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第二章
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「と、いうと?」
「兄弟三人ともSランクというのがな。実に興味深い」
バーン翁に興味深いと言わせたのは何か。
俺はしばし考え、思いついたことを言ってみた。
「もしかして、ランクって遺伝するのか?」
俺がそう疑問を呈すると、翁が難しい顔つきとなった。
「おそらくはそうなのだろう。だが、確率がな……」
「確率?それはどういう意味で?」
俺はそう言ってから、あることに思い至った。
「そうか!あんたの子供たちはSランクじゃないんだな?」
バーン翁はほのかな笑みを浮かべながら答えた。
「正確にはひとりおる。五兄弟のうち、ひとりだけじゃがな」
「それってもしかして……」
バーン翁が大きくうなずいた。
「そうじゃ。アルフレッドの父にあたる、ヘルムート・バーンじゃ」
「アルフレッドの親父は、Sランクなのか!」
「うむ。それ故、ヘルムートはバーン商会の現当主になったんじゃ」
「それ故?てことは、長男じゃないのか?」
バーン翁が重々しくうなずいた。
「あれには、姉ふたり、兄ふたりがおる。一番末っ子の三男坊じゃ」
「他の四人は違うんだな?」
「うむ。姉ふたりはいい線いっていたがな。兄たちの方は、まるでダメじゃった」
「だから、ヘルムートに跡を継がせたってわけだ」
「それだけではないがの。商才もヘルムートが一番じゃった」
「なるほどな。話だけを聞いていれば納得の人事だが、その四人は納得していたのか?」
「わしの前では納得した顔をしていたが……本心はわからぬな。さしものわしも、人の心の中は覗けんからな」
それはそうだろう。ひとの心を覗けたら苦労はしない。
……いや、逆か。ひとの心なんてものを覗けたら、苦労しないどころか、まともな生活すら出来はしないだろう。
そんなことになったらと、考えただけで頭がおかしくなりそうだ。
何故ならひとの心の奥底には、闇があるからだ。
たとえどんなに陽気で人懐っこく、誰からも愛されるような人物であっても、心の奥底に闇を飼っている。
そんなものを不用意に覗き込んでみろ。おかしくなる。たとえどのような闇であれ、他人が覗き込んだらそうなるだろう。
そうだ。誰しも闇を抱えて生きている。
無論、闇を上手く飼いならしている者もいるし、闇に振り回されて破滅してしまう者もいるだろう。
だが闇を抱えていない者など、いはしない。決しているはずがないんだ。
ひとが生きるということは、そういうことだからだ。
生きているうちにいくつもの闇を生み、その闇を抱えて生きていく。
その理から外れる者など、決しているはずがないんだ。
「兄弟三人ともSランクというのがな。実に興味深い」
バーン翁に興味深いと言わせたのは何か。
俺はしばし考え、思いついたことを言ってみた。
「もしかして、ランクって遺伝するのか?」
俺がそう疑問を呈すると、翁が難しい顔つきとなった。
「おそらくはそうなのだろう。だが、確率がな……」
「確率?それはどういう意味で?」
俺はそう言ってから、あることに思い至った。
「そうか!あんたの子供たちはSランクじゃないんだな?」
バーン翁はほのかな笑みを浮かべながら答えた。
「正確にはひとりおる。五兄弟のうち、ひとりだけじゃがな」
「それってもしかして……」
バーン翁が大きくうなずいた。
「そうじゃ。アルフレッドの父にあたる、ヘルムート・バーンじゃ」
「アルフレッドの親父は、Sランクなのか!」
「うむ。それ故、ヘルムートはバーン商会の現当主になったんじゃ」
「それ故?てことは、長男じゃないのか?」
バーン翁が重々しくうなずいた。
「あれには、姉ふたり、兄ふたりがおる。一番末っ子の三男坊じゃ」
「他の四人は違うんだな?」
「うむ。姉ふたりはいい線いっていたがな。兄たちの方は、まるでダメじゃった」
「だから、ヘルムートに跡を継がせたってわけだ」
「それだけではないがの。商才もヘルムートが一番じゃった」
「なるほどな。話だけを聞いていれば納得の人事だが、その四人は納得していたのか?」
「わしの前では納得した顔をしていたが……本心はわからぬな。さしものわしも、人の心の中は覗けんからな」
それはそうだろう。ひとの心を覗けたら苦労はしない。
……いや、逆か。ひとの心なんてものを覗けたら、苦労しないどころか、まともな生活すら出来はしないだろう。
そんなことになったらと、考えただけで頭がおかしくなりそうだ。
何故ならひとの心の奥底には、闇があるからだ。
たとえどんなに陽気で人懐っこく、誰からも愛されるような人物であっても、心の奥底に闇を飼っている。
そんなものを不用意に覗き込んでみろ。おかしくなる。たとえどのような闇であれ、他人が覗き込んだらそうなるだろう。
そうだ。誰しも闇を抱えて生きている。
無論、闇を上手く飼いならしている者もいるし、闇に振り回されて破滅してしまう者もいるだろう。
だが闇を抱えていない者など、いはしない。決しているはずがないんだ。
ひとが生きるということは、そういうことだからだ。
生きているうちにいくつもの闇を生み、その闇を抱えて生きていく。
その理から外れる者など、決しているはずがないんだ。
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