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「さて、それでは貴方のお宅へと向かいますか」
ネルヴァが何やら楽しげに言った。
「何か悪いね?」
「いえいえ、我々そう忙しいってわけでもないので」
「そういえば、二人って普段は何をしているの?」
「大賢者と剣聖をしています」
これってもしかして、笑いを取ろうとして言っているのだろうか?
だとしたら笑ってあげた方がいいんだろうか?
いや、大まじめに言っている可能性もある。
ならばここは無難にスルーするとしよう。
「いや、そういうことじゃなく、例えばギルドなんかに登録して冒険者をやっていたりするのかと思って?」
するとネルヴァが、スルーされた事には反応せず、答えてくれた。
「ギルドには登録していませんね」
「何で?登録した方が便利じゃない?」
「普通の人々からしたらそうかもしれませんが、我々からしたら面倒です。自由がなくなりますからね。ギルド登録をすると、一定数以上ノルマを稼がないといけないでしょう?それが面倒なんです。それに我々は名前が売れていますから、ギルドで依頼を探さなくても向こうから来てくれるんです。今回だってそうです。王家からの依頼が直接我々に届いたわけですから」
なるほどね。
ギルドに舞い込む依頼より、個人依頼の方が割もいいだろう。それに束縛されることもない。
彼らくらいの強者ならば、その方が楽って事か。
「そうか……」
俺は思わず、そう一言だけ呟いた。
ネルヴァがその俺のつぶやきに反応した。
「どうされました?」
「いや、俺はどうしようかなって思ってさ。確かにおかげで滅茶苦茶強くなったと思うけど、俺は二人のように名前が売れているわけじゃないから、個人依頼が来るわけないし。かといってギルド登録は三人パーティーからって決まりがあるしね」
そう。俺はパーティーを追放された身だ。
もちろん強くなったからといって、元のゲイスたちのパーティーに戻ろうなんて気はさらさらない。
何せ殺されかけたしね。
でも他の誰かを誘ってっていうのも、俺は役立たずの荷物持ちってみんなに思われているだろうから、難しいし。
町中でデモンストレーションでもするか……。
広場かなんかで空に向かって上級魔法なんかをぶっ放したりなんかして。
実はこうして強くなったから、誰かパーティー一緒に組まない?みたいな感じでさ。
……いやあ、それも何か気が進まないなあ。
というかその前に、俺ってリリーサの元へ行ったら剣の修行ばっかりさせられて、冒険者の仕事やらせてもらえなくなるんじゃないだろうか?
俺は急にそのことが気になり、問い掛けてみた。
「あのさあ、宮殿に行ったらその後は俺、冒険者出来るのかな?」
するとあっさりとネルヴァが答えた。
「出来ると思いますよ。貴方が望むなら、王女様は反対しないでしょう。いや、多少は反対するかもしれませんが、基本は貴方に嫌われたくないという思いがありますからね。貴方次第でうまくやれると思いますよ」
本当にそうなんだろうか?
どうもその辺、俺にはそうは思えないんだが。
俺が女心に疎いだけなのかな?
