第一章完結『悪魔のなれの果て』 英雄の子孫がクラス無しとなり、失意の果てにダンジョンで出会った悪魔に能力を分け与えられたので無双します。

マツヤマユタカ

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第四十八話 魔剣ダルフルデュラン

「……闇夜に紛れし呪われし鴉よ。その忌まわしき黒き翼故に虐げられし不遇に怒りを持て!そしてその鋭く尖った嘴でもって敵を穿て!……暗黒呪法ペルセキュウト・クロウ!」

 ルビノが小声で呪文を唱えるや、剣に纏った黒い靄が爆発的に噴き上がった。

 剣先を遙かに超えて三メートルほども伸びたかと思うと、左右に突き出した鍔からも黒い靄は伸びていき、翼のように形作った。

「くたばれ、ジーク=テスター!」

 ルビノは叫ぶや、後ろ足で石床を強く蹴り込み、突進を仕掛けてきた。

 結構速い!

 俺は瞬時に右方向にステップを踏み、ルビノの長く伸びた剣先を躱そうとした。

 だが躱したと思った瞬間、黒い靄がにゅうっと伸びた。

 まずい!

 バシュッ!

 黒い靄が俺の脇腹をかすめ、服を無残に切り裂いた。

 しまった!油断した。

 ダンジョンから出た後、流行りの店で買ったせっかくの一張羅をいきなり台無しにされてしまった。

「ちっ!」

 俺は腹立たしげに思わず舌打ちをした。

 すると、ルビノが凄まじい勢いで方向転換し、俺をすぐさま追ってきた。

 ちぇっ!やっぱり俺も剣を持ってくれば良かった。

 俺はひとまずステップを大きくして、次々と繰り出されるルビノの斬撃を躱し続けた。

「そういえば闇魔法の中にその手の奴があったような……」

 俺はルビノ攻撃を軽いステップで躱しながら魔法検索をかけた。

「おっ!あった。ちょっとやってみるか」

 俺は目当ての闇魔法を見つけると、すかさずその魔法名を唱えた。

「魔剣ダルフルデュラン!」

 すると突如として俺の右の掌がこんもりと山のように盛り上がり始めた。

 ちょっと痛いな。

 俺がそう思ったのも束の間、何やら黒光りするものが手の皮を突き破って出てきた。

 結構痛い。

 それはどうやら黒い刀身であり、ぬるぬると生え続けた。

 そして完全に掌から抜け出ると、鍔が左右にビュッと飛び出した。

 よかった。掌の中で飛び出そうものなら、大惨事だ。

 俺は掌から生まれ落ちた漆黒の魔剣をしっかと握りしめると、迫り来るルビノを見た。

 ルビノは先程まで完全に息が上がっていたにもかかわらず、今ではそんな様子など微塵もなく俺を追ってきている。

 暗黒呪法ってのは、どうやら使用者の身体能力も高めるらしい。

 いや、もしかしたら一時的にバーサーカー状態になっているのかもしれない。

 俺は、ルビノが突然生み出された魔剣を目の前にしてもなんの表情の変化も見られないことから、後者だと判断した。

 それだとつまらないな。

 バーサーカー状態ってのは、意識がないも同然だからな。

 一旦正気に戻してやろう。

 そのためにはあの剣をたたき折るのが一番だ。

 あっ、でもなあ、俺がそもそも剣を持ち込まなかったのは、ルビノの剣を折っちゃったら、そこで決闘を止められるんじゃ無いかと思ったからなんだよなあ。

 どうするかなあ。

 俺は狂ったように剣を振るいながら追ってくるルビノを躱しながら、チラリと裁定者の顔をのぞき込んだ。

 開始当初から表情も変わらなければ、動きも一切無い。

 あれならよっぽどの事が無い限り、止めそうもないな。

 よし、決めた。奴の剣を叩き折って、正気に戻してやろう。

 俺はそう決めると、やおら立ち止まった。

 そして突っ込んでくるルビノに対して魔剣を引いて構えた。

「シャアアアアアア!」

 ルビノが右手に持った剣を振り上げながら俺に迫る。

 俺はニヤリと微笑むと、後ろに引いた魔剣を両手でしっかりと握り、横殴りに力一杯に振るった。

 ルビノの暗黒呪法を纏った剣と、俺の魔剣が激突する。

 ガッギィーーーン!

 目の前でいくつもの火花が華々しく散った。

 瞬間、ルビノが俺の右横を勢いよく通過する。

 交差は一瞬。

 俺とルビノは五メートルもの距離を空けて、背中を向けあった。

 同じような体格、同じような姿勢で。

 だが両者には大きな違いが一つあった。

 それは、俺の手元には魔剣ダルフルデュランがしっかりと握られているのに対して、ルビノの剣は根元からポッキリと折れていたことであった。
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