１×∞（ワンバイエイト） 経験値１でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました！

第二章

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「どうかしたかのう？」

　バーン翁が振り返り、心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。

　俺は慌てて手を振り、取り繕おうとする。

「い、いや、問題ない。ちょっと考え事をしていただけだ」

「考え事とな？何を思案しておったのじゃ？」

「いや、その、今後のこととか……」

「ふむ、まあよい。だが……」

　バーン翁は鋭い視線で俺を射すくめ、言った。

「悩み事があるのなら、わしに相談することじゃ。わしは人生経験豊富じゃぞ」

　俺は内心ドキッとした。だがそれを悟られまいと、また必死で取り繕う。

「ああ、わかった。その時は、そうさせてもらうよ」

　翁はまだ、俺を測るかの如く鋭い視線を送ってきている。

　こんな悩み、相談してどうなるものでもない。

　俺は、バーン翁の視線を真正面から跳ね返した。

　すると、翁がようやく視線をそらした。

　そのまま身体をくるりと反転させる。

　俺はホッと胸をなでおろすも、息を吐き出したりはしない。

　そうすれば悟られると思ったからだ。

　バーン翁はそのまままた歩き出した。

　俺も慎重にその後をついていく。

　そのとき、下からの視線を感じた。

　いつの間にかゼロスが、俺の前に出ている。

　そして足下から、翁と同じような測る視線を送って寄越す。

　俺は気取られぬように、努めて平静を装いながら歩く。

　ゼロスは歩きながらも俺から視線を外さない。

　だがしばらくして、前を行くバーン翁が言った。

「ここから入るぞい」

　バーン翁は、店の裏口と思われる扉に手をかけるや、さっさと中へ入っていった。

　俺もその後に続こうとするも、ゼロスが完全に前に出た。

　そして首をめぐらし、路地にひと気がないことをあらためて確認してから、言った。

「何か思うところがあるのなら、わたしでも構わない。いつでも相談してくれ」

　俺は真顔のままうなずく。

「ああ。ゼロスも人生経験は長いものな。そのときは相談するよ」

　ゼロスはじっと俺を見る。

　俺も視線を返す。

　ゼロスがぷいっと顔をそむけた。

　そして無言のまま、そのしなやかな身体を店の中へとすべりこませた。

　俺は耳のいいゼロスにも聞こえないくらい静かに、吐息を漏らした。

　やはり相談は出来ない。これは俺の問題だ。誰かに話して、安息を得る類のものでもない。

　一生ものだ。俺の人生に永遠に付きまとうであろう事柄だ。

　到底、他人にはわかるまい。どんなに心を通わせた友人であっても、俺の心の中に巣食う膨張した影を、一掃することなんて出来はすまい。

　だから俺は語らない。語るとしたら、自分自身とだけだ。それが俺を、一番よく知る俺の結論なんだ。