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第二章
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エニグマが驚きの表情となった。
「異世界転移ものだって?」
エニグマの驚きように、僕は少しだけ笑った。
「ああ。そういうのがあるんだよ。何故かはわからないけど、物語の主人公が異世界に転移してしまって、そこで活躍するっていうジャンルがね」
「ジャンルということは、ひとつだけではないということかい?」
「そうだね。いっぱいあったんだと思う。家にいたときは漫画なんて、到底読ませてもらえなかったから、そういう作品があるってことだけは知っていたけど、読んだことがなくて、施設に入って初めて読んだんだけど、そこにあるだけでもいくつかの作品がそうだったから、世の中にはもっとたくさんあったんだと思う」
「君はその作品が好きだったんだね?」
「大好きだった。夢中で読んだよ。中でもひとつの作品には心を奪われた」
「その作品の主人公が、別人格のベースになったと?」
「たぶんそうだと思う。明るくて、素直で、ポジティブで、とても生命力にあふれていた。僕にとっては憧れの主人公だった」
「なるほどね。その主人公の性格を、君の脳がトレースして、植え付けたといったところかな?」
「そうだと思う」
エニグマがうなずいた。
「なるほど。君の別人格の件は、よくわかったよ」
エニグマの目がスーッと細くなる。
わかっている。エニグマがほんとうに聞きたいのは、別のことだ。
さあ、どうするか。
すると、エニグマが我慢しきれずに口を開いた。
「そのとき、他に何か不思議なことはなかったかい?」
やっぱりだ。
エニグマが知りたいのは、あの謎の声のことなんだ。
さあ、どうするか、言うべきか、それとも――
僕はじっとエニグマを見つめ、しばし考えた。
だがそのとき、突然の胸の痛みが僕を襲った。
「ぐっ!」
まずい。まただ!
僕は思わず胸を手で抑え、腰を折る。
やはり契約が効いている。隠し通すことは出来そうもない。
こうなったらもう、話すしかない。
「わかった。ひとつだけある」
そう言うと、胸の痛みがスーッと引いた。
僕は曲がった腰を元に戻してエニグマを見る。
エニグマは、不敵な笑みを浮かべて僕のことを見つめていた。
「転移した直後ではなかったけど、その後に謎の声を聞いたことがある」
エニグマの目が大きく見開かれた。
愉悦の表情が浮かび上がる。
「そうか、やはり君は謎の声を聞いたんだね?」
大丈夫。あの声のことを言ったところで、僕に不利益なんかないはずだ。
「ああ。その後も何度か聞いたよ。突然、僕の心の中に語り掛けるような声をね」
エニグマはもう興奮が抑えられないといった顔になっている。
「それで奴は……いや、その謎の声は、君になんて語り掛けたんだい?」
「異世界転移ものだって?」
エニグマの驚きように、僕は少しだけ笑った。
「ああ。そういうのがあるんだよ。何故かはわからないけど、物語の主人公が異世界に転移してしまって、そこで活躍するっていうジャンルがね」
「ジャンルということは、ひとつだけではないということかい?」
「そうだね。いっぱいあったんだと思う。家にいたときは漫画なんて、到底読ませてもらえなかったから、そういう作品があるってことだけは知っていたけど、読んだことがなくて、施設に入って初めて読んだんだけど、そこにあるだけでもいくつかの作品がそうだったから、世の中にはもっとたくさんあったんだと思う」
「君はその作品が好きだったんだね?」
「大好きだった。夢中で読んだよ。中でもひとつの作品には心を奪われた」
「その作品の主人公が、別人格のベースになったと?」
「たぶんそうだと思う。明るくて、素直で、ポジティブで、とても生命力にあふれていた。僕にとっては憧れの主人公だった」
「なるほどね。その主人公の性格を、君の脳がトレースして、植え付けたといったところかな?」
「そうだと思う」
エニグマがうなずいた。
「なるほど。君の別人格の件は、よくわかったよ」
エニグマの目がスーッと細くなる。
わかっている。エニグマがほんとうに聞きたいのは、別のことだ。
さあ、どうするか。
すると、エニグマが我慢しきれずに口を開いた。
「そのとき、他に何か不思議なことはなかったかい?」
やっぱりだ。
エニグマが知りたいのは、あの謎の声のことなんだ。
さあ、どうするか、言うべきか、それとも――
僕はじっとエニグマを見つめ、しばし考えた。
だがそのとき、突然の胸の痛みが僕を襲った。
「ぐっ!」
まずい。まただ!
僕は思わず胸を手で抑え、腰を折る。
やはり契約が効いている。隠し通すことは出来そうもない。
こうなったらもう、話すしかない。
「わかった。ひとつだけある」
そう言うと、胸の痛みがスーッと引いた。
僕は曲がった腰を元に戻してエニグマを見る。
エニグマは、不敵な笑みを浮かべて僕のことを見つめていた。
「転移した直後ではなかったけど、その後に謎の声を聞いたことがある」
エニグマの目が大きく見開かれた。
愉悦の表情が浮かび上がる。
「そうか、やはり君は謎の声を聞いたんだね?」
大丈夫。あの声のことを言ったところで、僕に不利益なんかないはずだ。
「ああ。その後も何度か聞いたよ。突然、僕の心の中に語り掛けるような声をね」
エニグマはもう興奮が抑えられないといった顔になっている。
「それで奴は……いや、その謎の声は、君になんて語り掛けたんだい?」
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