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第二章
603
その時、俺は思った。
これが同調圧力か、と。
皆、他人の目が怖いのだ。陰でそしられることが怖いのだ。
「あのひと、マスクをしていないわ」「あの子、なんでマスクしないのかしら。傍迷惑な子ね」「どういう教育を受けているのかしら」
ひそひそ、ひそひそ。
皆が他人の目を恐れた。だから、皆マスクを取れなかったのだ。
その時の異様な光景は、今も目を瞑ればまぶたに浮かんでくる。
誰もが、死んだような目で町を彷徨っていた。四角く白い布を口元に張り付けて、彷徨っていた。
あれも、空気によるものだったと思う。マスクをすべし、という空気が醸成されていたのだ。
戦前戦中と一緒だ。
日本人は、同調圧力に弱いのだ。
嗚呼、そうか。よくわかった。
俺は納得して、バーン翁を見た。
「わかるよ。日本人は、同調圧力に弱いから」
バーン翁は意外そうな顔をした。
「ほう、わかるか。お前さん若いのにな」
「まだ短い人生だが、似たような経験をしたことがあるんだ」
俺はそう言って、自らが経験した同調圧力について翁に説明した。
「ふうむ……あちらの世界で、そのようなことが起こっとったとはな」
「気味が悪かったよ。でも、たぶん戦前戦中の空気と同じようなものだったんだろうと思うよ」
「そうじゃな。わしもそう思う。あのような空気を醸成してしまう国民性は、日本くらいのものじゃろうからな」
「何故日本人は、ああも他人の目を気にするのだろうか?」
俺は素直に疑問を口にした。
バーン翁はしばし考え込んだものの、ゆっくりと首を横に振った。
「日本人ならぬわしには、はっきりとしたことはわからんかった。わしがわかったのは、そういう事象があるということだけじゃ」
俺はうなずいた。
「そうだよな。外から見ただけでわかるはずがない。これは聞いた俺が悪かったな」
俺は独り言ちると、言った。
「しかし、よくわかったよ。戦争もまた、空気によって起こるってことがね」
「うむ。故にアルデバラン奪回も、空気の醸成いかんによっては可能になると思うぞよ」
俺はうなずいた。
「どうすれば空気を作れると思う?」
バーン翁は胸の前で腕を組んだ。
すると、そこでようやくアルフレッドが自分を取り戻し、話に割って入ってきた。
「話の内容はよくわからんが、どうやら本当にじいちゃんは異世界人だったらしいな?」
俺は、その存在自体をしばらくの間忘れていたほどだったが、アルフレッドは今もなお消え入りそうな存在感の無さであった。
俺はその様子がおかしくもあり、少し笑ってしまった。
これが同調圧力か、と。
皆、他人の目が怖いのだ。陰でそしられることが怖いのだ。
「あのひと、マスクをしていないわ」「あの子、なんでマスクしないのかしら。傍迷惑な子ね」「どういう教育を受けているのかしら」
ひそひそ、ひそひそ。
皆が他人の目を恐れた。だから、皆マスクを取れなかったのだ。
その時の異様な光景は、今も目を瞑ればまぶたに浮かんでくる。
誰もが、死んだような目で町を彷徨っていた。四角く白い布を口元に張り付けて、彷徨っていた。
あれも、空気によるものだったと思う。マスクをすべし、という空気が醸成されていたのだ。
戦前戦中と一緒だ。
日本人は、同調圧力に弱いのだ。
嗚呼、そうか。よくわかった。
俺は納得して、バーン翁を見た。
「わかるよ。日本人は、同調圧力に弱いから」
バーン翁は意外そうな顔をした。
「ほう、わかるか。お前さん若いのにな」
「まだ短い人生だが、似たような経験をしたことがあるんだ」
俺はそう言って、自らが経験した同調圧力について翁に説明した。
「ふうむ……あちらの世界で、そのようなことが起こっとったとはな」
「気味が悪かったよ。でも、たぶん戦前戦中の空気と同じようなものだったんだろうと思うよ」
「そうじゃな。わしもそう思う。あのような空気を醸成してしまう国民性は、日本くらいのものじゃろうからな」
「何故日本人は、ああも他人の目を気にするのだろうか?」
俺は素直に疑問を口にした。
バーン翁はしばし考え込んだものの、ゆっくりと首を横に振った。
「日本人ならぬわしには、はっきりとしたことはわからんかった。わしがわかったのは、そういう事象があるということだけじゃ」
俺はうなずいた。
「そうだよな。外から見ただけでわかるはずがない。これは聞いた俺が悪かったな」
俺は独り言ちると、言った。
「しかし、よくわかったよ。戦争もまた、空気によって起こるってことがね」
「うむ。故にアルデバラン奪回も、空気の醸成いかんによっては可能になると思うぞよ」
俺はうなずいた。
「どうすれば空気を作れると思う?」
バーン翁は胸の前で腕を組んだ。
すると、そこでようやくアルフレッドが自分を取り戻し、話に割って入ってきた。
「話の内容はよくわからんが、どうやら本当にじいちゃんは異世界人だったらしいな?」
俺は、その存在自体をしばらくの間忘れていたほどだったが、アルフレッドは今もなお消え入りそうな存在感の無さであった。
俺はその様子がおかしくもあり、少し笑ってしまった。
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