1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ

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第二章

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 バーン翁は眉根を寄せた。

「ドラム缶じゃと?あの、原油とかを入れる金属製の容器か?」

「そうだ!そのドラム缶だ!」

 バーン翁は軽く苦笑した。

「そんなもの、あるわけがないじゃろう。こちらの世界に、ドラム缶を作るだけの技術はあるまい。あれは単純な構造に見えて、製造するにはなかなかに難しいぞ」

 俺はバーン翁の回答を聞いて愕然とした。

「いや、あったんだ。あったんだよ!」

「なに?どこにじゃ?」

「クレーターの中だよ。さっき言った小さい小屋に風呂がついていた。それが、ドラム缶風呂だったんだ!」

 バーン翁も驚愕の表情となった。

「それは、まことにドラム缶であったのか?似たようなものであっただけではないのか?」

 俺はゆっくりと首を横に振った。

「間違いない。あれは、ドラム缶だった。今の今まで忘れていた。くそっ!」

 『僕』の人格だったせいだ。あの考えなしの小僧のせいで、今まで気づかなかったんだ。

 バーン翁が重々しい口調で言う。

「やはりそいつが転移者である可能性が高まったな」

 俺はゆっくりとうなずいた。

「そいつが作ったんだろうか?」

「かもしれないし、そうでないかもしれん」

「そうではない可能性とは?」

「考えづらいが、ドラム缶と一緒に転移したとかな」

 俺は眉尻を上げた。

「そんなことがあり得るのか?」

「わからん。じゃがドラム缶を製造するには、それ相応の工場が必要だろう。そんなものがこちらの世界にあるとは考えづらい。それに、わしが転移した時、持っていたものがある」

 バーン翁はそう言うと、右手を腰の向こう側に回した。

 そして右手を戻すと、バーン翁は何かを握っていた。

 俺はそれを見て、驚愕した。

「それは……拳銃か!」

 バーン翁は、かなり特徴的な形の、それでいて何処かで見たことがあるような拳銃を両手で持ち、大事そうに見つめた。

「……護身用に持っていたものじゃ」

「アメリカならではだな。俺は初めて拳銃の実物を見たよ」

「ワルサーP38という拳銃じゃ」

 そうか、思い出した。かの有名な大泥棒の孫が活躍するアニメで、主人公がその手に握っていた拳銃と同じだ。

「……弾は入っているのか?」

 俺の問いに、バーン翁は銃床をガチャリと外し、マガジンを俺に見せた。

「一発だけ残っておる」

 俺は深呼吸した。

 そして落ち着いてから、再び問いかけた。

「こっちに来てから使ったのか?」

 バーン翁は口角を上げ、言った。

「ここぞの時に使ったな。相手はこれを見ても、なんだかわからんからな。不意を突けて、効果てきめんじゃったぞ」

 俺はもう一度深呼吸してから答えた。

「そうだろうな。拳銃の存在を知らなければ、そこからものすごい速度で弾が飛び出すなんて、思わないからな」

「うむ。お前さんは何か持っていなかったのか?」

 俺は首を横に振った。

「いや、なにも。俺は何一つ持っていなかったよ」

「そうか。それは残念じゃのう」
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