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7 最下層へ

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「俺も行きたい。付いていってもいいかな?」

 俺はそうハッキリと言った。

 ネルヴァが驚く。

 ずっとそっぽを向いていたレイナも振り返って、驚きの表情を浮かべている。

 俺は途端に不安な気持ちに駆られた。

「え?そんなに驚くことかな?」

 するとネルヴァが何やら慌ててそれを強く否定しだした。

「いえいえいえいえ!そんなことはありませんよ!そうですか!下に行きたいですか!それはいい。実にいいアイデアです。せっかくですからそうしましょう。おそらくあなたの『能力コピー』は魔物にも発動するはずです。ですから出会った魔物の能力もコピー出来るということでしょう。ならば一緒に最下層まで行って、途中出て来る魔物の能力も片っ端からコピーしようじゃないですか!」

 ネルヴァが今まで聞いたことのない早口でまくし立てた。

 俺がその勢いに押されていると、今度はレイナも勢い込んで言ってきた。

「そうだ!それがいい!せっかく出会ったのにこんなところで別れてしまうのはつまらない。どうせだったら地獄まで……あ、いや最下層まで一緒に行こうじゃないか!」

 二人のあまりにも異様な様子に、俺は早くも自分の発言に後悔を覚えたものの、ここは好奇心の方が勝った。

「あ、ああ。じゃあよろしく」

 俺の同意する発言に、レイナがまたも飛びついてきた。

「ああ!一緒に行こう!地獄……じゃなくて最下層に!」

 俺はその後の道行きに大いなる不安を抱えつつも、レイナの胸の谷間に顔を埋める幸せの方が勝ったため、その後は何も考えなくなったのであった。


 

「ついに来たね五十階。ここがこのダンジョンの最下層ってわけだ」

 俺たちはこの上級ダンジョンをズンズン進み、あっという間に五十階の最下層へと到達していた。

 もちろん、途中で遭遇した様々な魔物の能力を身につけたのは言うまでもない。

 俺はこの最下層に至るまでに、実に二十八種類もの魔物の能力を手に入れていた。

 それにレベルも一気に15まで上がった。

 一応パラメーターを見ると、体力141。攻撃力83。防御力90。俊敏性103。

 魔力はもちろん0で、神力は相変わらず99999だ。

「さあ、いよいよ王女様の救出だね」

 俺は勢い込んで二人に言った。

 だが二人は明らかに乗り気ではなかった。

 レイナはまたも急にそっぽを向き、ネルヴァが顔を曇らせたからだ。

 そのため俺は、そこで再び不安を募らせることとなった。

「あのさあ、そんなにリリーサ王女ってヤバいの?」

 レイナがそっぽを向いているため、一応俺の方を向いているネルヴァが、仕方なさげに答えた。

「まあそうですねえ。わたしもレイナも、あれほどまでに苦労をしたことなどありませんでしたから」

 俺は驚きの声を上げた。

「えっ!?そんなに!?大賢者と剣聖の二人がそんなに苦労をするほどなの?」

 俺の問い掛けにネルヴァが大きくうなずいた。

「ええ。何せ困った方なのですよ。あの王女様は」

 ここへ来て、ついに俺は大いなる後悔の念を感じることとなった。

「大丈夫かなあ」

 すると、もの凄く不安がる俺に、突然ネルヴァが明るい口調で言い放った。

「そこでアリオン、あなたですよ」

 俺は何のことか判らず、へ?っとなった。

 だがネルヴァは俺の様子など委細構わず、さらに言葉を紡いだ。

「王女様の年齢は15歳。あなたと一つ違いのほぼ同世代。ならば多少話しの一つも弾もうというものです。それに……」

 ネルヴァが俺の顔をマジマジと見回した。

 俺は、うん?と思い、視線を逸らそうと顔を避けるも、ネルヴァの視線は執拗に追ってきた。

「な、なに?ちょっと気味悪いんだけど」

 俺がついに視線を遮るための右手を顔の前にかざしながら言うと、ネルヴァがうんと大きくうなずきながら言ったのだった。

「あなたは美男子というわけではないかもしれませんが、中々の好男子ではあります。しかもこのタイプの顔は、恐らく王女様好みだとわたしは見ました」

 え?そうなの?

 するといつの間にか振り返っていたレイナも、ネルヴァに同調した。

「うむ。わたしもそう思っていた。この手の顔は、確かに王女様のタイプだと思うぞ」

 なるほど。そういうことか。

 二人が俺の同行をあれほど必死に求めていたのは、こういうことだったのか。

 でも、悪くはない。

 聞くところによると、リリーサ王女はかなり暴力的で、周囲の迷惑を顧みずに行動してしまうタイプらしいが(実際今回も上級ダンジョンに自ら飛び込んで捕まってるし)、実際顔はかなり可愛いらしい。

 スタイルの方は、年齢的にまだいわゆる幼児体型らしいが、それに関しては今後の頑張りしだいでレイナみたいなナイスバディーにならないとも限らない。

 ふむ。やっぱりこれは悪くない。

 ただし、本当に二人が言うように、俺の顔が王女の好みのタイプの顔ならばだが。

 怪しい。実に怪しい。

 そんなに他人の好きなタイプの顔って、判るものなのか?

 実は二人は、かなり適当なことを言っているんじゃないのか?

 う~ん、実に怪しい。

 だがここまで来てしまった以上、もはや後には戻れない。

 俺は一抹の不安を抱えながらも、可愛らしいと評判の王女様のご尊顔を拝みに行こうとするのであった。
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