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第二章
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「ほう、それはどう違うんだね?」
エニグマの問いに、僕は記憶を引っ張り出して答える。
「この世界に転移した直後の記憶では、確か、車の方が歩道にいた僕に向かって突っ込んできたという風に記憶していたように思う。そのときの映像的な記憶もある。車のヘッドランプが僕を照らし、と同時に甲高いブレーキ音が鳴り響く。そしてガードレールを切り裂く金属同士の衝突音。あの記憶の中の僕は、確かに歩道側にいた」
「だが実際は違った」
「ああ。警察から逃れるために、僕の方が車道に飛び出してしまったはずだ」
「ふむ、それはとても興味深いな」
僕自身もほんとうに興味深い。前の人格が持つ記憶と、今の人格が持つ記憶が何故違う?
それは、恐らく――
「たぶん、脳が改ざんしたんだろうと思う」
「改ざん?」
「ああ。僕にとって都合の悪い情報だったから、映像記憶ごと脳が書き換えたんだろうと思う」
「つまり、君が車道に飛び出した本当の記憶のままだと、そこから紐づけされて、親殺しの記憶までたどり着いてしまうから、脳が改ざんしたってことかい?」
エニグマはかなり頭が切れる。地球に関する情報は、僕が与えたものしかないはずなのに、ここまでの理解力を示せるということは、相当だ。
注意しなければならない。
だけど今、僕の二つの記憶や人格の入れ替わりに関しての考察をする際には、この頭の良さは役に立つ。
「たぶん、君の言う通りだと思う」
「だとすると、すでに人格は入れ替わっていたということになるのかな?」
僕はそのときのことを思い起こしながら、エニグマの問いに答えた。
「かもしれないし、入れ替わりの途中だったかもしれないね」
エニグマが納得の表情を浮かべた。
「なるほど。そのときに君の脳が別人格を作り出していたということか」
「たぶん、そんなところじゃないかと思っている」
「しかし、脳というのもずいぶんと器用だな。そんなに都合よく別人格を作り上げることが出来るとは」
僕は記憶を呼び起こす。
「……おそらくだけど、ベースがある」
「ベース?」
「ああ。別人格のベースとなるものに心当たりがある」
「ほう、それは一体なんだい?」
「漫画の主人公だと思う」
エニグマが眉根を寄せて首を傾げる。
「なんだね、それは?」
「あちらの世界にある書物さ。物語を絵で表現しているんだ」
「ふむ。こちらの世界にある絵本とは違うのかい?」
「多少違うけど、まあ似たようなものさ。基本的には子供向けに書かれた物語で、僕が好きだったのは、異世界転移ものだった」
エニグマの問いに、僕は記憶を引っ張り出して答える。
「この世界に転移した直後の記憶では、確か、車の方が歩道にいた僕に向かって突っ込んできたという風に記憶していたように思う。そのときの映像的な記憶もある。車のヘッドランプが僕を照らし、と同時に甲高いブレーキ音が鳴り響く。そしてガードレールを切り裂く金属同士の衝突音。あの記憶の中の僕は、確かに歩道側にいた」
「だが実際は違った」
「ああ。警察から逃れるために、僕の方が車道に飛び出してしまったはずだ」
「ふむ、それはとても興味深いな」
僕自身もほんとうに興味深い。前の人格が持つ記憶と、今の人格が持つ記憶が何故違う?
それは、恐らく――
「たぶん、脳が改ざんしたんだろうと思う」
「改ざん?」
「ああ。僕にとって都合の悪い情報だったから、映像記憶ごと脳が書き換えたんだろうと思う」
「つまり、君が車道に飛び出した本当の記憶のままだと、そこから紐づけされて、親殺しの記憶までたどり着いてしまうから、脳が改ざんしたってことかい?」
エニグマはかなり頭が切れる。地球に関する情報は、僕が与えたものしかないはずなのに、ここまでの理解力を示せるということは、相当だ。
注意しなければならない。
だけど今、僕の二つの記憶や人格の入れ替わりに関しての考察をする際には、この頭の良さは役に立つ。
「たぶん、君の言う通りだと思う」
「だとすると、すでに人格は入れ替わっていたということになるのかな?」
僕はそのときのことを思い起こしながら、エニグマの問いに答えた。
「かもしれないし、入れ替わりの途中だったかもしれないね」
エニグマが納得の表情を浮かべた。
「なるほど。そのときに君の脳が別人格を作り出していたということか」
「たぶん、そんなところじゃないかと思っている」
「しかし、脳というのもずいぶんと器用だな。そんなに都合よく別人格を作り上げることが出来るとは」
僕は記憶を呼び起こす。
「……おそらくだけど、ベースがある」
「ベース?」
「ああ。別人格のベースとなるものに心当たりがある」
「ほう、それは一体なんだい?」
「漫画の主人公だと思う」
エニグマが眉根を寄せて首を傾げる。
「なんだね、それは?」
「あちらの世界にある書物さ。物語を絵で表現しているんだ」
「ふむ。こちらの世界にある絵本とは違うのかい?」
「多少違うけど、まあ似たようなものさ。基本的には子供向けに書かれた物語で、僕が好きだったのは、異世界転移ものだった」
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