死神使役《ネクロマンサー》、現世《うつしよ》に惑う

マツヤマユタカ

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第12話 ペアルック

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「おい、ビジュ良すぎじゃねえか?」

「ビジュとはなんだ?」

「ビジュアルのことだ。男前過ぎんじゃねえかって言ってんだよ」

「そうか?だがこれしか俺は持っていない」

「持ってない?」

「そうだ。人間の姿はこれしか出来ないと言っている」

 俺は胡散臭いものを見るような目でソルスを見つめた。

 ソルスはしばし黙っていたが、ついに口を開いた。

「本当だ」

 どうにも嘘臭いが――

「ふん、まあいいか。ていうか人間の恰好が出来るんだったら最初からしろよな」

「あまりしたくない」

「なんでだ?」

「疲れる」

 端的だ。

「本当にそれだけか?」

 さらなる俺の追及に、ソルスが口を割った。

「出来ればお前の眼を喰らいたかった」

「喰らってどうする」

「味わうさ。お前の肉は美味い」

「ふん、嫌なこった」

 もうこの話は打ち切りだ。ソルスが人間の姿になった以上、問題はなくなった。

 いや、まだあった。

「その鎌はしまえないのか?」

 ソルスは相も変わらず、どでかい鎌を持って肩に掛けていた。

「持っているとまずいのか?」

「まずい。銃刀法違反だ」

「それはなんだ?」

「こちらの世界の法律だ」

「ふむ、それには従わなければならないのか?」

「当然だ。だから言っている」

 ソルスはほんの数秒考えた後、言った。

「いいだろう」

 ソルスが言うなり、鎌は突如として泡のように消え失せた。

「今のはなんだ?」

「しまえと言われたからしまった」

「消えたぞ?」

「消した。異空間にな」

 ほう、かなり長い付き合いだがそんなことが出来たのか。結構それって便利なんじゃないか。

「出したりしまったりできるのか?」

「そうだ」

「いろんなものをしまい込めるのか?」

「そうだな。大概のものは」

 いいことを聞いた。使う時が来たら使いまくってやろう。

 俺はそんなことを考えながら、ソルスを足先から首のあたりまでを舐めるように見た。

 ソルスが眉をひそめる。

「まだなにかあるのか?」

 俺は軽く溜息を吐いた。

「お前さあ、なんで俺とペアルックなんだよ?」

 ソルスの服は、俺が今着ている服とまったく一緒だった。

 俺のこの服は異世界で用意してもらったものだ。魔王討伐の褒章のひとつとして、或る国の王様に調しつらえてもらったのだ。というのも異世界の服装をこちらで着ようものなら、街ゆく人々からジロジロと好奇の目で見られてしまうこと請け合いのデザインだからだ。だから俺はこちらの世界でも問題なさそうな服を自らデザインし、縫製所のひとたちにわざわざ作ってもらったのだ。

 よくあるありふれた黒いTシャツの上に濃い蒼色の開襟シャツを羽織り、下はこれまたよく見かける黄土色のチノパンに、開襟シャツと同系色で揃えたスニーカーもどきという、実に無難ないで立ちだ。

 その服と、寸分違わぬ服をソルスは着ていた。

「お前が着ている服を複写トレースしただけだ」

「まったく一緒じゃねえか」

「当然だ。複写トレースだと言っただろう」

「変えられないのか?」

「なぜ変えねばならないのだ」

「恥ずかしいからだ」

 ソルスが眉をひそめた。

「なぜ恥ずかしいのだ?」

 俺は少し言葉に詰まった。

「え~と、あれだ。こちらの世界では恋人同士が同じ服を着たりするんだよ」

「ふむ、では俺とお前が恋人同士に見えてしまうというわけか」

「そう見られてもおかしくないから、恥ずかしいんだ」

「それは俺も心外だ。早速服は取り変えよう」

 なんか無性に腹が立った。
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