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第十二話 二ムバス
俺は目を見張って驚いた。
「何故テスター家を知っている?」
『まず俺の質問に答えろ。お前の名は?』
俺はそこでゆっくりと立ち上がり、もう一人の俺と真っ正面から正対してからまなじりを決して答えた。
「俺の名はジーク・テスターだ」
するともう一人の俺がうつむき、声を殺してクックックと笑い出した。
だが次第にそれは大きくなり、終いには顔を上げて高笑いとなった。
しかしそれもようやく収まった頃、もう一人の俺は、俺をキッと見据えて口を開いたのだった。
『やはりそうか。ならば成功確率は極めて高いと言えるな』
「なんだ?どういう意味だ!」
話しの見えない俺は、苛立って怒鳴った。
するともう一人の俺が肩をすぼめながら言った。
『そう怒鳴るな。お前の声は響くんだ』
そう言って両方の手の人差し指を、それぞれ耳の穴の中に突っ込んだ。
俺はその一連の動作が小馬鹿にしているように見えて腹を立てた。
「ちっ!いちいちうるさいのはお前の方だろ」
『そんなことはない。お前の声はどうしても俺には響くんでな』
「それは、俺とお前の容姿が似ていることと関係あるのか?」
するともう一人の俺がにま~っと薄気味悪く笑った。
『ああ。あるね。何故なら俺の名前もテスターだからだ』
この答えに、俺は大きく口をあんぐりと開けて驚いた。
「あ……え……嘘……」
『嘘じゃない。俺の名は二ムバス・テスター。お前のご先祖様さ』
「……先祖……俺の?」
『そう。先祖。納得したか?』
「するわけないだろうがーーー!」
俺の怒髪天を衝いた叫びに、またも二ムバスが耳の中にそれぞれの人差し指を突っ込んで塞いだ。
『だからうるさいと言っているだろう!静かにしろ!』
「これが静かにしていられるか!俺の父も祖父も俺になんとなく似ていた気はするが、こんなにそっくりじゃなかった。だからお前が俺の先祖だとするなら、俺のひいじいちゃんかそれ以上前の先祖のはずだ。それならなんで生きているんだ!その若々しさはなんだ?寿命はどうした!なぜ死なない!」
二ムバスは耳に指を突っ込んだまま、とぼけた顔をして答えた。
『よくしゃべるな。だがまあいい、俺はお前から見て千年くらい前の先祖だ。そしてこの見た目はあくまでイメージに過ぎない。投影している幻影に過ぎないのだからな』
「幻影?これが?」
俺は、目の前の実体を伴っているとしか思えぬもう一つの自分の姿をまじまじと見て、驚いた。
「……あ……確かに……少し揺らめいている」
俺は思わず手を伸ばし、二ムバスの身体に触ってみようとした。
だが触れなかった。
俺の手は二ムバスをすり抜けていたのだ。
「それならお前は何処にいる?」
俺の問いに二ムバスがにやりと笑い、両手を広げてすかさず答えた。
『ここさ』
俺は眉根を寄せて二ムバスを睨みつけた。
「お前は幻影なんだろ?俺はお前の実体を伴った身体が何処にあるのかを聞いているんだ」
『俺の実体だって?そんなもの、千年前になくしたさ』
「千年前にって……つまり死んだってことか?」
すると二ムバスの声に怒りが滲んだ。
『ふざけるな。俺はまだ死んではいないぞ。その証拠にお前に話しかけているだろうが』
「だから俺の目の前にあるのは幻影だろ?つまりは幽霊みたいなもんだってことだろ?」
『違う。俺は生きているんだよ。俺は千年間、こんなクソみたいなところに、魂だけの存在となってずっと閉じ込められているんだよ』
俺はぞくっとした。
本当か?本当にこんなところに千年間も閉じ込められているのか?
それはつまり魂だけを封印されたということなのか?
