1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ

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第二章

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「だがここで見張っていても、意味はないんじゃないか?」

「そうじゃな。とりあえずは腹ごしらえでもするか」

 バーン翁はそう言うとさっと踵を返し、バーン商会支店がある大通りを背にして、建物と建物の間の狭いすき間道を歩き出した。

「いいのか?」

「いいわい。腹が減っては頭の回転が鈍るからのう」

 ま、たしかに。

 俺は納得し、ゼロスと共にバーン翁の後に続いた。

 建物の隙間を抜けると、裏道に出た。

 先ほどの大通りに比べるとかなり狭いが、小さな店が様々に立ち並び、なかなかに活気があった。

 バーン翁が少し先にある店を指さした。

「ふむ、あの店にしようかのう」

 バーン翁は、俺たちに相談もなく店を勝手に決めると、さっさと歩いていった。

 俺は肩をすくめ、ゼロスと目を見交わした。

 ゼロスは、愉快そうに笑みを浮かべた。だが、言葉は発しなかった。

 ひとどおりがあるためである。ゼロスは他者がいるとき、しゃべることをしない。

 何故なら、しゃべるモンスターなど誰も見たことも聞いたこともないためだ。

 だから、ゼロスが突然街中でしゃべり出そうものなら、騒ぎになってしまう。

 それ故にゼロスは、俺が話しかけようと、周りにひとがいなくなるまで決して口を開くことはなかった。

 俺たちは互いにうなずき合うと、バーン翁を追いかけた。

 バーン翁は先程指さした、こぎれいなレストランの中へと入った。

 俺たちも後に続いて入店すると、ずいぶんと繁盛しているようで、ほとんど満席に近かった。

 そのためか、前を行くバーン翁は足を止めず、どんどん店の奥へと入っていった。

 いや、どうやら知っている店らしい。でなければ、ああも堂々と店のど真ん中を突っ切ったりはしないように思う。

 結局バーン翁は、最奥のテーブルまでたどり着き、そこへ座った。

 俺は追いつくと、翁の対面の席へと腰かけた。

 ゼロスはいつものように、俺の傍らの床の上に座る。

 すると、すかさずウェイターがオーダーを取りに、俺たちの席へとやってきた。

「いらっしゃいませ」

 ウェイターはそう言うと、俺と翁にメニュー表を渡した。

「ご注文がお決まりになりましたら、お呼びください」

 ウェイターはそう言うと、踵を返して行ってしまった。

「この辺は、当然のことながら魚料理が美味いぞ」

 デガローは港町だ。すぐそこで水揚げされた魚を提供するだろう。だから当然、魚料理が美味いに決まっている。

「魚料理は当然としても、どの魚が美味いんだ?」

 俺の問いに、翁は視線をメニューから離さず答えた。

「ぜんぶ美味い。だから安心して注文するがいい」

 俺は軽く肩をすくませた。

「じゃが、わからんかったら店長のおすすめを頼むといいじゃろう」
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