１×∞（ワンバイエイト） 経験値１でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました！

第二章

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　僕の問いに、エニグマが一瞬考える素振りをした。

　だがすぐに僕に向き直り、言った。

「気に入らないからさ」

「気に入らないって、何が？」

「存在がだ」

　なるほど。あの謎の声の主は、かなりの実力者らしい。つまりはエニグマよりも遥かに上なのだろう。

　それが気に入らない。理由としては納得できるが――

「他にも上位の神々はいるんじゃないの？悪魔の中にもいるんだろう？」

「そうだね。だけど、奴は特別なんだ」

「どう、特別なんだ？」

「上手く言えない。これは勘のようなものだ。ただ、あまりにも奴は異質なんだ」

「異質っていうのは？」

「すまないが、これも上手く言えないんだよ」

　嘘は――ない。

　というか、エニグマは今、嘘がつけない。

　ならば、本当に上手く言えないんだろう。

　なんとなく異質と感じ、なんとなく特別と思われる存在。

　それが、僕に何故語りかけてくるのか。

「あの声の主は、僕が英雄になることを望んでいるんだよね？」

「それは間違いないと思う。先刻言った鍛冶屋に、何度も剣を取るように言っていたみたいだからね」

「想像でいいんだけど、何故英雄を作ろうとしているんだと思う？」

　エニグマが眉根を寄せ、腕を組んで考え込んだ。

「君はおもしろいことを言うね。何故英雄を作ろうとしているのか……か」

　これは僕に直接かかわることだ。何故僕を英雄にしようとするのか。鍛冶屋もそうしようとしていた。

　何故？

　エニグマが腕を組みながら、かぶりを振った。

「今のところわからないね。だが、いずれ君が英雄として全土に君臨したら、わかるんじゃないかな？」

　全土に君臨？それは――

「どういう意味？」

「決まっている。君は目覚めた。本来の君が内なる世界から顔を出した。ならば、この先君が進む道は決まったようなものだろう」

「僕はこの世界を支配する気なんてないよ」

「どうかな。まだ君は目覚めたばかりだ。混沌としている部分もあるだろう。実際、君の言葉はかなりあやふやだ」

　エニグマがおどけたように言った。

　僕は意味が分からず、問い返す。

「僕の言葉があやふやだって？」

　エニグマは、得意の嫌味な笑みを口元に浮かべた。

「君は僕を恐れている。だから出来るだけ僕の機嫌を損なわないようにしているようだが、ところどころ挑戦的な文言が織り交ぜられている。おそらくだが、君はまだ完全に目覚めてはいないのじゃないか？君が好きだったという物語の主人公はまだ君の中に生きているのだろう。いや、彼と本来の君とが、今はまだ混じり合っている状態なのではないか？僕にはそう思えるのだが？」