1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ

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第二章

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「ゼロス念願の洋上だな?」

 ゼロスはフッと息を吐き出した。

「そうだな」

 すると前を行くバーン翁がゼロスに問いかけた。

「海は初めてか?」

「うむ。わたしはずっと森の中にいた。海を見たのも、先ほどが初めてだった」

「そうか。森も広大だが、海はさらに大きい。もっとも景色映えが変わらず、すぐに飽きるがな」

 バーン翁はそう言って笑った。

「そうか。それほどまでに広大なのだな。では、飽きるまで楽しむとしよう」

 ゼロスの言葉を聞き、バーン翁は愉快そうに大いに笑った。

 そうして俺たちは、巨大な帆船ネーレウス号に乗り込んだ。


「出港準備、完了いたしました!」

 ネーレウス号の船長が、百五十名の乗組員を背後に従え、バーン翁に向かって敬礼しながら報告した。

 バーン翁は重々しくうなずいた。

「ならば出港する!目的地はアルデバラン王国東部の港町デガローじゃ!皆の者、諸々よろしく頼む!」

 バーン翁の激に、乗組員が一斉に応える。

「はっ!」

 だが言い終えるとすぐに皆、踵を返した。

 それぞれの持ち場につくのだ。

 彼らは持ち場に戻るや、それぞれが必要な最終確認をし、あらためて準備完了の合図を送り合った。

 船長はそれらをすべて聞き終え、あらためて大音声で号令を発した。

「出港!」

 船長の号令一下、恐ろしいほど高い三本のマストから、たくさんの大きな横帆が勢いよく垂れ下がった。

 たくさんの乗組員たちの大音声や靴音が、甲板上だけでなく、帆船全体に響き渡る。

 いよいよ出港だ。

 と、ついに巨大な船体が動き出した。

 とても滑らかな動きで、スーッと前方に向かって進んでいく。

 足元のゼロスが少し興奮気味に言った。

「動いたようだな」

 しかしそこで、俺ははたと考え込んだ。

 ここは、風のない洞窟のような場所だ。何故このような巨大な帆船が動いたのだ?
 
 俺はその疑問をバーン翁にぶつけた。

「櫂でもついているのか?その割にはそんな音はしないが」

「この船には櫂はついておらん。ここからは見えんが、前方でタグボートが、この船を曳いているのじゃよ」

「そういうことか。タグボートも帆船なのか?」

「そうじゃ。小さくとも帆が風をはらめば、大きな力を得る。この巨大な船であっても曳けるというものじゃよ」

「凄いな。風力ってのも」

「もっとも風のない日は、人力で櫂を漕いで前に進むがの」

 バーン翁はおどけた顔で言った。

 俺は笑った。

「風力は馬鹿にできない力を持つが、ままにならないってことだな」

「そうじゃな。凪にでもなろうもんなら、大変じゃ」
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