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第二章
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「なんとかテイムできたな」
俺は思わず独り言をつぶやいた。
正直危なかった。油断大敵とはこのことだ。今後はどんな敵でも慎重に見極めねばならない。
だがそれよりも――
「レノアー!終わった!来てくれ!」
俺は片膝をついた状態から地面に腰を下ろし、ぱっくりと開いた腹部を右手で抑えながら、叫んだ。
血はどくどくと流れ落ち続けている。かなりの重傷だ。
すると、間もなくレノアたちが全速力で駆けてくるのが見えた。
「大丈夫か!カズマ!」
レノアが必死の形相で走りながら叫ぶ。
「腹を斬られた。治療してもらえるとありがたい」
「わかった!」
レノアは走りながら、背中に背負った冒険者グッズの入ったバッグを下ろし、中から何かを取り出した。
そして俺のすぐ横までたどり着くとすぐさま傷口を確認した。
「ひどいな。かなりの深手だ」
「ああ、ざっくりと斬られたよ」
「だがテイムは完了したみたいだな」
レノアはそう言いつつ、バッグから取り出した瓶の蓋を開けた。
「かなりしみると思うけど、我慢してくれ」
レノアはそう言って瓶の中のどろっとした緑色の液体を、傷口へ大量にぶちまけた。
「ぐっ……」
かなりしみるとは言っていたが、これほどとは……しみるなんてもんじゃないぞ。激痛だ。
だが、情けない声は出せない。俺は必死で痛みを我慢した。
緑色の液体は深紅に染まった傷口にべっとりとまとわりついているように見える。
おそらく回復魔法の効果があるのだろう。
「こいつは最も強力な治癒薬だ。しばらく我慢し続ければ、大きな傷口であっても塞がると思う」
「しばらくって、どれくらいだ?」
俺の問いに、レノアが首を傾げた。
「たぶんだけど、一時間くらいかな」
一時間!?マジか!この痛みが一時間続くのかよ!
俺の表情でも読んだのか、レノアがくすりと笑いながら言う。
「とはいっても、しばらくすれば徐々に痛みは和らいでいくはずだよ」
俺は肩頬を軽く引き攣らせながら返した。
「そ、そうか。それは、ちょっと助かる」
レノアがニタニタと笑う。
「ちょっと~?相当痛いんじゃないの?」
傍らのゼロスも笑っているようだ。
「やせ我慢せずともよい」
俺は少し腹を立て、言い返した。
「別にやせ我慢なんてしてないよ。これくらいの痛み、どうってことないさ」
レノアのニタニタ笑いが止まらない。
「そう~?どう見ても、そうは思えないけど?」
「ふん、こんな傷くらい問題ないね」
「そうかい。本当の君はずいぶんと強情だねえ」
「強情で悪いか」
「悪くなんてないよ。人間味があって大変結構」
レノアはそう言うと、ゼロスと顔を合わせて笑った。
俺は思わず独り言をつぶやいた。
正直危なかった。油断大敵とはこのことだ。今後はどんな敵でも慎重に見極めねばならない。
だがそれよりも――
「レノアー!終わった!来てくれ!」
俺は片膝をついた状態から地面に腰を下ろし、ぱっくりと開いた腹部を右手で抑えながら、叫んだ。
血はどくどくと流れ落ち続けている。かなりの重傷だ。
すると、間もなくレノアたちが全速力で駆けてくるのが見えた。
「大丈夫か!カズマ!」
レノアが必死の形相で走りながら叫ぶ。
「腹を斬られた。治療してもらえるとありがたい」
「わかった!」
レノアは走りながら、背中に背負った冒険者グッズの入ったバッグを下ろし、中から何かを取り出した。
そして俺のすぐ横までたどり着くとすぐさま傷口を確認した。
「ひどいな。かなりの深手だ」
「ああ、ざっくりと斬られたよ」
「だがテイムは完了したみたいだな」
レノアはそう言いつつ、バッグから取り出した瓶の蓋を開けた。
「かなりしみると思うけど、我慢してくれ」
レノアはそう言って瓶の中のどろっとした緑色の液体を、傷口へ大量にぶちまけた。
「ぐっ……」
かなりしみるとは言っていたが、これほどとは……しみるなんてもんじゃないぞ。激痛だ。
だが、情けない声は出せない。俺は必死で痛みを我慢した。
緑色の液体は深紅に染まった傷口にべっとりとまとわりついているように見える。
おそらく回復魔法の効果があるのだろう。
「こいつは最も強力な治癒薬だ。しばらく我慢し続ければ、大きな傷口であっても塞がると思う」
「しばらくって、どれくらいだ?」
俺の問いに、レノアが首を傾げた。
「たぶんだけど、一時間くらいかな」
一時間!?マジか!この痛みが一時間続くのかよ!
俺の表情でも読んだのか、レノアがくすりと笑いながら言う。
「とはいっても、しばらくすれば徐々に痛みは和らいでいくはずだよ」
俺は肩頬を軽く引き攣らせながら返した。
「そ、そうか。それは、ちょっと助かる」
レノアがニタニタと笑う。
「ちょっと~?相当痛いんじゃないの?」
傍らのゼロスも笑っているようだ。
「やせ我慢せずともよい」
俺は少し腹を立て、言い返した。
「別にやせ我慢なんてしてないよ。これくらいの痛み、どうってことないさ」
レノアのニタニタ笑いが止まらない。
「そう~?どう見ても、そうは思えないけど?」
「ふん、こんな傷くらい問題ないね」
「そうかい。本当の君はずいぶんと強情だねえ」
「強情で悪いか」
「悪くなんてないよ。人間味があって大変結構」
レノアはそう言うと、ゼロスと顔を合わせて笑った。
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