第一章完結『悪魔のなれの果て』 英雄の子孫がクラス無しとなり、失意の果てにダンジョンで出会った悪魔に能力を分け与えられたので無双します。

マツヤマユタカ

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第二十五話 無理な量

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「……やっぱり。結局物騒なことするんじゃないか」

 俺は思わず抗議の声を上げた。

 だが二ムバスは歯牙にも掛けなかった。

『当然だ。お前だって解っていただろう?そんじょそこらのやり方じゃレベル一万まで上がるはずがないと』

「そりゃ、まあそうだけど……」

『どうやら納得したらしいな。じゃあ早速……』

「ちょっと待てーー!!納得はまだしてない!」

『じゃあさっさとしろ。一分くらいは待ってやる』

「短いわっ!そんなにすぐに納得出来るかっ!」

『じゃあダラダラと時を過ごすのか?それはお前の都合とそぐわないのじゃないか』

「ぐっ!ああ言えばこう言う……」

『さっさと覚悟を決めろ。どうせやることになるのだからな』

「なんでそう言えるんだ?」

『今までのやり方でレベル一万まで上げるには、何年もかかるぞ。それでいいなら俺は構わん。千年待ったんだ。後数年待つくらいどうってことないしな』

「なんでそんなにかかるんだよ!一ヶ月でレベル千までいったのに!」

『レベルっていうのはな、上がれば上がるだけ、一つあげるのに困難になっていくんだよ』

「本当か?」

 俺は二ムバスが嘘を言っている可能性を考え、素早く後ろを振り返った。

「エニグマ、本当なのか?」

 エニグマは大きくうなずいた。

「本当です。ですからわたしはここへ貴方をお連れしたのです」

 どうやら本当らしい。いや、もちろんエニグマは二ムバスの従者だから、ただ唯々諾々と従っている可能性はある。

 だけど、確かにレベル千を超えたとき、エニグマがさっさとここへ戻ってきたのは事実だ。

 自分の訓練ではこれ以上上がらないと思ってした行動のように思える。

 となれば、やはり本当か。

 俺は大きく胸を反らし、息を大きく吸い込んだ。

 そして一旦止めると、肺腑の中の空気を勢いよく一気に吐き出した。

「わかった。やってくれ」

 俺は覚悟を決め、それだけ言った。

 二ムバスはニタニタと笑った。

『そうか。覚悟を決めたか。いいだろう。安心しろ。決して死にはしないさ。それくらい俺は見定められるからな』

「だが死にかけ寸前までやるんだろ」

『ああ。それを何度も何度もやる。だから覚悟を決めているようだが、改めてもう一度覚悟しろ』

「必要ない。もう覚悟を決めたんだ。さっさとやってくれ」

『いいだろう……では……な』

 二ムバスはそう言うと、徐々に影が薄くなっていった。

 いや、違う。影が薄くなったんじゃない。

 消えかけているんだ。

 もうすでに半透明だ。

 その時、突如として全身を激痛が走った。

 たまらず膝を折り、手を突いて床に四つん這いの姿勢となる。

「ぐおっ!」

 俺は思わず口内の粘膜を口から吐き出した。

 朝から何も食べていなかったため、胃の中のものは吐き出さずに済んだものの、よだれがダラダラとだらしなく床に垂れ落ちている。

「ぐふっ!」

 声にならない吐息が漏れ出す。

 痛い。全身が痛くてたまらない。

 手を突いてもいられないほどだ。

 俺は四つん這いの姿勢を維持できず、床に突っ伏した。

 何か身体中を蝕まれていく感触がある。

 何だ?

 二ムバスか?二ムバスが入って来ているのか?

 おそらくそうだろう。

 だがこの激痛はなんだ?

 一番初めに出会ったとき、二ムバスの一万分の一が俺の身体に入った。

 だがその時は特に痛みは無かった。

 にもかかわらずこの今の激痛はなんだ?

 一万分の一の時は無理のない量だったからか?

 となれば、今は無理のある量が流入しているということか?

 たぶんそうだ。

 つまり、無理な量の二ムバスをどんどん容れていくつもりなんだ。

 それによって飛躍的にレベルをアップさせようって魂胆か。

 くそっ!痛すぎて悲鳴も出やしない。指一本、自分の意思で動かすことも出来やしない。

 くそっ!くそっ!くそっ!

「……くっ!……」

 うめき声だけが漏れ出ている。

 言葉を紡ぐことなど到底不可能だ。

 これが続くのか。

 延々と続くのか。

 くそ……くそ…………くそ……。

 俺は次第に考えることも出来なくなり、終いにはとうとう気を失ったのであった。
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