転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第八十九話 信頼

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「じゃあナスリ、例のバース村の生き残りの資料、この中から探し出せるかな?」

 ガイウスは広大な資料室を改めて見回し、少々うんざりした気分で言った。

 だが対するナスリは、晴れ渡った青空の如きまぶしい笑顔で、ガイウスに返答をした。

「はっ!必ずやお坊ちゃまの御前に、バース村の生き残りに関する全ての資料を耳をそろえてお持ちいたしますので、お坊ちゃまは病院のすぐそばにありますレストラン煉瓦亭にて、お待ちいただきますようお願いいたします。おそらく二時間ほどで、すべての資料をお持ちできるかと存じますので」

「えっ?いや僕たちも手伝うよ?」

「いえ、いくらお坊ちゃまが明晰な頭脳の持ち主とはいえ、この資料室は膨大です。初めて訪れた皆様では勝手が判らず、戸惑うだけかと存知ますので、どうかこのナスリにお任せいただき、お坊ちゃま方は煉瓦亭にておくつろぎくださいますようお願い申し上げます」

 ガイウスはほんのわずか迷ったものの、ここはナスリを信じて任せるのが得策と思い、煉瓦亭へと向かうことに決めた。

「わかった。じゃあ全てまかせるよ」

「はっ!ありがたき幸せ」

 ナスリは言うや、資料集めのため脱兎の如く駆け出した。

 ガイウスたちは、それぞれにこの日何度目かのアイコンタクトをした後、連れ立って資料室を後にした。


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 煉瓦亭はその名の通り、煉瓦造りの趣のある佇まいで、その存在感を周囲に誇示していた。

 そのため、ガイウスたちは病院を出るとすぐに気付き、早々と入店することが出来た。


「落ち着いた雰囲気の良い店ですね」

 一行が入り口から最も遠い窓際の席に着席すると同時に、ロデムルが店全体を眺めて言った。

 それにガイウスが、渡されたメニュー表を隅々まで見渡しながら、返答をした。

「うん。それに料理もいろいろと種類があるみたいだよ」


 しばらくしてロデムルはウェイターを呼ぶと、四人で思い思いに注文をした。

 そしてウェイターが立ち去ると同時に、アベルがトイレへ立った。

 ガイウスはその後姿を眺めながら、カルラに問うた。

「どうかな?ナスリは生き残りの資料を見つけられると思う?」

「さてな。判らんが任せるしかあるまい?」

「それはそうだけど、ナスリはカルラご推薦だからさ、聞いてみようと思ってさ」

「まあ確かに推薦はしたがね。確実に見つけられると思ったわけじゃないんだ。見つけられなくても、あたしのせいにするんじゃないよ?」

「もちろんだよ。そもそも全ての資料がすでに破棄されている可能性もあるわけだし、なかったとしても責める気はないよ。ただほら、話の流れでナスリのことを雇っちゃったでしょ?実際、ナスリって人材としてどうなのかなと思って」

「あたしが観察した限りじゃ、優秀だと思ったね。もっとも周囲の者たちは、まったく認めちゃいなかったがね。だからよっぽどこちらにとっては、都合が良かったわけだがね」

「確かに。仕事が出来て周囲にも信頼されている人間を、こちら側に引き込むのは至難の業だからね。本当にナスリが優秀なら、運がとてもいいと言わざるを得ないね」

「ああ、人は見かけによらないんだよ。ナスリはいつもおどおどしているから、周囲に侮られている。だが実際は――」

「仕事が出来る、ということだね。判った。信じて待とう」

「それがいい。お前さんはいずれはシュナイダー家を継ぐ身だ。好むと好まざるとにかかわらず、人を使う側の人間になる。だからよく覚えておくことだ。人を使役する際にもっとも大事なのは、お前さんが今言ったとおり、一旦仕事を任せたら、後はただ信頼して待つことだけさ」

 ガイウスはカルラの言葉をよく噛み締め、ゆっくりとうなずいた。
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