1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ

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第二章

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 だが拳は、空を切った。

 バーン翁のむき出しの顔が蜃気楼のように揺らぎ、そこを自らの拳が通過したのがわかった。

 スー・キンムーは驚き、わが目を疑った。

 消えた……。

 スー・キンムーは、そう思った。だがそれは、ほんの一瞬のことであった。

 次の瞬間、スー・キンムーの視線は百八十度上下逆さまとなり、次いで頭上から床へと落下した。

 それはほんのわずかな時間の出来事であり、スー・キンムーは受け身を取ることも出来なかった。

 薄れゆく意識の中で、スー・キンムーはバーン翁の少ししわがれた声を聞いた。
 
 だがそれもほんの一秒足らずのことであり、スー・キンムーはすぐに意識を失った。




 くそっ!こいつら、舐めた口を利くだけあって強い。

 もしかして、こいつらどっちもSランクか?

 たぶん、そうだろう。でなければ俺がこれほど手こずるはずがない。

 ちっ!Sランクって、ほとんどいない希少種みたいなもんじゃないのか?

 このふたりがSランクってことは、バーン翁が相手をしている長兄もそうなんじゃないのか?

 だとしたらこの場には、Sランクが五人もいることになる。

 Sランクの満員御礼出血大サービスじゃないかよ。

 だがここでグダグダと考えていても仕方がない。

 まずはこいつらを倒すことだ。

 それには――

「おい、俺は武闘家じゃないから、武器を使わせてもらうぜ」

 俺はそう言って、ポケットから小さくなった蒼龍槍を取り出した。

「構わんぞ。戦いに卑怯もくそもない。そもそも我らの武器は、素手というだけのこと。お前はお前の武器を使えばいい」

 へえ~、結構まともなことを言うじゃないか。

 まあいい、それなら遠慮なく使わせてもらうぜ。

 俺は蒼龍槍に念を込めた。

 みるみるうちに手の中にすっぽり入っていた蒼龍槍が、二メートルほどの棍棒となった。

 するとこれには、キンムー兄弟も驚きの表情を見せた。

 ラー・キンムーは、モー・キンムーと顔を見合わせた後、怪訝な表情で俺を見た。

「どういう仕掛けだ?突然大きくなったぞ」

 武器の使用を認めてくれたんだ。説明位してやろう。

「これは蒼龍槍というアーティファクトでな。俺の念じるままに、姿かたちを変えられるんだ」

 ラー・キンムーはまたもモー・キンムーと顔を見合わせた。

 そして俺が手に持つ蒼龍槍を、物欲しそうな顔で見つめた。

「素晴らしい!お宝じゃないか」

 俺は肩をすくめて答える。

「そうだろうな。元々は、アルデバラン王家所蔵の秘宝らしいし」

 するとキンムー兄弟の顔が、さらに愉悦に満ちた顔となった。
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