第一章完結『悪魔のなれの果て』 英雄の子孫がクラス無しとなり、失意の果てにダンジョンで出会った悪魔に能力を分け与えられたので無双します。

マツヤマユタカ

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第三十話 別離

「二ムバス、お前……やりやがったな」

 俺は怒りに打ち震えながら、目の前に現れ出でた二ムバスに向かって糾弾した。

「ああ。痛かったか」

 二ムバスはそう言うと、口角を異様に上げて悪魔的な笑みを浮かべた。

「当たり前だ!痛いに決まっているだろう!目をくりぬかれたんだぞ!」

「そうだな。それは俺でも痛いな」

 二ムバスはそう言うと、エニグマを呼んだ。

「エニグマ、こやつに頑張った褒美として、あれをくれてやれ」

 エニグマは深々とお辞儀をすると、再び俺に向かって右手を伸ばした。

 まだ俺の身体は動かない。

「今度は何をするつもりだ!エニグマ!」

 だがエニグマの手は止まらない。

 再び俺の眼窩の中に指を突っ込んだのだった。

「ぐっ!ぐおぉぉぉーーー!」

 再びの激痛が俺を襲う。

 だがエニグマは、今度はすぐに手を引いた。

 しかしそれで激痛が治まるわけではなかった。

 俺は激しい痛みに耐えつつも、そこで何やら異物感を感じた。

 何かが眼窩の中に入れられたような感覚があった。

「……何をした?」

 するとエニグマが引き出した手を、俺の顔の前でピタリと止めた。

 そしてエニグマが何やら念じると、徐々に俺の痛みが引いていった。

 どうやらヒーリングをかけてくれたらしい。

 痛みはもうだいぶ無くなっていた。

 俺はようやく落ち着きを取り戻し、ゆっくりと口を開いたのだった。

「改めて聞くぞ。何をした?」

 すると二ムバスがニヤニヤとしながら答えた。

「この後もお前と一緒に行動するつもりは無かったのでな。お別れをしようと思ったまでだ」

「それはわかっている。俺だってお前なんかと一緒に動きたくなんかない。だからそれはもういい。その後の話だ。何を入れた?」

「替わりの目さ。欲しいだろ?」

「替わりの目だと?」

「ああ。目を開いてみるといい。もう痛みはないだろ?」

 確かにもう痛みはない。

 替わりの目か。

 それならありがたい。

 俺はゆっくりと静かに右瞼を開いてみた。

 だがその途端、激しいめまいが俺を襲った。

 世界が揺れる。

 右へ左へ、上から下へ。

 俺は吐き気をもよおした。

 だが身体は動かない。

 気持ちが悪い。

 目が回る。

 俺はたまらず瞼を閉じた。
 
 ギュッと固く瞼を閉じて、世界が元通りになるのを待った。

 だが閉じていない耳からは、二ムバスのけたたましい笑い声が聞こえている。

 何だこれは……くそっ!笑いやがって……。

「何が替わりの目だ……目が回って仕方がないぞ!」

 二ムバスは笑いながら答えた。

「そのうちなれるさ。なれれば重宝するぞ」

「こんなものがか?」

「ああ。お前の人生を明るく照らしてくれるんじゃないか?」

 二ムバスが小馬鹿にするように言った。

 俺の腹の虫は爆発寸前となった。

「ふざけたことを!これは一体なんなんだ!」

 すると二ムバスが顔を上げ、悪魔的な笑みで俺を冷笑しつつ言ったのだった。

「魔眼さ。褒美として受け取るがいい」

「褒美だと?魔眼ってのは何だ?」

「その内わかるさ。説明するのは面倒なのでな。自分で試行錯誤していくことだ」

「ふざけるな。こんなもの役に立つのか?」

「立つさ。確実にな。もっとも、それを使ってお前が幸せになれるかどうかなんてのは、俺は知らないがねえ」

 二ムバスはそう言うと、またもけたたましい笑い声を上げた。

 だがひとしきり笑い終えると、二ムバスは笑みを収めて言ったのだった。

「お前はよくやった。おかげで俺は千年ぶりに外に出られた。礼を言う」

「ふん、どうだかな」

「素直に受け取れよ。俺は本当に感謝しているんだぜ」

「そうかい。そいつは良かったな」

 すると二ムバスが再び高らかに笑った。

「最後まで生意気な奴だ。だがまあいいさ。……ではな」

 二ムバスはそう言うとくるっと踵を返し、さっさと歩き始めた。

 するとエニグマが軽く俺に会釈をして、その後を追っていった。

「おい!俺の身体を動かせるようにしていけよ!」

 エニグマは軽く振り返り、指をパチリと鳴らした。

 するとふっと俺の身体の自由を奪っていた鎖がほどけた。

 たまらず俺は膝から崩れ落ちた。

 そして四つん這いの姿勢となって、彼らの去りゆく背中を見つめた。

 追いかけるつもりはなかった。

 例え追いかけて抗議をしても、聞いちゃくれないだろう。

 目はくりぬかれたが、替わりに魔眼とやらをもらった。

 今、軽く瞼を開いてみたが、先程よりかはめまいが治まっている。

 このめまいさえ治まれば、一応視力は問題ないみたいだ。

 だったら追いかけるまでもない。

 たぶん二人相手じゃ勝てないからな。

 だが、もし今度会った時には、絶対にぶちのめしてやる。

 俺はそう固く心に誓い、ゆっくりと立ち上がったのだった。

 さあ、帰ろう。

 俺にはやるべきことがある。

 俺はゆっくりと踵を返すと二ムバスたちに背を向けて、しっかりと歩き始めるのだった。
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