第一章完結『悪魔のなれの果て』 英雄の子孫がクラス無しとなり、失意の果てにダンジョンで出会った悪魔に能力を分け与えられたので無双します。

マツヤマユタカ

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第十六話 魔物召喚

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 するとエニグマがさらに言った。


「ちなみに魔法がすべてMAXとなっているかと思いますが、それですべての魔法が使えるというわけではありません」


「違うの?」


「はい。貴方が最上位魔法を使うためには、MPが足りませんので」


「つまり、MPが増えれば自動的に使えるってこと?」


「左様です」


「状態異常については?」


「それについては有効でございます。すべての状態異常を受けることはありません」


「HPやMPの自己回復っていうのは?聞いたことないんだけど」


 すると微かにエニグマが口の端を上げたような気がした。


 いや、気のせいだけかもしれない。


「そのものずばりですわ。時間と共にHPもMPも回復して参ります」


「凄いな、それは」


「はい。二ムバス様が持たれます特殊能力の中でも、最も重要なものかと」


「その回復速度はどれくらいなの?」


「それはレベルによって異なります。レベルが上がれば上がるだけ、回復速度は速まります。実際にこの後魔物を召還し、戦っていただきますので、ご自分で実感されてはいかがでしょうか?」


「そうだな……」


 何かいつの間にやら話をすり替えられているような気がするが、確かにHPやMPの自己回復ってやつを自分で実感してみたい気がする。


 どうせここで抗っても死ぬだけだし、まずはやってみるか。


「よし。じゃあ魔物を召喚してみてくれるかな」


「かしこまりました」


 エニグマは軽く頭を下げると、すぐに頭を上げた。


 そして右肘を曲げて右掌を上に向けた。


 すると掌の上にぼんやりとした青い火の玉のようなものが浮き上がってきた。


 エニグマは右手をさらに上げて自らの顔の前へと持ってくると、青い火の玉にフッと息を吹きかけた。


 すると小さな火の玉は凄まじい火力の炎となった。


「うわっ!」


 俺は驚き、一歩後ずさった。


 俺がなんとか態勢を立て直し、炎の行方を見ると、そこには恐るべき形相の魔物が姿を現わしていたのだった。


「くっ!ギガンテスじゃないかよ!なんてでかさだ!五メートルはあるぞ。こいつが俺の相手か!」


 ギガンテスは巨大な体躯と膂力を誇る一つ目の巨人だ。


 手には長さ三メートルはあるかという巨大な棍棒を握りしめている。


 俺は臨戦態勢に入るため、わずかに腰を落とした。


 だがそこでハッとなった。


 どうやって戦ったらいいんだ?


 レベル45になったことで何やら安心していたけど、ギガンテスを倒せるような上位魔法なんて使えないぞ。


 するとすかさずエニグマが俺に声を掛けてきた。


「魔法を検索されるとよろしいかと」


 魔法検索?


 ステータス画面を開けばいいのか?


 ギガンテスを見ると、どうやら完全に召喚されるまでにはまだ少し時間があるようだ。


 急ごう。


「ステータス!」


 俺の眼前には半透明なガラス板のようなものが浮き上がった。


「魔法検索!」


 俺は見よう見まねでそう叫んだ。


 すると、ステータス画面が入れ替わった。


 様々な魔法が種類別に陳列されている。


 とりあえず炎系の魔法を使ってみるか。


 ずらっと並ぶ炎系魔法を見比べる。


 うん?上の方は文字が青く表示されているが、下の方は赤い文字だ。


 これはもしかしてMPが足りないってことか?


 どうやらそうらしい。


 魔法名の横の数字は、下へ行くほど大きくなっている。


 なら青い文字で書かれた魔法を使うしかない。


 でもいきなりMP切れになったら大変だ。


 俺の現在のMPは161だから、その半分くらいのMP80を消費する魔法を選んでみよう。


 その時、ギガンテスの咆哮が辺り一面に鳴り響いた。


 耳をつんざくようなその轟きに、俺は一瞬身体を硬くしたものの、すぐに覚悟を決めて魔法の詠唱を始めようとした。


 だが……。


「エニグマ!呪文は何処に書いてあるんだ!?呪文がわからなければ詠唱できない!」


 俺の悲鳴にも似た問い掛けに、またもエニグマが笑ったように見えた。


「必要ございません。魔法名を仰ってください」


 まさか魔法名を唱えるだけで発動するのか?


 いや、考えている暇はない!


 俺は再び覚悟を決めると右腕を前に差し出し、先程選んだ魔法名を高らかに叫んだ。


「地獄の業火!」
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