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第二章
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「レノア、大丈夫なのか?」
俺はさすがに心配し、優しく声をかけた。
レノアは壁に身体を預けたまま、辛そうな顔で答えた。
「いや、正直まだ気分は悪い。だけど……たぶんこうなっていそうな気がしたんだ」
こうなって……このひどい状況のことだな。
「すまないな。案の定さ」
「どうやら、そのようだね」
レノアがそう言うと、アリアスがいぶかし気な顔で言った。
「どうしたの、レノア?ずいぶん具合が悪そうだけど?」
レノアは壁にもたれかかるのを止め、威儀を正した。
「無様な姿をお見せし、申し訳ありません。少々馬車酔いをいたしました」
アリアスはうなずいた。
「長時間にわたって馬車に揺られたと聞いています。どうぞ、遠慮なくそこのソファーに腰かけてください」
レノアは、アリアスに示されたソファーをちらりと見た。
「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
レノアはそう言うと、のろのろとした動きながらも、ようやくソファーにたどり着き、静かに腰を沈めた。
アリアスはそれを確認すると、再び口を開いた。
「あらためて問うわ。貴方は、この者がほんとうのカズマだと言うのね?」
レノアは、ソファーの背もたれに身体を預けながら答えた。
「間違いありません。わたしが確認しました」
「でも……顔も身体も性格も違ったら、本人にはなりえないわ。別人よ」
確かに。
俺は思わず心の中で、今の自分に対して失笑した。
そもそも、ひとの同一性とは、何をもってなされるのか?アリアスの言うとおり、顔も身体も、そして性格までも違ったら、それは同一人物とは言えないのではないか。ならば、同一性を担保するものは、顔や身体や性格なのだろうか。
いや、違うだろう。どんなひとも時間が経てば、顔も身体も性格も変わる。幼少期と少年期では違うように。或いは中年期や老年期に至れば、もっと大きく変貌するだろう。
要は、その経過時間が今回は圧倒的に短いのだ。
アリアスたちからすれば、わずか数日で俺は大きく変貌を遂げた。顔も、身体も、性格も。それ故、戸惑っているのだ。
だがレノアはもっと短い。ゼロスもだ。ふたりとも、わずか一時間足らずの間にこれだけ大きく変化したというのに、受け入れてくれた。いや、もちろん初めは戸惑っていた。だが、話をするうちに信じてくれた。
何故だろうか。
何故レノアたちは、今の『俺』を、それまでの『僕』と同一人物だと信じられたのか。
それは――
「それは、記憶にございます」
俺はさすがに心配し、優しく声をかけた。
レノアは壁に身体を預けたまま、辛そうな顔で答えた。
「いや、正直まだ気分は悪い。だけど……たぶんこうなっていそうな気がしたんだ」
こうなって……このひどい状況のことだな。
「すまないな。案の定さ」
「どうやら、そのようだね」
レノアがそう言うと、アリアスがいぶかし気な顔で言った。
「どうしたの、レノア?ずいぶん具合が悪そうだけど?」
レノアは壁にもたれかかるのを止め、威儀を正した。
「無様な姿をお見せし、申し訳ありません。少々馬車酔いをいたしました」
アリアスはうなずいた。
「長時間にわたって馬車に揺られたと聞いています。どうぞ、遠慮なくそこのソファーに腰かけてください」
レノアは、アリアスに示されたソファーをちらりと見た。
「ありがとうございます。それでは、お言葉に甘えさせていただきます」
レノアはそう言うと、のろのろとした動きながらも、ようやくソファーにたどり着き、静かに腰を沈めた。
アリアスはそれを確認すると、再び口を開いた。
「あらためて問うわ。貴方は、この者がほんとうのカズマだと言うのね?」
レノアは、ソファーの背もたれに身体を預けながら答えた。
「間違いありません。わたしが確認しました」
「でも……顔も身体も性格も違ったら、本人にはなりえないわ。別人よ」
確かに。
俺は思わず心の中で、今の自分に対して失笑した。
そもそも、ひとの同一性とは、何をもってなされるのか?アリアスの言うとおり、顔も身体も、そして性格までも違ったら、それは同一人物とは言えないのではないか。ならば、同一性を担保するものは、顔や身体や性格なのだろうか。
いや、違うだろう。どんなひとも時間が経てば、顔も身体も性格も変わる。幼少期と少年期では違うように。或いは中年期や老年期に至れば、もっと大きく変貌するだろう。
要は、その経過時間が今回は圧倒的に短いのだ。
アリアスたちからすれば、わずか数日で俺は大きく変貌を遂げた。顔も、身体も、性格も。それ故、戸惑っているのだ。
だがレノアはもっと短い。ゼロスもだ。ふたりとも、わずか一時間足らずの間にこれだけ大きく変化したというのに、受け入れてくれた。いや、もちろん初めは戸惑っていた。だが、話をするうちに信じてくれた。
何故だろうか。
何故レノアたちは、今の『俺』を、それまでの『僕』と同一人物だと信じられたのか。
それは――
「それは、記憶にございます」
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