１×∞（ワンバイエイト） 経験値１でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました！

第二章

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「そういうことか」

　俺がそう言うと、ゼロスがすっと立ち上がった。

　そして口の周りを舌でペロッと舐め、綺麗にしてから言った。

「お初にお目にかかるバーン翁。我はネメセス族のゼロス。以後お見知りおきを」

　バーン翁も威儀を正す。

「わしがヴィルヘルム・バーンじゃ。見事な物言い。感服じゃ」

　ゼロスは笑みを浮かべて会釈した。

　バーン翁はスッと視線を俺に向けた。

「お前とは段違いじゃな」

　ちっ！俺は心中で舌打ちをした。

「口汚くて、悪かったな」

「なあに、かまわん。だが、おもしろいな」

「何が面白い？」

「人格が入れ替わったのだろう？」

「それも知っているのか？」

「無論だ。わしの情報網を舐めるなよ」

「ふん、食えないじいさんだ」

「当然じゃ。わしを誰だと思っておる。一代で、天下の大商会を築き上げた男ぞ」

「そうだったな。今後は油断しないようにするさ」

「それが良い。なにせこの世は、魑魅魍魎どもが欣喜雀躍と跳梁跋扈しておるからの。いつ何時たりと、常在戦場の心構えでおることじゃ」

　俺はうなずいた。

　バーン翁は満足げに微笑んだ。

「ほれ、食べい。せっかくの料理が冷めてしまうぞ」

「ああ、じゃあ遠慮なくいただくよ」

　俺たちは言葉通りに、料理に取りかかった。

　料理はことのほか美味しく、俺たちはしばらくの間、絶品料理に舌鼓を打った。

　そしてたらふく平らげたあと、湯気が沸き立つ熱いお茶が運ばれてきた。

　ゼロスにはどうするのかと上半身を倒して下を覗くと、どうやら平たい皿にミルクを注いでいるようだ。

　給仕が注ぎおえるなり、ゼロスは皿になみなみ注がれたミルクを美味しそうに舐めはじめた。

　俺は安心して身体を戻し、自らの目の前に置かれたティーカップに手を伸ばした。

　そしてもうもうと湯気が立ったお茶を、口からフーフーと風を送り、いくらか冷ましてからすすった。

「美味い」

　思わず心の声が漏れた。

　それを聞いたバーン翁が呵々と笑う。

「当然じゃ。食後の茶は重要じゃ。せっかく贅をこらした料理を並べても、最後のお茶がまずくては台無しというものじゃからな」

「確かに」

　俺は納得し、さらに一口すすった。

　やはり美味い。あまりお茶など飲まない俺でも違いが分かるくらいだ。相当に上等な茶なのだろう。

　俺が感心しながらどんどんお茶をすすっていると、バーン翁が口元に笑みを浮かべた。

「ふむ、そうしていると、可愛げがあるものよ」

「俺のことか？」

「他に誰がおる。ゼロスは下じゃ」

　確かに。今バーン翁の視線の先には、ゼロスはいない。いるのは、俺だけだ。