だとしたら、恐ろしい。
意識を保ったまま、こんな何もないところに千年も閉じ込められるなんて恐怖でしかない。
俺だったら気が変になりそうだ。
『そうさ。俺はこんな何にも無い、まっ暗なところに封印され続けたんだ』
怒りに声を震わせ、二ムバスが言った。
俺は生唾を飲み込み、絞るようにして声を出した。
「何故、こんなところに封印されたんだ?」
すると二ムバスが不敵な笑みを浮かべた。
『さあな。それは封印した奴に聞いてくれ。俺はされた方なんでな』
「心当たりくらいはあるだろう。それを聞いているんだ」
『ふん、くだらん。そんなことはどうでもいい』
二ムバスは吐き捨てるように言うと、俺の眼をジッと見つめながら、不敵な笑みはそのままで言ったのだった。
『俺は千年待ったんだ。さあ、俺の封印を解いてもらおうじゃないか』
封印を解く?どうやって?
いや、仮に封印を俺が解けるとして、いいのか?
こんなところに千年間も封印されるような奴を俺が解き放ってもいいものなのか?
『ちっ!くだらないことで悩むな』
「くだらなくなんてない!お前にとってはくだらなくても、俺にとっては重大問題だ!」
『ほう、重大問題ね。命より大事な重大問題なんてあるのかね?』
二ムバスが嘲笑うように言った。
俺は馬鹿にされたと感じ、瞬時にイラッとした。
「何が言いたいんだよ、お前は」
すると二ムバスが先程以上に嘲るように言った。
『お前、俺を封印から解かなかったら死ぬぞ』
「俺を殺すつもりか」
二ムバスが鼻でせせら笑った。
『だからさっき言っただろう。俺はお前を殺さない。そんなことをしなくても、お前は勝手に死ぬからだ。忘れたのか?ここはダンジョンの地下千階だということを』
そうだった。俺はここでは生きていけない。
かといって脱出することも出来ない。
そうか。
俺はこいつの力を借りなければ、生きていけないんだ。
『ようやく真に理解出来たようだな。お前が生きてここを出て行くためには、俺を封印から解かなければならないということを』
「何故テスター家を知っている?」
『まず俺の質問に答えろ。お前の名は?』
俺はそこでゆっくりと立ち上がり、もう一人の俺と真っ正面から正対してからまなじりを決して答えた。
「俺の名はジーク・テスターだ」
するともう一人の俺がうつむき、声を殺してクックックと笑い出した。
だが次第にそれは大きくなり、終いには顔を上げて高笑いとなった。
しかしそれもようやく収まった頃、もう一人の俺は、俺をキッと見据えて口を開いたのだった。
『やはりそうか。ならば成功確率は極めて高いと言えるな』
「なんだ?どういう意味だ!」
話しの見えない俺は、苛立って怒鳴った。
するともう一人の俺が肩をすぼめながら言った。
『そう怒鳴るな。お前の声は響くんだ』
そう言って両方の手の人差し指を、それぞれ耳の穴の中に突っ込んだ。
俺はその一連の動作が小馬鹿にしているように見えて腹を立てた。
「ちっ!いちいちうるさいのはお前の方だろ」
『そんなことはない。お前の声はどうしても俺には響くんでな』
「それは、俺とお前の容姿が似ていることと関係あるのか?」
するともう一人の俺がにま~っと薄気味悪く笑った。
『ああ。あるね。何故なら俺の名前もテスターだからだ』
この答えに、俺は大きく口をあんぐりと開けて驚いた。
「あ……え……嘘……」
『嘘じゃない。俺の名は二ムバス・テスター。お前のご先祖様さ』
「……先祖……俺の?」
『そう。先祖。納得したか?』
「するわけないだろうがーーー!」
俺の怒髪天を衝いた叫びに、またも二ムバスが耳の中にそれぞれの人差し指を突っ込んで塞いだ。
『だからうるさいと言っているだろう!静かにしろ!』
