転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~【改訂版】

マツヤマユタカ

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第百三十一話 筐の中

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「俺の魔力が欲しいだと?じゃあさっきから魔法が使えなくなったのは、お前が俺の魔力を奪い取ったからか!?」

 シグナスは楽しそうに笑いながら、ガイウスの問いかけを否定した。

「いや、そうではない。今お前が魔法を使えなくなっているのは、この建物自体が魔法キャンセラーの役割を果たしておるからよ」

「魔法キャンセラー?」

「知らんか?特殊な物質により、触れた者は魔法が一時的に使えなくなるのだよ」

「じゃあ、お前も?」

「うむ、使えん。おっと、だからといって腕力でどうこうしようなどとは思うなよ?わしが、お前のいるその部屋に入らんのには理由があるのだからな」

「俺にはドアの開け方がわからない。だからそのドアを閉めちまえばいいってことだろ?」

「その通り。お前がドアを開けるのに手間取っている内に、わしは建物の外へ出てしまえば良いという訳だ」

「ちっ!まあそれはいいさ。それで、お前は俺をこの建物に閉じ込めてどうする気なんだ?お前は一体、なんのためにこんな大掛かりな仕掛けを施したんだ!?」

 ガイウスは、半ば呆れ気味にシグナスに問い質した。

 シグナスは不気味に笑い、しわくちゃな顔にさらに深い皺を刻みつけた。

「そうさな。お前の側には、いつもやっかいな者がつきまとっておるのでな」

「なんのことだ?」

「ほっほっほ。とぼけるのがうまいな。ほれ、あの黒い猫のことよ」

「エルがどうかしたのか?」

「それよ、それ。エルという名前にあの姿かたち、そしてあの底知れぬオーラ。まさかお前の側に、あのような神話上の生き物がついて回っておるとは、思ってもみなんだぞ?」

「つまりお前は、エルが怖くてこんな馬鹿みたいに大掛かりな仕掛けを拵えたんだな?」

「ほっほっほ。シュナイダーよ。このわしを挑発しておるつもりかね?わしはそんなことで怒るような歳ではないぞ。見ての通り、お前と違ってわしの肉体は今にも朽ち果てんとするまでに老いておる。そしてこの肉体と比例して、内なる精神もまた老いさらばえておる。ゆえにそのような挑発をしても無駄というものだ」

 シグナスはそう言うと呵呵と大笑した。

「それで、こんなところへ俺を閉じ込めてどうする気なんだ?」

 ガイウスはしびれを切らし、改めてシグナスに問い質した。

「どうだ、わしと一緒に再びダロスの地を踏まんか?」

「ダロスだと!?貴様一体なにを企んでいる!?」

「行けば、わかる」

「それで、俺が行くなんて言うと思っているのか?」

「思わんな。だが行ってもらわねばわしが困るのだ」

「お前が困ろうと、俺は一向に構わん」

「さもあろう。だがダロスへ行ってもらうぞ」

「断る!!」

「いいのか?そんな事を言って。お前の友達がどうなっても知らんぞ?」

「貴様、あいつらになにをする気だ!?」

「特に何も。わしはここにおるのでな。ただ、わしが作ったこの異空間には、様々な生き物が生息しておる。例えば、魔獣とか、な」

「魔獣だと!?貴様!」

 ガイウスは、怒りのあまりシグナスに詰め寄ろうとした。

 シグナスは、すぐさま一歩後ずさりした。

「おっと、では一旦お暇するとしよう。だがダロスへ行くというのなら話しは別だ。すぐにでも呼んでくれ。ではな」

 言うなり、シグナスの前に瞬時に壁が現れ、その姿は一瞬の内に消え失せた。

「くそっ!参ったな。とりあえず脱出方法を見つけなきゃ!」

 ガイウスは慌てて先ほどドアがあった壁に取り付き、必死で開けるための手がかりを探した。
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