいほどの暴力が、僕を待ち受けていた。彼らは口々に僕を罵った。お前のせいで恥をかかされただの、お前のせいでどれだけ苦労をしたかだの、散々に罵りながら、彼らは僕を散々に殴りつけ、蹴り上げた」
「殴られるがままかい?」
「勝てっこないよ。僕の父親だった男はとても大柄で、丸太のような腕をしていたんだ」
「今の君とは違うか」
「そうだね。今の僕なら、一瞬だね。いや、あのときも一瞬だったよ」
エニグマが眉尻を跳ね上げ、斜に構える。
「どういうこと?勝てっこないんじゃなかったの?」
僕は軽く息を吐き出す。
「力では勝てない。でも……道具があった」
「ほう、それは?」
「包丁だよ。キッチンにあった包丁で、僕は父親を刺したんだ」
するとエニグマが不可解な顔をした。
「一瞬のうちに父親を刺したのかい?彼はとても大柄だったんだろう?刺せるものなのかい?」
僕はそのときのことを思い出し、軽く笑ってしまった。
「こちらの世界と違って、あちらの世界は平和なんだ。だから包丁を自分に向けて構えられることなんて、ほぼないんだよ」
エニグマが少しだけ驚いた表情をする。
「敵と戦うときがあるだろう?」
「ほとんどないね。喧嘩ならあるけど、ほぼ素手だね。武器を持って戦った経験のある人なんて、ほとんどいないよ」
エニグマが懐疑的な表情となった。
「それは本当の話かい?」
僕は大きくうなずいた。
「全部本当だよ。契約しているんだ。嘘を言ったら胸が締め付けられるんじゃないのか?」
エニグマはまだ信じられない表情のままだ。
「確かに、契約が効いている以上、嘘はつけないが……とても信じられない話だね」
彼が嘲笑うのは人間社会か、それとも人間そのものか。
両方だろう。どちらも彼からすれば嘲笑すべき対象なのだろう。
そして、僕にとっても。
「君の言う通りだよ。地獄は人間界にこそある。そして悪魔とは……僕にとっては両親だった」
僕の言葉を受け、エニグマが笑うのを止めた。
そして、僕を見据えて静かに言う。
「だから殺した?」
僕はゆっくりと瞼を閉じる。
そして考える。あのときのことを。
「そうだね。だから殺した。その通りだ。施設から連れ帰らされたあの日。案の定僕は、これまでにない苛烈な暴力の渦に襲われた」
「帰ってすぐにかい?」
「ああ。家に帰るまでは決して彼らは仮面を脱がなかった。ずっと冷たい笑みをその顔に張り付けていた」
「ほう、なかなか」
エニグマが感心したように言う。
「家に帰るまでは、周囲の目があるからね。彼らは示し合わせていたんだろうと思う」
「それで、帰った早々暴力を?」
「思い出すのも恐ろしいほどの暴力が、僕を待ち受けていた。彼らは口々に僕を罵った。お前のせいで恥をかかされただの、お前のせいでどれだけ苦労をしたかだの、散々に罵りながら、彼らは僕を散々に殴りつけ、蹴り上げた」
「殴られるがままかい?」
「勝てっこないよ。僕の父親だった男はとても大柄で、丸太のような腕をしていたんだ」
「今の君とは違うか」
「そうだね。今の僕なら、一瞬だね。いや、あのときも一瞬だったよ」
エニグマが眉尻を跳ね上げ、斜に構える。
「どういうこと?勝てっこないんじゃなかったの?」
僕は軽く息を吐き出す。
「力では勝てない。でも……道具があった」
「ほう、それは?」
「包丁だよ。キッチンにあった包丁で、僕は父親を刺したんだ」
するとエニグマが不可解な顔をした。
「一瞬のうちに父親を刺したのかい?彼はとても大柄だったんだろう?刺せるものなのかい?」
僕はそのときのことを思い出し、軽く笑ってしまった。
「こちらの世界と違って、あちらの世界は平和なんだ。だから包丁を自分に向けて構えられることなんて、ほぼないんだよ」
エニグマが少しだけ驚いた表情をする。
「敵と戦うときがあるだろう?」
「ほとんどないね。喧嘩ならあるけど、ほぼ素手だね。武器を持って戦った経験のある人なんて、ほとんどいないよ」
エニグマが懐疑的な表情となった。
「それは本当の話かい?」
僕は大きくうなずいた。
「全部本当だよ。契約しているんだ。嘘を言ったら胸が締め付けられるんじゃないのか?」
エニグマはまだ信じられない表情のままだ。
「確かに、契約が効いている以上、嘘はつけないが……とても信じられない話だね」
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