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第二十一話 艱難辛苦
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「どうだっ!」
俺は倒した魔物の上に右脚をドスンと勢いよく置くと、左手で握り拳を作って雄叫びを上げた。
「お見事です」
エニグマが無感動に俺を褒め称える。
あれからどれくらいの時間が経ったろうか。
いや、どれくらいの月日が経ったのだろうか。
おそらくだが一ヶ月くらいは経ったんじゃないだろうか。
俺は最上級ダンジョンの最下層、地下千階において、日夜召喚される魔物を次から次へと屠っていた。
ここには朝も昼も夜も無い。
魔物を倒してはエニグマに回復してもらい、また召喚された魔物を倒しては回復してもらうという一連の流れ作業。
だがそれでも疲労が限界まで達すれば、倒れるように眠りこけ、また目覚めたら魔物退治の繰り返し。
だから実際どれくらい時間が経ったのかは、俺にはよくわからなかった。
だがそんな月日の中でもわかったことは、確実に俺のレベルが上がっていることだ。
「ステータス!」
俺の目の前に半透明なガラス板のようなステータス画面が現れた。
「おおっ!ついに来たぞっ!レベル1000達成だっ!!」
「おめでとうございます」
エニグマがまたも無感動に言う。
だがもうこんなやり取りは慣れっこだ。
俺はついにたどり着いたレベル1000という大偉業に、とても充実した思いを胸に抱いた。
それというのもレベル1000なんていうのは、普通聞いたことがないくらいのとんでもない話だったからだ。
冒険者のランク分けというものは、一概にレベルで分けられるものではない。
だがそれでもある程度はレベルで判断出来るというのが常識的な考えだろう。
では最上位ランクのSランクはどれほどか。
実は一般的にはレベル100を越えると、超越者としてSランクに認定されると言われている。
レベル100でSランクなのだ。
Sランクとはその上がない、最上位ランクのことだ。
無論、伝説的なまでに名を轟かす冒険者は100に留まらず、数百のレベルがあるものもいると聞く。
だが今の俺のレベルは、何と1000だ。
わかる?数百どころか、四桁だぜ。
俺を陥れたあの忌々しいダスティたちパーティーの連中は、ドラゴンを前にして緊張こそすれ決して恐れてはいなかった。
あいつらは悔しいけど、確かに強かった。
だがそれでもAランクだった。
つまり100までいってないってことだ。
あいつらのレベルはみんな二桁だということだ。
大事なことだからもう一度言おう。
俺は四桁だ!
俺が途轍もない充実感に充ち満ちているのも当然のことだと言えた。
だがそのことに一番驚いているのは俺自身だった。
「それにしても長い道のりだった……あんなことやこんなこと……数々の苦しい思い出が走馬燈のようによみがえるぜ……」
俺がこれまでの苦難を思い返して感傷に浸っていると、やはりというかなんというか、エニグマが淡々とした口調で言ったのだった。
「次、召喚してもよろしいですか?」
ああ……。
レベル1000の感動が泡のように消えていく。
俺は軽く眉間を左の人差し指と親指でキュッとつまむと、少しばかりイラッとした口調でもって言ったのだった。
「あのさあ、レベル1000だよ?普通聞かないレベルだよ?もう充分なんじゃないの?」
「前にも申しましたが、必要レベルは10000でございます。まだ十分の一でしかありません」
「いや、10000なんて聞いたことがないレベルだよ?1000だって聞いたことがないんだからさ」
「確かに現代においては10000を越える真の超越者は世界中を探しても何処にも居ないかと思いますが、過去にはおりました」
俺は驚き、問い返した。
「……マジで?昔ってそんなに凄かったの?」
「はい。二ムバス様が活躍されていた千年前には数人……いえ、もしかしたらもっと居たのかもしれません」
「あのさあ、じゃあもしかして二ムバスって千年前最強クラスだったって感じ?」
「最強クラスではありません。間違いなく最強でございました。他の者とひとくくりにすべきではありません」
「ならレベルはいくつだったの?10000越えは数人、もしかしたらもっと居たんだろ?」
するとエニグマが口角をクイッと上げた。
「二ムバス様のレベルは100000越えにございました」
「じゅ、十万ーーー!」