俺がそんなことを思っていると、レイナがいきなり問い掛けてきた。
「アリオンは冒険者を続けたいのか?」
「そうだね。続けたい」
「何故だ?」
「俺が物心つく前に死んだ父さんが冒険者だったんだ。母さんが言うにはとても立派な冒険者だったらしい。だから俺は子供の頃から冒険者に……父さんに憧れ続けてきたんだ。だからだよ」
「そうか。それは立派な理由だな」
レイナはそう言って俺に向かって微笑んだ。
俺は何やら少しだけ恥ずかしくなってはにかんでしまった。
だがそこで俺は、あることに気付いた。
「そうだ。家に帰る前にギルドに寄りたいんだけど」
ネルヴァが応じた。
「ギルドですか?構いませんが、なにをしに?」
「俺が生きていることを知らせておこうと思ってね。たぶんゲイスたちによって死亡届を出されちゃってると思うし」
「なるほど。確かに彼らはそうしているでしょうね。判りました。まずはギルドへ向かいましょう」
そうして俺たちは進む方角を変え、近くの町のギルドへと向かったのであった。
「二人はここで待ってて。ここの料理は美味いんだ。俺は、ちょっとギルドへ行ってくるから」
町へ着いた俺たちは、中心部にあるギルドへと向かっていた。
だがギルドに用事があるのは俺だけのため、二人に付き合ってもらうのも悪いと思い、近くのレストランへと案内したのだった。
「そうですか。では我々はこちらで待っているとしましょう」
「本当に美味いんだろうな?ここの料理は」
「ああ、保証するよ。じゃあ行ってくる」
俺はそう言い残してレストランを後にした。
そしてすぐ近くのギルドへと一人で向かったのだった。
だがそこで、俺にとって実に聞き覚えのある嫌な声が聞こえてきたような気がした。
まさか。
俺は嫌な予感を胸に抱き、ギルドの壁越しに耳をそばだてた。
「あのガキ、魔物に食われて、それはもう無様に死んじまいやがった。まあ役立たずの末路なんて、しょせんはあんなものさ」
当たりだ。ゲイスの野郎の声だ。
しかもどうやら俺の話をしているらしい。
ただし、自分が崖から突き落としたとは言っていないようだな。
俺はしばらくここで奴の言い分を聞いてやろうじゃないかと思った。
「本当になあ。そりゃあもう食われながら無様に泣き叫んでいやがったぜ」
これはパーティーの盾役で、三度の飯より暴力が好きなキリオの声だ。
「へい、まったくもって最後まで情けない奴ですぜ。それにあのガキ、結局ゲイスさんの力に一度もなることなく死んじまいやがった」
これは黒魔法使いのレットーレ。ゲイスの腰巾着で、口を突いて出るのはおべっかばかりという奴だ。
「本当にねえ。ちっとも役に立たなかったからねえ。同情する気も起きないってもんさね」
女盗賊のミリヤ。サディスティックで、蛇みたいにネチっこい奴。
「おうよ。おでもそう思うどー」
馬鹿のグリエル。とてつもなくデカく、腕力だけが取り柄。
さて、となれば最後は奴かな?
「まあ、役立たずの能なしは死んだことですし、今後の事を考えましょう」
はい、来た。副将格のギョージャ。冷酷非情な性格。ちょっと気取った感じが鼻につく男。
一応全員出そろったみたいだし……。
いや、もう一人いたか。今はもうパーティーの一員じゃないけど。
そう。
そろそろ俺の登場の時間ってところだね。
俺は壁から背中を離し、踵を返してギルドの中へと入っていくのだった。
ネルヴァが何やら楽しげに言った。
「何か悪いね?」
「いえいえ、我々そう忙しいってわけでもないので」
「そういえば、二人って普段は何をしているの?」
「大賢者と剣聖をしています」
これってもしかして、笑いを取ろうとして言っているのだろうか?
だとしたら笑ってあげた方がいいんだろうか?
いや、大まじめに言っている可能性もある。
ならばここは無難にスルーするとしよう。
「いや、そういうことじゃなく、例えばギルドなんかに登録して冒険者をやっていたりするのかと思って?」
するとネルヴァが、スルーされた事には反応せず、答えてくれた。
「ギルドには登録していませんね」
「何で?登録した方が便利じゃない?」
「普通の人々からしたらそうかもしれませんが、我々からしたら面倒です。自由がなくなりますからね。ギルド登録をすると、一定数以上ノルマを稼がないといけないでしょう?それが面倒なんです。それに我々は名前が売れていますから、ギルドで依頼を探さなくても向こうから来てくれるんです。今回だってそうです。王家からの依頼が直接我々に届いたわけですから」
なるほどね。
ギルドに舞い込む依頼より、個人依頼の方が割もいいだろう。それに束縛されることもない。
彼らくらいの強者ならば、その方が楽って事か。
「そうか……」
俺は思わず、そう一言だけ呟いた。
ネルヴァがその俺のつぶやきに反応した。
「どうされました?」
「いや、俺はどうしようかなって思ってさ。確かにおかげで滅茶苦茶強くなったと思うけど、俺は二人のように名前が売れているわけじゃないから、個人依頼が来るわけないし。かといってギルド登録は三人パーティーからって決まりがあるしね」
そう。俺はパーティーを追放された身だ。
もちろん強くなったからといって、元のゲイスたちのパーティーに戻ろうなんて気はさらさらない。
何せ殺されかけたしね。
でも他の誰かを誘ってっていうのも、俺は役立たずの荷物持ちってみんなに思われているだろうから、難しいし。
町中でデモンストレーションでもするか……。
広場かなんかで空に向かって上級魔法なんかをぶっ放したりなんかして。
実はこうして強くなったから、誰かパーティー一緒に組まない?みたいな感じでさ。
……いやあ、それも何か気が進まないなあ。
というかその前に、俺ってリリーサの元へ行ったら剣の修行ばっかりさせられて、冒険者の仕事やらせてもらえなくなるんじゃないだろうか?