「これが静かにしていられるか!俺の父も祖父も俺になんとなく似ていた気はするが、こんなにそっくりじゃなかった。だからお前が俺の先祖だとするなら、俺のひいじいちゃんかそれ以上前の先祖のはずだ。それならなんで生きているんだ!その若々しさはなんだ?寿命はどうした!なぜ死なない!」
二ムバスは耳に指を突っ込んだまま、とぼけた顔をして答えた。
『よくしゃべるな。だがまあいい、俺はお前から見て千年くらい前の先祖だ。そしてこの見た目はあくまでイメージに過ぎない。投影している幻影に過ぎないのだからな』
「幻影?これが?」
俺は、目の前の実体を伴っているとしか思えぬもう一つの自分の姿をまじまじと見て、驚いた。
「……あ……確かに……少し揺らめいている」
俺は思わず手を伸ばし、二ムバスの身体に触ってみようとした。
だが触れなかった。
俺の手は二ムバスをすり抜けていたのだ。
「それならお前は何処にいる?」
俺の問いに二ムバスがにやりと笑い、両手を広げてすかさず答えた。
『ここさ』
俺は眉根を寄せて二ムバスを睨みつけた。
「お前は幻影なんだろ?俺はお前の実体を伴った身体が何処にあるのかを聞いているんだ」
『俺の実体だって?そんなもの、千年前になくしたさ』
「千年前にって……つまり死んだってことか?」
すると二ムバスの声に怒りが滲んだ。
『ふざけるな。俺はまだ死んではいないぞ。その証拠にお前に話しかけているだろうが』
「だから俺の目の前にあるのは幻影だろ?つまりは幽霊みたいなもんだってことだろ?」
『違う。俺は生きているんだよ。俺は千年間、こんなクソみたいなところに、魂だけの存在となってずっと閉じ込められているんだよ』
俺はぞくっとした。
本当か?本当にこんなところに千年間も閉じ込められているのか?
それはつまり魂だけを封印されたということなのか?
だとしたら、恐ろしい。
意識を保ったまま、こんな何もないところに千年も閉じ込められるなんて恐怖でしかない。
俺だったら気が変になりそうだ。
『そうさ。俺はこんな何にも無い、まっ暗なところに封印され続けたんだ』
怒りに声を震わせ、二ムバスが言った。
俺は生唾を飲み込み、絞るようにして声を出した。
「何故、こんなところに封印されたんだ?」
すると二ムバスが不敵な笑みを浮かべた。
『さあな。それは封印した奴に聞いてくれ。俺はされた方なんでな』
「心当たりくらいはあるだろう。それを聞いているんだ」
『ふん、くだらん。そんなことはどうでもいい』
二ムバスは吐き捨てるように言うと、俺の眼をジッと見つめながら、不敵な笑みはそのままで言ったのだった。
『俺は千年待ったんだ。さあ、俺の封印を解いてもらおうじゃないか』
封印を解く?どうやって?
いや、仮に封印を俺が解けるとして、いいのか?
こんなところに千年間も封印されるような奴を俺が解き放ってもいいものなのか?
『ちっ!くだらないことで悩むな』
「くだらなくなんてない!お前にとってはくだらなくても、俺にとっては重大問題だ!」
『ほう、重大問題ね。命より大事な重大問題なんてあるのかね?』
二ムバスが嘲笑うように言った。
俺は馬鹿にされたと感じ、瞬時にイラッとした。
「何が言いたいんだよ、お前は」
すると二ムバスが先程以上に嘲るように言った。
『お前、俺を封印から解かなかったら死ぬぞ』
「俺を殺すつもりか」
二ムバスが鼻でせせら笑った。
『だからさっき言っただろう。俺はお前を殺さない。そんなことをしなくても、お前は勝手に死ぬからだ。忘れたのか?ここはダンジョンの地下千階だということを』
そうだった。俺はここでは生きていけない。
かといって脱出することも出来ない。
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※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。