１×∞（ワンバイエイト） 経験値１でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました！

第二章

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　俺はそう言って、苦笑いを浮かべた。

　ゼロスも同じく苦笑した。

「そうか。お前は色々と苦労しているのだったな。それもすべて、人間を相手にだ」

　俺も外の景色を眺め、大通りを埋め尽くす人波を見つめた。

「ああ、そうだ。嫌な思いをするのは、人間がいるからだ。人間がいなければ、おそらく嫌な思いはしないと思うよ」

「かもしれないが、いいこともあるだろう。違うか？」

「そうだな。一応、あるな」

　俺はそう言って、はにかむように笑った。

　ゼロスも笑みを浮かべる。

「なら、いいではないか。お前はあまり群れを成すタイプではなさそうだが、それでも孤独よりはいいと思うぞ」

　俺はそこで思い出した。ゼロスの境遇を。

「すまない。ゼロスのことを考えてなかった。どうにも俺は独りよがりだな」

　俺はすぐに謝罪した。

　ゼロスはゆっくりと首を横に振った。

「そんなことはない。わたしの場合は、仕方がなかった。どうしようもなかった。なら、諦めるしかない」

　諦めか……それしかないだろう。それしかないだろうが、本当に納得しているのだろうか。いや、納得できるものなのだろうか。

　ゼロスなら、納得しているのかもしれない。ゼロスなら。

　俺はそう思いながら、ある考えが頭にひらめき、問いかけた。

「他に同族はいないのか？例えば、別の森にとか？」

　ゼロスが首を横に振る。

「いないと思う。少なくとも、聞いたことはない」

「そうか……」

　ゼロスは今、絶対的な孤独の中にいる。親兄弟を失い、一族郎党そのすべてを失い、ただひとりだけこの世に存在している。それが今後、永続的に続いていく。

　つらいだろう。苦しいだろう。だがゼロスはそんな顔を俺たちに見せたことはない。

　大人なんだろう。どんなにつらい出来事もすべて噛みしめ、どんなに苦くとも飲み込んで、これからを生きていくのだろう。

　俺にも出来るだろうか。絶対的な孤独に陥っても、すべてを納得し、前を向いて生きていくなんてことが。

　少なくとも、今の俺には無理だ。俺はまだ、あまりにも未熟すぎるからだ。

　だがこれからだ、とも思う。俺は今、人生をやり直している最中じゃないか。能力だけでなく、内面もレベルアップしていこう。

　それは、経験値１で簡単にレベルアップするようなことではないけど、様々なことを経験し、様々なひとと出会って、成長していこう。

　そうすれば、いつかゼロスのような大人になれるかもしれない。いや、なろうと思う。

　俺は傍らで一緒に馬車に揺られ、大通りを埋め尽くす笑顔のひとびとを眺めて相好を崩すゼロスを横目で見ながら、そう思った。