俺は急にそのことが気になり、問い掛けてみた。
「あのさあ、宮殿に行ったらその後は俺、冒険者出来るのかな?」
するとあっさりとネルヴァが答えた。
「出来ると思いますよ。貴方が望むなら、王女様は反対しないでしょう。いや、多少は反対するかもしれませんが、基本は貴方に嫌われたくないという思いがありますからね。貴方次第でうまくやれると思いますよ」
本当にそうなんだろうか?
どうもその辺、俺にはそうは思えないんだが。
俺が女心に疎いだけなのかな?
俺がそんなことを思っていると、レイナがいきなり問い掛けてきた。
「アリオンは冒険者を続けたいのか?」
「そうだね。続けたい」
「何故だ?」
「俺が物心つく前に死んだ父さんが冒険者だったんだ。母さんが言うにはとても立派な冒険者だったらしい。だから俺は子供の頃から冒険者に……父さんに憧れ続けてきたんだ。だからだよ」
「そうか。それは立派な理由だな」
レイナはそう言って俺に向かって微笑んだ。
俺は何やら少しだけ恥ずかしくなってはにかんでしまった。
だがそこで俺は、あることに気付いた。
「そうだ。家に帰る前にギルドに寄りたいんだけど」
ネルヴァが応じた。
「ギルドですか?構いませんが、なにをしに?」
「俺が生きていることを知らせておこうと思ってね。たぶんゲイスたちによって死亡届を出されちゃってると思うし」
「なるほど。確かに彼らはそうしているでしょうね。判りました。まずはギルドへ向かいましょう」
そうして俺たちは進む方角を変え、近くの町のギルドへと向かったのであった。
「二人はここで待ってて。ここの料理は美味いんだ。俺は、ちょっとギルドへ行ってくるから」
町へ着いた俺たちは、中心部にあるギルドへと向かっていた。
だがギルドに用事があるのは俺だけのため、二人に付き合ってもらうのも悪いと思い、近くのレストランへと案内したのだった。
「そうですか。では我々はこちらで待っているとしましょう」
「本当に美味いんだろうな?ここの料理は」
「ああ、保証するよ。じゃあ行ってくる」
俺はそう言い残してレストランを後にした。
そしてすぐ近くのギルドへと一人で向かったのだった。
だがそこで、俺にとって実に聞き覚えのある嫌な声が聞こえてきたような気がした。
まさか。
俺は嫌な予感を胸に抱き、ギルドの壁越しに耳をそばだてた。
「あのガキ、魔物に食われて、それはもう無様に死んじまいやがった。まあ役立たずの末路なんて、しょせんはあんなものさ」
当たりだ。ゲイスの野郎の声だ。
しかもどうやら俺の話をしているらしい。
ただし、自分が崖から突き落としたとは言っていないようだな。
俺はしばらくここで奴の言い分を聞いてやろうじゃないかと思った。
「本当になあ。そりゃあもう食われながら無様に泣き叫んでいやがったぜ」
これはパーティーの盾役で、三度の飯より暴力が好きなキリオの声だ。
「へい、まったくもって最後まで情けない奴ですぜ。それにあのガキ、結局ゲイスさんの力に一度もなることなく死んじまいやがった」
これは黒魔法使いのレットーレ。ゲイスの腰巾着で、口を突いて出るのはおべっかばかりという奴だ。
「本当にねえ。ちっとも役に立たなかったからねえ。同情する気も起きないってもんさね」
女盗賊のミリヤ。サディスティックで、蛇みたいにネチっこい奴。
「おうよ。おでもそう思うどー」
馬鹿のグリエル。とてつもなくデカく、腕力だけが取り柄。
さて、となれば最後は奴かな?
「まあ、役立たずの能なしは死んだことですし、今後の事を考えましょう」
はい、来た。副将格のギョージャ。冷酷非情な性格。ちょっと気取った感じが鼻につく男。
一応全員出そろったみたいだし……。
いや、もう一人いたか。今はもうパーティーの一員じゃないけど。
そう。
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