俺は全身の力が抜けるような感覚を覚え、膝から崩れ落ちるのであった。
俺は倒した魔物の上に右脚をドスンと勢いよく置くと、左手で握り拳を作って雄叫びを上げた。
「お見事です」
エニグマが無感動に俺を褒め称える。
あれからどれくらいの時間が経ったろうか。
いや、どれくらいの月日が経ったのだろうか。
おそらくだが一ヶ月くらいは経ったんじゃないだろうか。
俺は最上級ダンジョンの最下層、地下千階において、日夜召喚される魔物を次から次へと屠っていた。
ここには朝も昼も夜も無い。
魔物を倒してはエニグマに回復してもらい、また召喚された魔物を倒しては回復してもらうという一連の流れ作業。
だがそれでも疲労が限界まで達すれば、倒れるように眠りこけ、また目覚めたら魔物退治の繰り返し。
だから実際どれくらい時間が経ったのかは、俺にはよくわからなかった。
だがそんな月日の中でもわかったことは、確実に俺のレベルが上がっていることだ。
「ステータス!」
俺の目の前に半透明なガラス板のようなステータス画面が現れた。
「おおっ!ついに来たぞっ!レベル1000達成だっ!!」
「おめでとうございます」
エニグマがまたも無感動に言う。
だがもうこんなやり取りは慣れっこだ。
俺はついにたどり着いたレベル1000という大偉業に、とても充実した思いを胸に抱いた。
それというのもレベル1000なんていうのは、普通聞いたことがないくらいのとんでもない話だったからだ。
冒険者のランク分けというものは、一概にレベルで分けられるものではない。
だがそれでもある程度はレベルで判断出来るというのが常識的な考えだろう。
では最上位ランクのSランクはどれほどか。
実は一般的にはレベル100を越えると、超越者としてSランクに認定されると言われている。
レベル100でSランクなのだ。
Sランクとはその上がない、最上位ランクのことだ。
無論、伝説的なまでに名を轟かす冒険者は100に留まらず、数百のレベルがあるものもいると聞く。
だが今の俺のレベルは、何と1000だ。
わかる?数百どころか、四桁だぜ。
俺を陥れたあの忌々しいダスティたちパーティーの連中は、ドラゴンを前にして緊張こそすれ決して恐れてはいなかった。
あいつらは悔しいけど、確かに強かった。
だがそれでもAランクだった。
つまり100までいってないってことだ。
あいつらのレベルはみんな二桁だということだ。
大事なことだからもう一度言おう。
俺は四桁だ!
俺が途轍もない充実感に充ち満ちているのも当然のことだと言えた。
だがそのことに一番驚いているのは俺自身だった。
「それにしても長い道のりだった……あんなことやこんなこと……数々の苦しい思い出が走馬燈のようによみがえるぜ……」
俺がこれまでの苦難を思い返して感傷に浸っていると、やはりというかなんというか、エニグマが淡々とした口調で言ったのだった。
「次、召喚してもよろしいですか?」
ああ……。
レベル1000の感動が泡のように消えていく。
俺は軽く眉間を左の人差し指と親指でキュッとつまむと、少しばかりイラッとした口調でもって言ったのだった。
「あのさあ、レベル1000だよ?普通聞かないレベルだよ?もう充分なんじゃないの?」
「前にも申しましたが、必要レベルは10000でございます。まだ十分の一でしかありません」
「いや、10000なんて聞いたことがないレベルだよ?1000だって聞いたことがないんだからさ」
「確かに現代においては10000を越える真の超越者は世界中を探しても何処にも居ないかと思いますが、過去にはおりました」
俺は驚き、問い返した。
「……マジで?昔ってそんなに凄かったの?」
「はい。二ムバス様が活躍されていた千年前には数人……いえ、もしかしたらもっと居たのかもしれません」
「あのさあ、じゃあもしかして二ムバスって千年前最強クラスだったって感じ?」
「最強クラスではありません。間違いなく最強でございました。他の者とひとくくりにすべきではありません」
「ならレベルはいくつだったの?10000越えは数人、もしかしたらもっと居たんだろ?」
するとエニグマが口角をクイッと上げた。
「二ムバス様のレベルは100000越えにございました」
「じゅ、十万ーーー!」
俺は全身の力が抜けるような感覚を覚え、膝から崩れ落ちるのであった。
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